舌を切られたその後は
50年間黙っておったが、前も同じ事があったんじゃよ。この盆栽も危機一髪というところじゃな。
おまえさんも気をつけるんじゃよ。
あるところに、それはそれは腰が曲がったお婆さんとお爺さんがいました。2人は大層貧しい暮らしをしており、生活に苦しんでいました。
「お婆さん、そろそろ私達も飢え死にそうじゃなあ。うちにはだれも居なく、2人こっきりじゃ。」
「そうだねぇ。いつもいつも、同じ光景じゃつまらんね。生きがいと言うものを少しぐらい知ったっていいんじゃないか、ねぇ?」
こんなたわいの無い会話と密かに聞こえる鳥の音と共に1日を過ごす2人は外の景色を眺め、お茶を一口ずつ啜りました。
温厚な2人は口喧嘩さえもせず、この50年間共に過ごしてきたらしいのです。
お爺さんの趣味は豪華な筆を使った派手な水墨画です。お爺さんは気にいるまでに時間がかかるのか、いつも描いては描いてはぐしゃぐしゃにして捨てています。それにお婆さんは不満を持っていました。
さらに、50年間喧嘩はなかったというのは嘘で、本当は邪魔だ。と思うぐらい別れて、別に暮らしたいと思っていました。
「何にせよ、金がないって言うのになにを。あんな紙の無駄遣い、やめてほしいったらありゃしない」
そんなお婆さんはある時の夜、お爺さんの祖父から語り継がれ、時には幸運を呼び寄せると言われる、とてもとても貴重で大切な筆を折ってしまおうと考えました。
お金が消えてしまう根本の原因を一から壊していこうと決心しました。
筆を売って儲けようとも考えましたが、あいにく家から商売場までは険しい山の道を降りなければ行けないので簡単なこの方法にするしかありませんでした。
もう、お婆さんの頭の中には折る事しか頭になかったのでしょう。
しかし、お爺さんにとっては命ほど大事な筆なので、いつも古びた机の1番上の引き出しにしまっておりました。古びたせいなのか、引き出しを開けるのには木の軋む音がどうしても出てしまうのです。
もちろん、仕事などもありませんから家から出る事などないので、お婆さんは夜に筆を盗み出し、折ってしまおうと考えました。
また、折った後は同じように引き出しに戻そうかと考えましたが、軋む音でお爺さんが起きてしまっては大変なので、そのまま庭に放り投げることにしました。
明日の夜、決行します。お婆さんはお爺さんがいつも通り筆を1番上の引き出しに直したのを見ながら微笑みました。
それを見たお爺さんが
「どうしたのかね、お婆さん。そうだ、今日はうまく描けたんだ。ここから見えるいつもの雀と盆栽、そして美しい空だよ。最高傑作かもしれんなぁ。」
自画自賛したお爺さんの水墨画はとても確かなものでした。しかし、この時のお婆さんから見てみれば、とても皮肉で気分を悪くしてしまいました。
しかし、犯行がばれてはいけません。犯行の匂いも見せずに、
「さすがお爺さんだねぇ。盆栽が美しい。この雀も可愛らしいねぇ」
そんな思っても無いことを適当に口に出しておくことがお婆さんの作戦でもありました。
明日決行するというその前の日の夜、今日描いた水墨画が飾られておりました。お婆さんは皮肉を込めて、明日の夜、この絵も破ってやろうと考えました。
果たして、お婆さんはうまく行くのでしょうか。
暗闇の中、にやりと微笑むお婆さんに、恐怖を覚えました。
次の日の朝、いつも通りお爺さんはいつもの筆を握り、水墨画を描いておりました。しかし、今日は昨日とは違い、全てうまくいきませんでした。
お爺さんの気分は曇っていきました。
もちろん、大量の紙を使われてしまったので、お婆さんは怒るのを抑えながらとてもむしゃくしゃしておりました。そこでお爺さんが、言いました。
「あれもだめ、これもだめ、だめじゃだめじゃ!」
そんなお爺さんを横目に、嘲笑いを堪えたお婆さんは見て見ぬふりをしそそくさと掃除に取り掛かりました。
その日は結局お爺さんの納得するものができず、何も描かずに終わってしまいました。
お爺さんが水墨筆を1番上の引き出しにしまったのを確認し、何事もなかったように居間に戻りました。
その日の夜、とうとう犯行をすると言う前にお爺さんは庭の前でうわ言のように呟きました。
「昨日の絵はほんとに良かったなぁ。この景色の美しさがそのまま映し出されたようじゃ。
お婆さんの似顔絵ぐらい簡単に描ける才能さえ持っておればなぁ、、、、」
お婆さんはお爺さんが深い眠りにおちたのを確認した後、軋む音をなるべく出さないようにゆっくり、ゆっくりと引き出しの戸を開けました。
そして、水墨筆を取り出すと両手で端と端を持ち、折ろうとしました。
僕はお爺さんのあのうわ言のような独り言を聞いていましたので、耐えられずに僕の持つ鋭いクチバシでお婆さんの手をつつきました。
するとお婆さんは悲鳴を上げました。
水墨筆と、机に置いてあったインクが落ちたと同時に大きな音をたて、インク瓶が割れてしまいました。
畳にインクが染み渡ります。
「このドブ雀が!せっかく頑張ったというのに、何でこうも邪魔をするのかね!口封じに舌を切ってしまうよ!」
すかさずお婆さんは怒りに任せ、僕をしわしわの片手で握りしめ、舌をだし、お爺さんの机にあった鋏で僕の舌をちょん切ってしまいました。
さすがにこの惨事に気付いて、お爺さんは飛び起きました。
僕は舌を切られた痛みでもがき続けます。
そして、僕は最後の力を振り絞り、クチバシでお婆さんの片目をつつきました。それはお婆さんも想定外だったのでしょう。
僕を床へ打ちつけてから痛みに堪えながら近くの外科医へと走っていきました。
お爺さんは血まみれといっても過言ではない僕を両手で掬い上げ、泣きじゃくりました。
「すまん、すまんのぉ。また同じ事をしてもうた。」
僕を包帯で治そうとしてくれたけども、そのまま意識が遠のいてしまいました。
その中で、微かに聞こえたお爺さんの声には笑いが含まれていました。
「また同じような雀か。この雀もはずれじゃな。しかし、やっとあの婆さんとわかr
僕も僕のおじいちゃんから聞きました。
舌を切られてしまったら、必ず逃げ、切ったやつを見返すように、このつづらを渡すのじゃ。
そして、救いの手を差し伸べてもらったものには必ずやこのつづらを渡すのじゃ。
間違えてはならんぞ。
僕は誰に何をどうして渡せば良かったのでしょうか
このページに来てくださり、ありがとうございます!
こちら、私、朱雀きぃのデビュー作となっております!
あたたかい目で見てください笑
このお話はいろんな登場人物の目線から読んでいただけると嬉しいです!!
終わりが少しもやぁとするのを目標に作りました笑
ネタバレ注意
あ、みなさんもお婆さんになってしまいましたか?
やべ、折られちゃうかも。
50年間もさまざまな不満を耐え忍ぶお婆さんに尊敬ですね!!
今回は舌切り雀のオマージュです!
あんまり舌切り雀感ないですが笑
夜に変なこと考える時ってありますよね笑
by朱雀きぃ




