第三十五話:建国祭の影、暴かれる虚飾
数日後。王都は建国祭の歓喜に包まれていた。
しかし、中央広場に設置された演壇に立ったガストン侯爵の顔には、狂気的な笑みが浮かんでいた。
「国民よ、聞け! 現王室は精霊との契約を偽造した癪奪者である! 真の英雄の血脈、それこそが――」
侯爵が「偽りの原典」を掲げ、王室を糾弾しようとしたその時。
広場に、一点の澱みもない澄んだ声が響き渡った。
「――その本は、偽物です。侯爵閣下」
群衆が割れ、そこにはアッシュランドの若き領主装束に身を包んだアルス、そして傍らには『真理の編纂者』ミーナ、さらにエドワードに守られたフィリア王女が堂々と歩を進めていた。
「アルス・レトヴィス……! 死んだはずの出来損ないが、何を!」
「出来損ないが見つけた『真実』を、今から皆さんにお見せしましょう。……ミーナ、お願い」
ミーナがその瞳を開く。
彼女のスキルによって投影されたのは、数百年前に封印された「真実の歴史」の情景。
そこには、ガストン侯爵の先祖が、王座を欲したのではなく、自ら王を支え、守り抜いたという「忠義の姿」が映し出されていた。
「……そ、そんな……我が先祖は、王の下僕だったというのか……!?」
侯爵の絶叫が、静まり返った広場に響く。
アルスの「情報の修復」と、ミーナの「真実の記録」。
二つの力が、王国の歪んだ歴史を、今この瞬間、完璧に編み直した。




