4/45 ナツと神野ー恋の爪痕
「痛っ、痛いカンちゃん」
その日の夜
ナツは神野の部屋のベッドの中で、か細く泣きそうな声を上げた
左の乳房を鷲掴みにされ、爪が食い込んだ後が赤黒く残っている
「ごめん、こんなつもりじゃ」
「あん、やめちゃだめ」
うろたえて体を離そうとする神野をナツが笑って引き留めた
(もしかしてこれはプレイ、的なアレなのかな)
(それともやっぱりクラちゃんのことかな)
激しさに戸惑いながら、求めてくる強さに喜びも感じるが、やはり昼間のことを怒っているのかと気になってしまう
実際は、神野がナツに怒ったことなど一度もない
二人の年齢差は7歳
神野が成人式のときナツは中学生だ
本気で怒りをぶつけるような相手ではない
まっすぐに彼を見上げて腕を差し伸べると、今度はゆっくりと、壊れないように抱きしめてきた
ナツはすぐに強く応え、絡まり合う体が溶けてやがて境はなくなる
(優しくて、エッチな触り方してきて、すごく気持ちよくて、幸せなのに)
突き上げられるたびに美しく弧を描く背中はきつく抱き寄せられ、苦し気な吐息と小さな悲鳴が重なった
快楽の波がすべてを押し流す中でひとつだけ残った思い
(ねぇ、どうしてそんなに悲しそうに私を見るの?)
「ごめん、力が入りすぎた」
神野は胸に残った小さな傷跡に唇を当てた
「ああいうのもたまには、いいかも」
ナツはくすぐったそうに笑いながら言った
「じゃ、採用しよう、力加減に気を付けて」
二人は額を付けて笑いあった
「クラちゃんのこと怒ってる?」
ナツが耳元で囁く
「んなの付き合ってられるかw」
そう言いながら神野は、あんな冗談に動揺している自分が情けなかった
倉田にからかわれるのも仕方ない、ナツのことになると平常心が保てないのを自覚している
(ナツは俺しか知らないから、他の男を考えられないだけじゃないのか)
いつもくすぶっている思いだったが、それを言葉にできないでいた
「いいのか? 倉田の実家は金持ちだぞ」
俺でいいのか? と訊いたつもりだった
「あはは、そんなの関係ねー」
ナツは大きな口を開けて笑い飛ばした
彼女にとってはくだらない質問だったようだ
「クラちゃん、ちょっと変わったね
軽いのが逆に嘘っぽいような…
また、いっしょにお仕事するの?」
「まぁね
ナツは『選挙』ってどう思う?」
「選挙?
投票にはちゃんと行くつもりだよ
ママが絶対、行きなさいって」
何気なく訊いたつもりだったがナツは即答した
「ママは自分の国籍と引き換えに日本の選挙権を取ったの
選挙は誰だって1票持ってるすごい制度だから、行かなきゃもったいないっていつも言ってる」
(誰でも1票、もったいない
これはキーワードになるか?)
ナツの長い栗色の髪をなでながら神野は思った
(何もせず与えられた権利と、勝ち取った権利では重さが違うんだな)
【余計なお世話書き】
サービス回ですww
ポルノではないので詳しくは描きません、つうか描けませんw
この二人も微妙にこじらせております。
こじらせの理由はお話の最後でわかりますが、この話には直接関係ありません。