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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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開発の進捗

 コーカデス領ではまず、住居の整備が行われた。

 領地内の廃屋は解体されて資材は再利用され、石切り場周辺に住宅や店舗が建てられる。そして人々が新しい家に移ると、それまで住んでいた前から立っていた建物も解体されて、再利用されていった。


 大勢の人が集まる建物も建てられていく。

 その一つはコーカデス商会が運営する食堂となった。調理や給仕をする為の人も雇い、コーカデス商会の従業員とその家族には無料で食事が提供される。

 家族向けの住宅の他に、独り身用の集合住宅も建てられた。家族向けには一軒一軒に風呂もトイレも付けられたが、集合住宅はトイレは共同で風呂はない。そして別に共同浴場が建てられた。こちらは集合住宅に住んでいなくても、従業員とその家族なら無料で利用が出来る。

 病院も建てられた。そこには医師と助産師が常駐し、やはりコーカデス商会の従業員とその家族は無料で診察を受けられる。

 そして従業員が出産をする場合には、妊娠から育児までの休業期間中にも給与の半額が支給された。収入が半分になってもここで暮らす分には、衣服以外の殆どのものが従業員と家族には無料で済む。なお妊婦服や乳児服は従業員には無料で貸与された。もちろん妊娠中や出産後や乳幼児の為の食事も用意される。

 また子供達を預かる為の建物も建てられた。そちらでは子供の面倒を見る人と教師も雇い、そちらもコーカデス商会の従業員の子供は無料で預かり、本人が望めば無料で教育も与える。更には他の子の面倒を見る子には、その貢献度に応じて報酬が支払われた。

 日用雑貨や衣料品を扱う店なども用意された。これらの店は従業員でも有料だ。酒屋も出来、飲み屋も開かれた。女性が男性を接客する店も置かれる。そしてこれらの店は住民が増えるにつれて、店舗数を増やして行く事になった。


 臨時雇いとしてコーカデス領に来て、コーカデス商会に就職する人も多い。

 コーカデス商会の従業員になれば、最初は作業員として雇われた人でも、石工や設計士や教師や料理人などに仕事を変える事も出来た。たとえ未経験者でも見習いとなって、働きに応じた給与が支払われる。また仕事に就くに当たっては、性別は問わない場合が多かった。女性でも希望すれば力仕事や職人仕事に就ける。例外は助産師とその補助職などで、それは女性に限られた。

 そしてコーカデス商会の従業員には、徐々に女性が増えていく事になる。夫の仕事でコーカデス領に付いて来た妻が、コーカデス商会に就職する事も多かった。また、ミリが積極的に採用している事もあり、従業員の中のシングルマザーの比率が少しずつ増していく。中には妊娠が分かってから男が逃げてしまい、それでも産む決断をしてコーカデス領に来た女性もいた。

 そして従業員の子供の数も、だんだんと増えていく事になる。それはコーカデス商会の従業員をソウサ商会が募集する際に、コーカデス領での労働条件や生活環境を伝え、子供がいたり既に妊娠していたりする人達に対して、積極的に採用活動を行っているからであった。



 水路の建設も着々と進められている。それには石切り場で切り出された石材が使われた。

 だが、建設を始めると直ぐに、石材の運搬が問題となる。

 初めは円柱状の木材を地面に並べてその上に石材を置いて、木材をコロとして転がして石材を運んでいた。しかし運ぶ途中で石材がコロの上から外れて落ちると、コロの上に戻すのが大変だし、石材の角が掛けたり石材が割れたりする事もあった。

 ミリは怪我人が出てしまう事を心配し、それを防ぐ対策を講じようと安全策を求めていた。何しろ石材の下敷きになれば大怪我をするし、手足が使えなくなったり死亡してしまう事さえあり得る。

 安全対策の為のアイデアが色々と寄せられたが、最終的には円板状に加工した木枠を石材に複数はめ、その状態で転がして行く方法となった。これは王都の港で樽を転がして運んでいるのを見掛けていたレントが思い付いた案だった。石材にロープを掛けて前後から引っ張る事で、安定した速度で運べるし方向修正も容易で、事故が起こる可能性も低かった。そして木枠をイカダ代わりにする事が出来る様に作れば、水路で運ぶ時にもそのまま利用出来る事になる。

 この運搬方法は大きい規格サイズの石材を運ぶ時だけではなく、中間の規格サイズの石材を運ぶ為にも使われた。中間サイズの石材は、一人で持ち上げられる人はなかなかいない。その為二人以上で運んでいたが、一緒に運ぶ人達の息を合わせないと事故が起こる。大怪我に至る事はなかったが、実際に怪我人も出ていた。それを木枠にはめて転がす事で、一人でも運ぶ事が出来る様になる。体重が軽かったり力が弱い人でも、二人で組めば安全に運ぶ事が出来る様になった。


 水路は石切り場の傍から作り始められ、海岸に向けて延ばして行く。

 工事が進むと工事現場は当然、石切り場傍の住宅地から遠くなっていった。そうすると工事現場まで通うのに時間が掛かる様になる。そこでまず工事箇所の近くに簡易食堂を建て、そこで休憩を取ったり昼食を摂ったり出来る様になった。工事が進むのに合わせて簡易食堂も移動させる。

 やがて簡易宿泊所も作られる様になり、工事関係者はそちらに寝泊まりする様になった。住居に帰るのは仕事が休みの日になる。また、石切り場から工事現場まで石材を運ぶのも一日では往復出来なくなる。その為に石材を運ぶ人達も、簡易宿泊所を利用する必要があった。

 水路の工事が進むと、石切り場から石材を工事現場まで運ぶのに、何日も掛かる様になる。その為、簡易食堂は工事現場と共に移動して行くが、簡易宿泊所は一定の距離を開けていくつも建てられていった。



 水路や住居などの建設が軌道に乗ると、設計士や技術者達は海岸に移動し、港の建設の準備に入る。

 まず最初に行うのは、自分達が暮らす仮設住宅の建設だ。それから資材を格納する為の倉庫も作った。

 石材は水路の脇に作られる側道を使っても運ばれるけれど、その側道も水路と共に作られていく。つまり港や港町を作る為の石材は、水路が完成しないと運んでは来られない。

 それなので仮設住宅や倉庫を建てる資材は、船で運ばれて来ていた。その資材運搬の為に仮設の桟橋も作られ、ソウサ商会の船はその仮設桟橋に停泊出来る様になった。


 ソウサ商会も、王都とコーカデス領を船での往き来をし易くする為に、色々と対応を行っている。その中の一つは灯台の設置だ。

 レントのアイデアをミリがソウサ商会に伝えたところ即座に採用され、王都とコーカデス領を結ぶ航路から見える要所要所に拠点が手配された。人里から離れて道もない様な場所もあったが、そこには人と資材と食料などを船で運ぶ。

 その拠点の場所はソウサ商会の船の地図に印されて、二つの拠点の方角と地図の印を直線で結んだ交点が、地図上の船の位置として特定出来る様になった。

 これにより、夜間でも船を進める事が出来る様になり、碇を下ろせる浅い場所に碇泊する為に船を移動する必要もなくなった事もあって、王都とコーカデス領の移動時間は半分になる。早朝に王都を発てば、翌日の日暮れ前にコーカデス領に着ける様になったのだ。



 設計士や技術者が港や港町の測量を進めている海岸に、ソウサ商会の船でラーラとバルが王都からやって来た。そしてその船には、レストランやホテルの建設のアドバイスをする為に、いくつかの国の人達も同行している。

 そのラーラとバル達が船から降りるのをミリとレントは仮設桟橋の上に立って出迎えた。

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