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7話

 王子(おうじ)さまとネズミが見守(みまも)(なか)で、西(にし)()(やま)(おお)きな大きな(とり)は、(そら)のとても(たか)(ところ)までとんでいきました。王子さまは大きな大きな鳥にむちゅうで()()いていなかったけど、空はいつのまにか(くろ)(くも)(ひと)つもなくなっていて、やさしいお()さまの(ひかり)がさんさんと王子さまとネズミをてらしています。

 あたたかいお日さまをあびながら王子さまは大きな大きな鳥がとんでいくのをみつめていました。王子さまが()ている中で大きな大きな鳥はとうとう空のてっぺんまでたどりつきました。そしてもう一度(いちど)せかいじゅうにきこえるような大きな(こえ)でなきました。

 大きな大きな鳥がなきごえをあげると、まるで空にもう(ひと)つのお日さまができたように大きな大きな鳥はキラキラと光り出しました。王子さまはあんまりまぶしくててのひらをかざしたけれど、その(ちい)さな()のひらをすかすように光は王子さまの()にとびこんできます。

 王子さまはとうとう目をあけていられずにまぶたをとじました。しばらくすると大きな大きな鳥の光はきえてしまいました。王子さまは空をもう一度見あげて大きな大きな鳥のすがたをさがしましたが、さっきまでもう一つのお日さまのようだった大きな大きな鳥は(あお)い空のどこにもいません。

 でも王子さまは大きな大きな鳥のかわりに空から小さな光がおりてくることに気が付きました。その光は(あか)くなったり青くなったりしながらすこしずつおりてきました。ネズミがいつの()にかもとどおりポケットの(なか)にとびこんできたのにも気づかずに王子さまは小さな光を見守っています。

 (なが)い長い時間(じかん)をかけて光はとうとう王子さまの小さな()のたかさまでおりてきました。それはにじいろにかがやく大きなたまごでした。

 王子さまが空からおりてきたたまごを()けとめようとそっとてをさしのべると、たまごは王子さまのむねのたかさまでおりてきてから、パリパリとひびわれていきます。たまごに(はい)ったひびはすこしずつ(なが)(ふと)くなって、とうとうたまごのからがポロポロとこぼれはじめました。

 たまごのわれた所からは、にじいろの光とまるでてんしさまのうたごえのようなきれいな音色(ねいろ)がきこえてきます。王子さまがたまごをうけとめようとした手のひらにはたまごのからが次々(つぎつぎ)とおちてきますが、たまごは王子さまのむねのたかさでてんしさまのうたをひびかせながらういています。

 王子さまが見守る中でたまごはとうとうぜんぶがわれてしまいました。たまごの中からはまっかな小さな鳥があらわれました。その小さな鳥のきいろいくちばしにはまっかなまっかな大きな(はね)がはさまっていました。

 王子さまはその小さな鳥が西の火の山の大きな大きな鳥のうまれかわりだとわかりました。だから小さな鳥にありがとう、と言って羽をうけとりました。

 王子さまのありがとうにピィとひと(こえ)へんじをした小さな鳥は、羽を王子さまにわたすと小さなつばさを(ひろ)げて西の火の山の空へととびたっていきました。王子さまとネズミは小さな鳥が(まめ)つぶのように小さくなって見えなくなるのをじっと見つめていました。

 こうして王子さまはとうとう西の火の山の鳥のお(まも)りを手にすることができました。そのまっかな大きな羽はとてもあたたかで、きっと王子さまはふぶきをのりこえることができるでしょう。よろこんだ王子さまとネズミはげんきよく西の火の山をおりていきました。


 王子さまは西の火の山をおりると西のそうげんもかるがるととおりすぎて、もう一度(みなみ)(くに)までやってきました。ネズミはまるでふるさとの(きた)の国のようなふぶきにびっくりしてしまいました。でも王子さまは西の火の山の鳥にもらった羽をかたてににぎりしめて、まっ(しろ)なゆきの中へと入っていきました。

 南の国へはいってきた王子さまのすがたを、おしろのひろまにおかれたかがみがはっきりとうつしています。かがみをみつめる魔女(まじょ)のとなりでは、王子さまのいもうとのおひめさまがきらきらとかがやくようにうつくしい氷のなかでねむっています。

 魔女がみつめるかがみの中では王子さまの手もとには西の火の山の鳥の羽。その羽はたしかに王子さまにふりそそぐゆきをとかしていくようです。でも魔女はゆきをとかしているのは王子さまの本当の勇気(ゆうき)のようだと思いました。

 そして魔女はだれにもきづかれないようにそっとわらっていました。


 魔女が見つめているとは()らない王子さまは南の大きな国をずんずんおしろへむかって(ある)いていきます。王子さまはこんどこそおひめさまをたすけだすのだとかたくけついしているのです。ネズミはふぶきにびっくりしたけれど、王子さまがにぎりしめている羽のおかげでちっともさむくありません。

 ポケットの中でネズミが王子さまをおうえんしていると、王子さまのゆく手になにやら大きなくろいかげがあらわれました。これこそ魔女が()っていたかいぶつにちがいありません。くろいかいぶつは王子さまが歩くうちにかずがふえていきます。

 ネズミは王子さまにかいぶつをよけていきませんか、とたずねましたが、王子さまはいもうとがまっているから、このまままっすぐすすむよ、だいじょうぶ、ぼくにはお(とう)さんがくれた(けん)(たて)があるのだから、とこたえました。

 そう言った王子さまはあらためて勇気をふりしぼると、かいぶつにかけよって、えいやっと剣をひとふり。みごとにかいぶつをたいじしました。でもかいぶつはたくさんいます。かいぶつも王子さまをやっつけようと大きな手でパンチ。

 でも王子さまはとてもゆうかんな王子さまなのです。王さまがくれたみずうみの国でいちばんかたい盾をかざして、かいぶつのパンチをかわします。そしてひらりと剣をもうひとふり、ふたふり。たちまちかいぶつたちをたいじしました。

 くろいかいぶつはまだたくさんいましたが、王子さまはとてもゆうかんなので決してこわがることなくかいぶつたちに立ちむかって行きました。さいしょは南の国のおしろがかくれてしまうほどたくさんいたかいぶつたちは、王子さまがえいやっと剣をふりおろすたびにいなくなっていきます。

 そしてとうとうゆうかんな王子さまにかなわないとわかったかいぶつたちは、てんでばらばらににげていきました。王子さまはかいぶつたいじにきたのではなかったので、にげだしたかいぶつたちをおいかけるようなことはしませんでした。ポケットの中で火の鳥の羽をあずかっていたネズミから羽をうけとると、おうじさまはまたふぶきのむこうにぼんやりと見えるおしろに()かって歩きだしました。


 火の鳥の羽をにぎりしめた王子さまが雪をかきわけてとうとうたどりついたおしろは、ふるさとのみずうみの国のおしろよりもとってもとってもりっぱでした。王子さまの剣でもきりさくことのできないような、かたそうな(いし)でつくられた高いかべの向こうに、天までとどきそうな高いとうがいくつもたっているのが見えます。なぜかあけっぱなしになっているおしろの(もん)は、本当ならなんにんがかりでうごかすものだったのでしょう。

 ところがそんなりっぱなおしろなのに、へいたいさんは一人(ひとり)もいませんでした。まるでゆうれいのおしろのようです。ネズミはすっかりこわくなってしまいましたが、王子さまの(こころ)には勇気のほのおがあかあかとともっています。ネズミさん、ぼくがいっしょにいるからね、そう言ってブルブルふるえるネズミのあたまをそっとなでてから、王子さまはてつでできた門をくぐりました。

 おしろの中にわにもだれもいませんでした。とうとい天使(てんし)さまのちょうぞうがみずがめをかついだ大きな大きなふんすいはふぶきですっかりこおってしまって、まるでおしろのじかんが()まってしまったかのよう。

 火の鳥の羽のおまもりをにぎりしめても、心のさむさまではなくせません。だけど王子さまはいっぽいっぽおしろのいっとう大きなたてものへと(ちか)づいていきます。王子さまはいもうとのおひめさまをたすけると、その(とき)までけっしてふるさとのみずうみの国へはかえらないと、もうかたくきめていたからです。

 王子さまがあと五歩(ごほ)でたてものへと入るその時、王子さまのうしろでガラガラと大きな音がなりました。王子さまがふりかえると、けっしてうごきそうになかったおしろのもんがしまっていました。

 ネズミはあわてて、王子さま、これはきっとまじょのわなです、いったん()きかえしましょう、と言いましたが、王子さまはこうへんじをしました。

 ネズミさん、だいじょうぶ、いもうとをたすけたらきっと門はまたひらくから。そう言った王子さまはもう一度たてもののとびらへとむきなおったのです。

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