第四話:追放という名の「独立」
一ヶ月後。レトヴィス家の執務室に、俺は呼び出された。
父の顔には、隠しようのない嫌悪が滲んでいる。
「アルス。貴様を本日をもってレトヴィス家から追放する。スキルの不甲斐なさを恥じ、二度と我らが名を名乗るな」
「……わかりました。お世話になりました」
俺は淡々と頭を下げた。
兄のカイルが、嘲笑を浮かべて横槍を入れる。
「せいぜい、野垂れ死ぬ前にそのスキルで古紙でも拾って小銭を稼ぐんだな。あははは!」
俺は何も言わず、一振りの剣も、一袋の金貨も持たずに屋敷を出た。
父も兄も、俺が「ゴミスキルのせいで放逐された」と信じて疑わなかった。
だが、屋敷の門を一歩出た先に待っていたのは、エレナ様が用意してくれた豪華な馬車と、国王から授かった『男爵位』の証明書、そして北方の広大な『灰の領地』の権利書だった。
「アルス、道中はご安全に。……いつか、彼らがあなたの足元にも及ばないことを思い知らせる日が来るわ。それまでは、静かにその翼を広げなさい」
エレナ様に見送られ、俺は馬車に乗り込む。
御者が静かに問いかけた。
「……アルス男爵閣下。どちらへ向かわれますか?」
俺は懐に隠した「修復済みの地図」を開き、北の果てを指差した。
「灰の降る場所へ。あそこを、情報の力で世界一の楽園に変える」
レトヴィスの三男坊・アルスは死んだ。
ここから始まるのは、世界で唯一の『歴史修復師』による、秘められた領地経営だ。




