おじいちゃんと言われたその人は
夕方、幼稚園に保護者の迎えが来る時間帯。
「シン君、おじいちゃんが来たよ」
「…おじいちゃんは大阪にいるから違う」
園児の保護者を名乗る男性が現れた。おひげが生えているからそう思ったのだろう、しかし世の中には見た目では判断できないものがある。
「え、でもシン君の保護者って言っていたよ?」
「今日はお父さんが来るから」
「あら、じゃあ違うのね」
そこで一人の園児が声を上げる
「せんせ~ あのおじさん、シン君のお父さんだよ~?」
「え、でもどう見ても」
そしてまた違う園児が先生に近づいて言う
「見た目で判断したらだめ」
「私会ったことあるから見てくる~」
園児は仲間を集めて外に出ていく、
危険知らずなのか好奇心旺盛というべきなのか…
女性の先生はついていかず園児が確かめに行く。
このような構図は生まれて初めて見た。
「シン君のお父さーん」
「おぉ、こんばんは」
仲良く話す園児とおじいちゃんの見た目をした男性
そして「シン君呼んでくるね~」と、また教室に戻っていく。
とても出来た園児というべきかなんと言うべきか……
「シン君お父さん来たよー」
「うん」
「ちょっと待って、ユキちゃん会ったことあるって何回?」
「3かい!声がおなじだから」
なんというか子供はすごいな、と思った。
声で判断だなんて結構な技術だろう。
それから慌てて来た先生は「申し訳ありませんでした!!!」と声を大にして謝り、シン君のお父さんは「よく間違えられますから、大丈夫ですよ」と優しい対応をしていた。
「シン君また明日ね~」
「うん」
シン君を見送った後、ユキは私の所にトコトコとカバンを持って歩いてくる。可愛い。
「帰ろっか」
「うん!」