表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

6話

西の山の火の鳥との対峙

 あたたかいお()さまの(ひかり)をあびてひとねむりした王子(おうじ)さまはげんきいっぱいになりました。(おお)きくせのびをしてネズミさん、おはようとほほえみかけると、ネズミも王子さまのえがおがうれしくてヒゲをひくひくさせて(わら)いました。

 そしてだんだんけわしくなるやまみちにまけないように、二人(ふたり)でにぎやかにおしゃべりをしながら西(にし)()(やま)をのぼっていきます。いっぽ(あし)をすすめればお日さまに(ちか)づくはずなのに、ふたたびぶあつい(くろ)いくもが(そら)をおおって、二人のまわりはくらくかげっていきます。

 そしてゴロゴロとかみなりの(おと)がきこえてくるようになりました。ネズミがポケットの(なか)でギュッとめをつぶってふるえているのに王子さまは()()きました。そこで王子さまは元気(げんき)()るマーチをくちずさみます。(あか)るくてたのしくて、ネズミもいっしょにうたいます。

 やがてかみなりはゴロゴロとうなるだけじゃなくて、ときどきピシャっと(ひか)りますが、ネズミはもうちっともこわくありません。だってやさしくてゆうかんな王子さまといっしょだからです。


 マーチがおわったらこんどはネズミは(きた)のくにのなつかしいうたをうたいます。(みち)はとおくけわしいけれど、(すこ)しだけでも王子さまがたのしく()()かえたら、そんなふうにおもって(おお)きなこえでうたおうとネズミがいきをすいこんだら、なんだかトゲトゲしたにおいがただよってきました。

 ネズミがふしぎにおもってはなをヒクヒクさせると、王子さまはネズミさんも気がついた、とたずねました。

 そうです、これが(おお)きな(とり)のはなしていた(どく)のにおいにちがいありません。王子さまがあたらしい道をさがそうとキョロキョロすると、ネズミはふたたび自分(じぶん)のでばんとばかりにポケットからとびおりました。

 そして王子さまがただしい道をえらべるようにと(まわ)りをかけまわって()きます。そんなやさしいネズミをしっかりと()ってみまもっていた王子さまは、なんだかあたまがクラクラすると(おも)いました。

 なんだか気持(きも)ちがフワフワすると思ってへんな気持ちになった王子さま。ころんではいけないといったんじめんにすわりました。それでもなんだかフワフワするのはなくなりません。きれいなきんのかみの()えたおでこからはヒヤリとしたあせもながれてきました。

 でも王子さまはちっともあつくはないのです。それどころか(かぜ)はヒンヤリとつめたく、王子さまはさいしょに(みなみ)(くに)へ行こうとしたときのことを思い出してしまいました。西の火の山でこんなにさむいのだとしたらじぶんのふるさとのみずうみの国はあのふぶきのようにこごえてしまうかもしれない、とこわくなってしまったのです。

 こわくなってこわくなってつめたい風のこともわすれそうになった王子さまは、フクロウにもらったくびかざりをぎゅっとにぎりしめました。フクロウのやさしい(こえ)はきこえてこなかったけど、とてもこわい(とき)(まえ)(すす)むことこそ勇気(ゆうき)のあかしだよと、フクロウがささやきかけてくれた(とき)のなつかしい(こえ)を思い出して王子さまは勇気をふりしぼり、ネズミがもどってくるのをまちました。

 やがてネズミはあたらしい道を見つけて王子さまのところへとチョロチョロと(はし)ってきました。ネズミがじまんげにこっちです、王子さま、という声にホッと一息(ひといき)ついた王子さまは、(こころ)のそこからネズミにお(れい)()って、ネズミの言うとおりの(あたら)しい道で西の火の山をのぼっていきました。


 毒のにおいがなくなって安心(あんしん)した王子さまはグイグイと山をのぼっていきます。そしてとうとう王子さまは山のてっぺんまでのぼることができました。でも王子さまが西の火の山にのぼったのはこの山にすんでいる大きな大きな鳥の(はね)をもらうためです。ところが山のてっぺんにいると思っていた大きな大きな鳥はかげもかたちもありません。

 ネズミが王子さま、大きな大きな鳥はどこにいるのでしょう、と言いかけたそのときです。さきほどまでのつめたさがうそのような(あつ)い風と、バサリバサリと音がきこえてきました。王子さまがびっくりして(うえ)()あげると大きくてまっかな鳥が王子さまをにらみつけていました。

 王子さまの勇気は鳥のするどい()でけずられてしまうみたい。まわりがあつくなっていくのに王子さまの心の(なか)はだんだん(つめ)たくなっていく気がしました。とてもとてもこわかったけれど、王子さまはさいごの勇気をふりしぼって、西の火の山の鳥の王さま、ぼくにあなたの羽をいちまいくださいなとおねがいしました。

 けれども大きな鳥はじっと王子さまをにらみつけるだけ。何もしゃべってくれません。王子さまがもういちどおねがいしようとしたら、今までずっといっしょについてきたネズミが王子さまのポケットからとびだしました。

 そして王子さま、自分はこわいのでさようならします、と言って山をおりていってしまいそうでした。

 王子さまはびっくりしてしまいました。そしておともがいなくなると思って不安で心がいっぱいになりました。王子さまはフクロウのちゅうこくを忘れて思わずネズミを追いかけてうしろをふりかえってしまいそうになりました。

 しかし王子さまが一歩下がろうとしたその時、そのむなもとでフクロウのくびかざりがまるで(すず)のようにリィンと(うつく)しい音を立てました。ささやくような(ちい)さな音だったけど、王子さまはフクロウの大きなやさしい目と、フクロウが(つく)ってくれたそぼくなスープの(あじ)をおもいだしました。

 それは王子さまがまばたきするとたちまち(わす)れてしまうほんの少しの思い出。だけどおかげで王子さまは(うし)ろに()がろうとした足をほんのちょっとだけ()めることができました。つづいて王子さまはむなもとにあたたかなおもみをかんじました。

 ハッとわれに(かえ)った王子さまのポケットには、にげてしまったはずのネズミがチョコンとおさまっていました。ネズミさん、かえってしまったと思ったよ、と王子さまはネズミに(はな)しかけました。ネズミはふしぎそうに、王子さま、自分はずっと王子さまといっしょです、とこたえました。それをきいた王子さまはいつものようにやさしくほほえんで、そうだね、ごめん、そしてありがとう、と()いました。

 そして王子さまはネズミをポケットからそっととり出して、ネズミさん、少しだけはなれたところでまっていてね、鳥の王さまとおはなしをするから、言いました。ネズミは王子さまといっしょにいたかったけど、おねがい、とくりかえされたので大人しくチョロチョロと王子さまのそばをはなれてようすを見守(みまも)りました。


 ネズミが鳥の王さまにおこられない(ところ)まではなれると王子さまは大きくいきをしました。そして西の山の大きな大きな鳥にはなしかけます。鳥の王さま、あなたの羽をいちまいほしいのです、と。大きな大きな鳥は王子さまにはなしかけられてもなにもこたえず、ゆっくりとはばたきながら王子さまをにらみつけています。

 鳥の王さま、ぼくはふぶきにとざされた南の国へ行きたいので、あなたの羽をお(まも)りにしたいのです、王子さまはもう一度おねがいしました。しかし大きな大きな鳥はやっぱりなにもへんじをしないで、王子さまを見ています。

 王子さまは大きな大きな鳥がおまもりをくれないのではないかと不安(ふあん)に思って、そっとフクロウのくびかざりをにぎりしめました。そしてあの時フクロウのことばをだまって()ったことを思い出しました。王子さまはおくびょうな気持ちをふりはらって、こんどはしっかりとまっすぐに大きな大きな鳥のするどい目を見つめ返しました。

 すると大きな大きな鳥はとつぜん話し出しました。それは王子さまをしかる言葉(ことば)でした。王子よ、そなたはおろかものである、そしておくびょうものである、だが、と大きな大きな鳥はしゃべるのをとちゅうで止めます。王子さまがつづきをしずかな心でまっていると、大きな大きな鳥は言葉をつづけました。王子よ、しかしそなたはわがしれんをのりこえるために一番(いちばん)大事(だいじ)(もの)をもっていた。そなたのねがいにこたえてやろう。

 そういうと大きな大きな鳥は大きく(たか)()き声をあげて、西の火の山のてっぺんからさらに高い(そら)(うえ)へととんでいきました。ちょっとはなれた所でみまもっていたネズミがあわててかけよってきましたが、王子さまはちっともしんぱいせず、大きな大きな鳥がとんでいるすがたをじっと見つめました。

読んでくださってありがとうございました。

ご意見ご感想、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ