第二十八話:黄金の使節と、国境を越えた「絆」
アッシュランドの港に、サンライト王国の王家紋章――「昇る太陽」を掲げた堂々たる軍艦が入港しました。出迎えるのは、正装に身を包んだアルス、影のように控えるサバス、そして凛とした佇まいのロイとリィナです。
「アッシュランド男爵閣下。……サンライト王国第一王子、エリックが名代、騎士団長バルカスにございます」
船から降り立った偉丈夫の騎士が、アルスの前で深く頭を下げました。背後には、飢えから救われた民たちの感謝を代弁するかのような、山積みの返礼品が並んでいます。
「ようこそ、バルカス殿。……セリア王女殿下がお元気そうで何よりだ。まずは長旅の疲れを癒やしてほしい」
アルスの落ち着いた、しかし威厳ある声に、使節団の面々は驚きを隠せませんでした。王都で「ゴミ拾い」と蔑まれていた少年の面影はなく、そこには一国の主としての器が完成されていたからです。
【歓迎の宴:味覚の革命】
その夜、領主邸の広間で行われた歓迎会は、サンライトの騎士たちにとって「魔法のような体験」となりました。
「……な、なんだこの料理は!? 麦の香りが、これほどまでに芳醇だとは!」
「この『エール』の喉越し……。王都の最高級酒場でも、これほど澄んだ味は出せまい」
並んだのは、アッシュランド特産の『灰金麦』をふんだんに使ったフルコース。リィナが『万象の調律』で騎士たちの疲労を読み取り、最適な栄養バランスで仕上げた逸品ばかりです。
「バルカス殿、この麦こそが、貴国へ送ったものと同じものです。……アッシュランドは、もはや死の地ではありません。我々は、貴国と共にある」
アルスが掲げたグラスに、騎士たちは一斉に唱和しました。
「アッシュランドに、そしてルミナスの若き賢者に、栄光あれ!」
【別れと、託された「魂」】
数日間の滞在を終え、出発の朝。バルカス団長は、重厚な革張りの箱をアルスに捧げました。
「閣下。これは我が主、エリック王子からの『真の感謝』にございます。……サンライト王国の建国より伝わる、陽炎の宝剣『ソル・レイス』。これを、貴殿という『新たな光』に託したい、と」
セリア王女からの直筆の手紙には、美しい文字でこう綴られていました。
『アルス様、貴方は我が国の命を救った。この剣が、貴方の歩む道を阻む暗雲を切り裂く力とならんことを』
使節団を送り出した後、アルスはその黄金色に輝く剣を手に取り、静かに呟きました。
「……重いね。これは、一国の期待と、人々の願いそのものだ」
「閣下、その重さに耐えうる力を、今こそ練り上げる時かと存じます」
サバスが静かに促し、アルスは頷きました。




