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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第一章 バルとラーラ
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立場と居場所と人気

 ソロン王子の婚約者となったニッキ・コウバは、常にソロン王子と行動を共にする様になっていた。

 それはニッキにコウバ公爵派を近づけさせない為でもあったので、学院でもニッキはコウバ公爵派や妹のミッチ・コウバと距離を置く。


 学院でコウバ公爵派は、ニッキがソロン王子の婚約者となった事の威を借りて、我が物顔をしていた。

 しかし肝腎のニッキが傍にいないし、学院にはコウバ公爵派の権勢を無視する存在がいる。

 先頭に立って無視をしているのは、ラーラとバルだ。パノはニッキ・コウバよりは下位に立っている事を礼で示している。しかしそのパノがニッキに敬意は見せない。ニッキと同格を主張するバルとラーラより、下から(あなど)りを隠さないパノの方が、コウバ公爵派の生徒には気に障る。

 我が物顔が出来ても、それがあまり効果のない事は、コウバ公爵派にストレスを与えていた。

 

 コウバ公爵派が護って助けてやっている筈のリリ・コーカデスが、コウバ公爵派と距離を置こうとするのも納得出来ない。もっと擦り寄って来るべきだ。



 リリはコウバ公爵派と距離は置いているが、バルとラーラとは家同士が明確に敵対しているので、ラーラ一派にも近付かない。

 中立派は中立派で、リリと距離を置いている。

 リリの周りはコーカデス侯爵派の生徒が固める筈だけれど、その人達等とも上手くいってはいない。


 コーカデス侯爵派の生徒は家の命令でリリの傍に立っている。

 けれどコーカデス侯爵派との立場を表明する事で、ラーラ一派はもちろん、中立派の生徒からも距離を置かれてしまう。

 学院内での付き合いが非常にギクシャクしてやり(づら)い事が多いが、それをリリが改善してくれる事は期待できない。もちろんリリを責めたりも出来ない。

 正直なところ、コーカデス侯爵派の生徒達は学院を休みたかった。コウバ公爵派生徒が何かと搦んでくるのも鬱陶しいし。



 日に日に勢力を拡充するラーラ一派には、しかし明確な敵対派閥が存在する。それなので学院内で敵と衝突して、イヤな思いをする事も多い。


 一方、平和なのは中立派の生徒だ。

 ソロン王子の婚約者のニッキを担ぐコウバ公爵派に搦まれても、中立である事を主張する。そう言われれば、コウバ公爵派も無理を言えない。

 しかしこの主張を出来る事自体が、コウバ公爵派の権勢を認めていない事になり、つまりはラーラ一派に近い位置に立っている事を表していた。ラーラ一派とは良好な関係を維持出来ている。

 何より中立派の中には、ラーラやバルやパノのファンが多かった。



 ラーラのクラスでは、中立派の立場がより明確に分かる。


 ソロン王子の婚約者ニッキの妹ミッチがクラス内にいるのに、ミッチ達コウバ公爵派生徒5人以外は、全員がラーラファンといっても良く、ラーラ一派と中立派の区別は付かなかった。



 ミッチもクラス内では少しも威張れずにいた。

 ラーラに突っ掛かる事はしなくなっていた。何度も返り討ちに遭う内に、心が折られた。

 クラスの外で威張っていても、ラーラの姿が見えると直ぐに撤退する。


 学院でミッチの心が休まるのは昼休みだけだ。

 あれ以来ラーラ達は一般席で昼食を摂っていて、食堂の予約席ブースには現れない。

 他の学年のコウバ公爵派生徒も集まって、そこそこの人数で一緒に昼食を摂る事で、ミッチのプライドはなんとか保たれている。



 その予約席ブースにまで、一般席からの歓声が聞こえた。

 バルとラーラが引っ越した事が発表されたのだ。


 周りの驚き方に体を硬くしながらも、ラーラは微笑みを作ると言った。


「ですのでいつも仲良くして下さっている皆さんを招待させて頂きたいと思うのですけれど」


 周囲から嬌声があがり、ラーラは竦む。

 パノが呆れた表情で「予想しなよ」と呟き、立ち上がると手を挙げた。


「分かっているとは思うけれど、女子会だからね?」


 途端に男子生徒達から落胆の声が上がり、女子生徒達からはクスクスと笑い声が上がる。


「分かっていなかったみたいね。でも女子会だし、一度に皆を招待出来る豪邸じゃないわよ?」


 今度は女子生徒からざわめきが上がる。順番予想の声が広がって騒がしい。


「招待順は明日発表するわ」

「え~?パノさん、今じゃないの?」

「ラーラ、そんな用意してる?」


 パノの質問にラーラは硬くなった体で、何とか首を左右にぎこちなく振った。


「やっぱりね。希望者がいれば、みたいに考えていたのでしょうけれど、甘いわよ」

「だって、それ程大したおもてなしも出来ないわよ?」

「コードナ侯爵邸で主催したお茶会を忘れたの?邸が狭くなったからと言って、参加者が減る訳ないでしょう?」

「だって、コードナ侯爵家と一緒にはならないし」

「するのよ。バルに恥を掻かせる気?」

「う、そんな積もりはないけれど」

「それならやらないと。良い?バルとラーラが新しく構えた家なのだから、コードナ侯爵家と同じで当たり前。バルの為ならコードナ侯爵家以上のもてなしをしなければダメよ」

「そう。そうなのね。分かったわ」

「私も手伝うし、コードナ侯爵家にも相談しましょう」

「ありがとう。そうするわ」


 ラーラの言葉に肯いて、パノは周囲を見回した。


「と言う事で、私が取り纏めをするけれど、参加希望者を確認するのを何人か手伝って」


 周囲から協力する旨の声が上がる。


「え?男子は参加できないけど、手伝ってくれるの?」


 パノは男子生徒を代表して、バルに質問した。


「裏方はラーラに接近しないから、手伝えるよ。少しでも役に立ちたいし」


 バルの言葉に男子生徒達が肯く。


「じゃあ男子に頼もう。放課後作戦会議をするから、手伝ってくれる人はカフェに集まって。バルは良いわ。後で結果を伝えるから、ラーラと先に帰って」

「分かった。よろしく」

「パノ。ありがとう。よろしくお願いします」

「その代わりラーラ。しばらくの間は放課後毎日お茶会だからね?」

「分かったわ」


 ラーラは少し引き攣り気味な微笑みをパノに向けた。

 それを見てパノもバルも周囲の生徒達も苦笑した。



 新居でのラーラ主催のお茶会は、好評だった。

 毎日少しずつ趣向を変え、既に参加した人に話を聞いていても、新しく話のネタに出来る何らかのものが用意されていた。

 学院に通う女子生徒以外からも参加の要望が上がったが、それについては一旦断って、今回の一連のお茶会が終わったら改めて考えると答えていた。


 そのお茶会はコードナ侯爵家だけではなく、コーハナル侯爵家もソウサ家も協力していた。



 ラーラはお茶会を主催しながら、ソウサ商会の犯罪被害者サポート事業でのカウンセリング業務も継続していた。

 バルの事業のフォローも行い、ソウサ家の他の業務に付いても相談に乗ったりしている。


 コードナ侯爵家とコーハナル侯爵家で、貴族夫人としての勉強も続けていたし、学院が休みの日には両家のお茶会にも参加していた。


 学業に付いてはパノとバルに教わって、授業よりかなり前倒しで勉強を進めていた。

 学院で注目されているのに成績が悪いと恥ずかしいと、ラーラは二人に言い訳をしていた。


 そんな忙しい生活の中でも、ラーラは時間を作ってバルとデートをした。

 観劇や城下街や港町に出向くのは無理なので、デートはピクニックに限られる。

 時間は短くても、バルと取り止めのない話をして過ごすのは、ラーラにとってとても贅沢な時間の過ごし方だった。



 そんなラーラが体調を崩す。


 ラーラは妊娠していた。

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