第二十一話:欺瞞の帰還と、裂けゆく王国
王都、レトヴィス伯爵邸の最奥。重厚な黒檀の扉の先には、実力主義を掲げる貴族派の重鎮たちが顔を揃えていた。
中心に座すのは、当代随一の『剣豪』である父、レトヴィス伯爵。そしてその隣で不遜な笑みを浮かべる長男カイル。
「……報告しろ、エドワード。北の果て、あの『ゴミ拾い』はどうなっていた」
父の低く地を這うような声。エドワードは、アルスから授かった「情報の偽装」を胸に、一寸の乱れもない所作で跪いた。
「ハッ。……アッシュランドは、言葉通りの地獄にございました。火山灰は天を覆い、土は死に絶え、人影すらまばら。……アルスの名は村人の記憶からも消えかけており、残されていたのは、朽ち果てた物置小屋と、そこに落ちていた母様の形見の切れ端のみにございます」
エドワードは懐から、あらかじめ古びさせた「偽の布切れ」を差し出した。
カイルがそれを奪い取るように手に取り、鼻で笑う。
「ハハハ! 案の定だな! 聖騎士がわざわざ出向くまでもなかった。ゴミはゴミらしく、灰に埋もれて消えたというわけだ。父上、これで一族の汚点は完全に拭い去られましたな」
「……左様か。死体を確認できぬのは不満だが、エドワードの『剣聖』の目がそう判断したなら間違いなかろう」
父の言葉に、エドワードは心の中で冷や汗を拭った。もしアルスから現代科学的な「証拠偽造」の指導を受けていなければ、この鋭い鷲の目は誤魔化せなかっただろう。




