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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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プレッシャー

 パノは敢えて真面目な表情を作ってラーラに向ける。


「チリンさんがディリオを産んでくれたけれど、コーハナル侯爵家にはもっと子供が必要だわ」


 そこまで言ってからパノは微笑んでみせた。


「結婚しない私が言うのも筋違いだけどね」

「パノ」


 名を呼んだけれど、やはりそう言う話になってしまうかと思うと、ラーラは言葉が続けられない。

 そのラーラの様子にパノは、今度はおどける様に肩を竦めてみせた。


「でもそうでしょう?ディリオを授かる迄だって、チリンさんにはプレッシャーがあったと思うけれど」


 元王女チリン・コーハナルは話の行方を心配していた。そして話題が妊娠や出産に固定されるのが分かっていたけれど、しかしパノにそう言われたなら、ここで反論しない訳にはいかない。


「いいえ、お義姉(ねえ)様。お義母(かあ)様もお義父(とう)様も、私にプレッシャーを掛けたりなんてなさいませんでしたわ」

「私も両親に結婚を逼られなかったくらいだから、それは分かっているけれど、でも、チリンさん自身が自分にプレッシャーを掛けていたでしょう?」

「それは、まあ、王妃陛下からは色々と言われたりしておりましたから」


 チリンの言葉にナンテが目を細める。


「そうだったの?チリンさん?」

「え?ええ、お義母様。直接責められる様な言葉はなかったのですが、まだ授からないのかとは何度も尋ねられました」

「まあ」

「あとはスディオとの事を細かく聞きたがったり、王家に伝わる秘術とかを勧められたり」


 チリンの言葉にミリがぴくりと肩を揺らした。それを視界の端で捉えながら、ナンテは視線をチリンから動かさずに尋ねる。


「王家に伝わる秘術と言うのは何なのですか?」

「妊娠し易くなったり、流産し難くなったりするそうです」

「そう言うものがあるのですね」

「あの、チリン姉様?」


 王家の秘術に付いて、これ以上深掘りする事を危惧したミリが口を挟む。


「なに?ミリちゃん?」

「王家の秘術ですのに、王族以外の人間に話してしまってもよろしいのでしょうか?」

「王家の秘術の存在を知ったのは、私が結婚してからよ?王太子殿下と話した時に、ミリちゃんもいたでしょう?」

「はい」

「あの時は私はもう王族ではなかったのだから、大丈夫よ。問題はないわ」

「そうなのですね」

「もしかしたら、秘術とか言われて、心配をしていたのね?」

「はい」

「私も秘術の中身は知りませんけれど、秘術の存在が知られる事に問題があるとは思えないわ」

「あれ?そうなの?チリンさん?」

「少しおかしいのではありませんか?チリン様?」


 パノとラーラが同時に尋ねた。ナンテも小首を傾げる。

 パノとラーラが目を見合わせて、お互いに同じ疑問を持った様である事を感じて肯き合うと、二人はチリンに顔を向けた。


「王家に伝わる秘術なのですよね?」

「それなのにチリンさんは内容を知らなかったの?」

「ええ。私だけではなく、王太子殿下も御存知ではありませんでした」

「秘術の存在自体もですか?」

「ええ。そうよね?ミリちゃん?」

「はい。王太子殿下も御存知ないと仰っていました」

「王家に嫁いだ妃にだけ、教えられるのかしら?」


 小首を傾げてそう言うパノの言葉に、ラーラも小首を傾げる。それに対してチリンも小首を傾げた。


「どうでしょう?王妃陛下の話では、公爵家の女性も王家の秘術を利用するそうで、王妃陛下も王家に嫁ぐ前に御存知だったとの事です」

「王太子妃殿下もそうなのかしら?」

「そうなのではないでしょうか?王太子妃殿下もコウバ公爵家の御出身ですから、結婚前から御存知だったかと思います。王妃陛下は公爵家の女性は知っていると言う様な事を仰っていましたので」

「お母様?コーハナル侯爵家にも公爵家から嫁いで来た方がいますけれど、何か御存知ではありませんか?」


 パノの問いにナンテは首を左右に振る。


「いいえ。お義母様は妊娠しなくても焦らなくて良いと仰ってくれていたくらいなので、そう言う話は一切された事がありませんね。実家でも聞いた事はなかったですし」

「バルは?」

「え?俺?」


 女性同士の話に身の置き所がない様に感じていたバルは、突然パノから話を振られて、チリンもナンテもいるこの場でつい、()でパノに返してしまった。


「コードナ侯爵家では、そう言う話を聞いた事はない?」

「いやあ、どうだろう?聞いた事はないと思うけれど?」


 首を傾げるバルに、パノは肯く。


「そうよね。お菓子の事ならともかく、結婚前のバルがたとえ聞いていたとしても、覚えている訳はないわよね」


 その通りなのでバルは言い返さなかったけれど、ナンテがパノを窘めた。


「パノ。ラーラやミリの前で、その様な言い種がありますか」

「あっ、ごめんね、ラーラ?ミリ?」


 パノに謝られたが、ラーラはナンテに顔を向けながら首を小さく左右に振る。


「いいえ、お義姉様。パノとバルはいつもこの様な感じですし、バルの知らない一面が知れたりもしますので、私にはありがたい事ですから」


 そう言って笑うラーラに、パノは肯き、チリンとミリは僅かに顎を上げ、ナンテは微笑みに苦味を滲ませ、バルは苦笑いをした。

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