改めての謝罪
レント達が元村長宅に入って行くのを遠巻きにして見ていた村人達は、領都方面から来た馬車にも近付かない様にして様子を見ていた。
その馬車からレントの祖父母、リート・コーカデスとセリ・コーカデスが降りる。二人は周囲に目をやる事なく、そのまま元村長宅に入った。
リートとセリの到着を知ったレントが玄関フロアまで出迎えて、二人をバルとラーラが待つ応接室へ案内する。
「バル様、ラーラ様。お待たせ致しました」
応接室のドアを開けてレントがそう言うと、その後ろからリートとセリが入室した。バルとラーラは立ち上がる。
ラーラはリートとセリに微笑みを向けた。
「コードナ侯爵ガダの三男バルの妻ラーラ・コードナです。リート・コーカデス殿とセリ・コーカデス殿ですね?」
リートとセリはラーラに対して礼を取る。
「お初にお目に掛かります。ラーラ・コードナ様。コーカデス子爵レントの祖父リート・コーカデスでございます」
「コーカデス子爵レントの祖母セリ・コーカデスでございます。お目に掛かれて光栄です、ラーラ・コードナ様。バル・コードナ様もお久しぶりでございます」
「バル・コードナ様。ご無沙汰しております」
「ええ、久し振りですね」
バルに対してもリートとセリが上位者への挨拶をして、バルもそれに返した。しかし皆の声はそこで途切れ、しばしの間、室内は静寂に包まれる。
それを破ったのは、少し困った様な表情のラーラだった。
「どうぞお掛け下さい、とわたくしが言いますのもおかしいですが」
「あ、いえ。ありがとうございます」
そう言って頭を下げるリートに合わせて、セリも頭を下げる。そして二人揃って顔を上げると、リートが言葉を続けた。
「しかしその前に、謝罪をさせて下さい」
リートの言葉にセリがラーラに向けて小さく肯く。ラーラも二人に小さく肯いて返した。
「ええ。どうぞ」
「ありがとうございます。先ずは長きに渡りラーラ・コードナ様を貴族として認めないと申しておりました事、まことに申し訳ございませんでした」
「申し訳ございませんでした」
リートが頭を下げるのに続けて、セリも謝罪の言葉を口にして頭を下げる。
「謝罪を受け入れますが、それに付いてはコーカデス家の先代当主からコードナ侯爵家に、正式な謝罪を頂いております」
「はい。ですがラーラ・コードナ様とバル・コードナ様の前でも、謝らせて頂きたいと思っておりました」
「そうですか」
ラーラは視線をバルに向けた。バルはラーラに小さく肯いて返すと、リートとセリに顔を向ける。
「私も謝罪を受け入れます」
そう言うバルに向けて、リートとセリはまた揃って頭を下げて、声も揃えた。
「「ありがとうございます」」
そして顔を揃って上げると、リートが言葉を続ける。
「また、手紙の紛失に関して、充分な回答が出来ませんでした事に付きましても、申し訳ございませんでした」
「申し訳ございませんでした」
頭を下げるリートとセリから視線を外し、ラーラとバルは目を合わせた。二人揃って眉根を寄せて、その表情のままリートとセリに顔を向ける。
「それは、何か新しい事実が分かったと言うことですか?」
バルの言葉にリートとセリが顔を上げた。
「いいえ。そう言う訳ではないのです。当時も情報を出し惜しみしていた訳ではありませんが、手紙の紛失は当家の不始末でしたのに、調査に協力的とは言えない応対をしておりました。改めて当時の資料や状況を再確認したりしましたが、新たな事実は見付けられておりません。申し訳ございません」
「申し訳ございません」
「・・・そう言う意味ですか」
バルはリートとセリから視線を外して、またラーラと目を合わせる。ラーラは小さく肯いて、リートとセリに顔を向けた。
「謝罪を受け入れます」
ラーラの言葉にリートとセリは揃って一旦顔を上げて、また揃って頭を下げて声を揃える。
「「ありがとうございます」」
そしてまた揃って顔を上げて、またリートが言葉を続けた。
「それと、これもお二人を御不快にさせてしまう話なのですが、是非、謝らせて頂きたい事がございます」
リートの言葉にバルは眉根を僅かに寄せる。ラーラは言葉は返さずに、ただリートに小さく肯いて返した。
「私達はラーラ・コードナ様に対して、影で悪魔と呼んでおりました」
「ミリ・コードナ様の事も、悪魔の子と呼んでしまっておりました」
「その事自体も申し訳ない事なのですが、先日の領民がミリ・コードナ様を侮辱した件も、紐解きますと私達の誤りが招いた事です」
「ミリ・コードナ様には当主への情状を望んで頂きましたが、本来は私達の罪なのです」
「私達は間違っておりました。謝って済む問題でも取り返しの付く問題でもございませんが、今後は当主と共に、領内の誤った思想を私達が率先して是正して参ります」
「ラーラ・コードナ様とミリ・コードナ様を侮蔑する様な考えは、もう二度と持ちませんし、領民達にも考えを改めさせます」
「まことに申し訳ございませんでした」
「申し訳ございませんでした」
揃ってまた頭を下げるリートとセリを見て、バルとラーラはまた目を見合わせ、互いにしか聞こえない様に、小さく小さく息を吐いく。そして肯き合うと、バルとラーラはリートとセリに顔を向けた。
「分かりました。謝罪を受け入れます」
「私も受け入れます」
ラーラとバルの言葉に、リートとセリは顔を上げる。そして声を揃えた。
「「ありがとうございます」」
リートとセリは、これまでよりも深く頭をバルとラーラに下げる。その後ろでレントも、バルとラーラに向けて深く頭を下げるのだった。




