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2/45 神野と倉田ーインフルエンサーだった男

もとより神野は学生の頃から動画配信で起業しようと考えていた

なんの自信があったのかわからないが、就職活動すらしていない


最初は学生の頃に始めたイタズラ動画や恋愛ものなどで、ただのお遊びだったが、再生回数が増えるにつれ収入も増え、いっぱしのインフルエンサー気取りだった


大学卒業後に幼馴染の倉田と再会して、誘ったのはほんの気紛れだったが、これが見事にバズった


これまでもいくつかのチャンネルで成果を出してはいたが、200万超えのフォロワーを得たのは倉田が初めてだった


しかし、倉田は2年ほどであっさり引退してしまう


「人に踊らされてる感じが嫌だ」


という子供のような理由でだ


神野にはそんなつもりはなかったが、倉田にしてみれば友達の言うがままにしているだけで、チヤホヤされるのは不本意だったのかもしれない


稼ぎ頭に抜けられるのは痛手だったが、神野は何も言わなかった

頭を下げて引き留めるのは違うと感じていたのだ


その後、神野は小さいながら会社を立ち上げ、CM動画と企業イメージのプロデュースを軸に業績を伸ばしていった


神野の強みは何と言っても、彼がプロデュースし、育て上げたインフルエンサーたち

様々なジャンルにわたる彼らを駆使すれば、PR効果を最大限に上げることができた


そして3年後

渋谷に構えた神野の事務所は30名ほどの社員を抱えるまでになった


そこに再び現れた倉田は、まるで畑違いの仕事を持ってきた


神野は提案書をすべて読んだが『らしくない』と思う


彼が知っている倉田はひたすら明るく、調子がよくてノリの軽い奴だった

だからこそ、動画の素材として扱いやすかったのだが…


今回の案件はよりにもよって『選挙』

この男が政治に関心があるなんてまったくの初耳だ


「面白い話ではあるし、俺のやり方が通じるかどうか試してみたい、という気持ちはある」


神野はタブレットのファイルをめくりながら言った


「そうだろ」


「で、俺のベネフィットはなんだ?」


「新ジャンルの仕事のキャリアってのはどう?

 もちろん、当選すれば報酬が出るだろうけど」


「リスクは?」


「リスクなんてないはずだが」


「なさすぎるのが気になるんだ」


「リスクはあるよ

 落選したら丸損だ」


倉田は笑顔を浮かべたが、神野には妙に胡散臭く見えた


(あれ、コイツこんな感じだったかな?)


「もし取りっぱぐれても、今回は俺の会社が補填する

 その代わりAIエンジンの実証実験をしたいってことだが、問題あるか?」


神野はしばらく考えていたが、提案書が入ったタブレットを持って立ち上がった


「わかった、うちの顧問に了解を取って来よう」


「顧問って、もしかして花澤女史か?」


「そうだ、一番の出資者だからな

 このオフィスも半分は彼女のファッション班のものだ

 運営に口は出さない人だけど、形だけでも話は通さないと」


「ふーん」


「なんだよ」


「いや、まさかまだ続いてたとは」


「馬鹿言え、彼女は既婚者だ

 おまけに旦那はプロレスラーだぞ」


「そりゃ、さすがにイケねぇなあw」


「ハナっからなんでもない

 ただのビジネスパートナーだ」


「はいはい、そういうことにしとくから

 サクッと説明してきてよ」


そう言う彼は『いつもの倉田』に見えた

しかし、神野はまだ違和感を拭えないでいた



【余計なお世話書き】

神野くんと倉田くんの関係性ですが、プロデューサーと演者だった過去とビジネスパートナーとしての現在で、友達として変わらず付き合えるのは離れてたからかも。

苦楽を共にしたというより、性格真逆なのになんかウマが合う的な。

男同士なんでいろいろ悪さもしていたようです。

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