2032/11/18
今日は復旧作業だった。
「志願」という言葉が書類にはあったが、断れる空気ではなかった。
作業内容は単純だった。瓦礫の撤去。資材の運搬。壊れた街を、壊れていないふりに戻す仕事。
場所は港に近い物流地区。名前のない倉庫が並ぶ区域。重要ではないが、無関係でもない場所。僕らは番号で呼ばれた。名前は要らないらしい。ヘルメットと手袋を渡され、指示に従うだけ。疲労は、音もなく溜まる。誰も文句を言わない。言っても意味がないことを、全員が知っていた。
その時だった。地面が、持ち上がった。揺れではない。押された。一瞬、世界が無音になった。次に、空気が割れた。目の前の倉庫の壁が、内側から膨らみ、崩れた。耳が痛かった。音が、遅れて戻ってきた。誰かが叫んだ。意味のある言葉ではなかった。僕は、持っていた資材を落とした。手が、言うことを聞かなかった。数人が走った。逃げる方向は、決まっていない。指示もなかった。その混乱の中で、気づいた。
爆発は、偶然ではない。
人影があった。粉塵の奥。作業服ではない。迷いのない動き。
銃声がした。短く、乾いた音。倒れる人がいた。復旧作業員か、違う誰かか。確認する余裕はなかった。
彼らは長く留まらなかった。
何かを確かめ、何かを持ち去り、消えた。警察も、部隊も、まだ来ていなかった。
残ったのは、崩れた建物と、粉塵と、作業を中断された僕ら。
あとで、作業は中止になった。
解散でも、保護でもない。
ただ「帰れ」と言われた。
この時点では、何もわからない。
なぜここだったのか。
なぜ昼間だったのか。
なぜ、僕らだったのか。
ただ一つだけ、はっきりしている。
あれは事故じゃない。




