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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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ビーニの釈放

 ビーニと父親は釈放されたが、父親は今にも死にそうな状態だった。

 前回はビーニの暴言で再度の裁判が予定されていたから、ビーニも父親も治療を受けられたが、今回は刑罰を受けた直後に解放された為、治療は施されてはいなかった。


「パパ!」


 粗末な服を血だらけにして気を失っている父親を抱き締めるビーニも服に血が滲んでいる。


「父君も貴方も治療をしましょう」


 ビーニにそう声を掛ける人がいた。


「あんたは?」


 ビーニが振り仰ぐと、数人の小綺麗な服装をした大人達に囲まれている。


「ソウサ商会の者です」


 問いに答えた一人が伸ばした手をビーニは打ち払った。


「触るな!」

「しかしこのままでは貴方の父君が」

「うるさい!お前達は敵だ!施しなんか受けない!」


 ソウサ商会の従業員は一旦手を引いて、ビーニ達の傍にしゃがむ。


「施しではありません。父君のコーカデス子爵閣下への借金は、ソウサ商会が債権を買い取りました。父君には怪我を治して貰って、借金返済の為に働いて頂かなければなりません」

「・・・何だって?お前達はパパをこんなにしておいて、金を奪おうって言うのか?」

「借金は返さなければならない物です」

「うるさい!後で払ってやるからあっちいけ!」

「いいえ。父君には治療が必要です」

「金なら払うって言っているだろう!あっちいけったら!」

「借金を返済して頂く為にも、父君には治療が必要なのです」

「帰ったら払うって言ってるだろう!あたし達に構うな!」

「・・・あなた達には帰る場所などないのではありませんか?」

「何言ってるんだ!家に帰るに決まっているだろう!」

「・・・父君の財産は没収されていますから、家も手放していると思いますが?」

「・・・え?」

「ですので借金を返済する為には、父君に働いて貰う必要があるのです」

「ウソつくな!」

「いえ」

「ウソだ!パパは町長だぞ!あの町はパパとあたしの町だ!町にはあたしん家がある!」

「・・・父君はコーカデス子爵閣下に町長を解任されたと聞きましたけれど」

「ウソだ!」

「その上で慰謝料を支払う為に財産を没収されたと」

「慰謝料?何で慰謝料を払うんだ?」

「それは馬車を襲ったからで」

「罰なら今受けたじゃないか!パパも!あたしも!」

「今受けた鞭打ちはミリ・コードナ侯爵令嬢を侮辱した罰ではありませんか?」

「・・・え?」

「取り敢えず、父君を治療しましょう。事情はその後、ゆっくり説明します」

「いえ、待って」

「ええ。いくらでも待ちますけれど、父君の治療は待てません。貴方も治療しないと、傷痕が残るかもしれませんよ?」

「え?傷痕?」

「ええ。さあ、父君を渡して下さい。私達で治療院まで運びます」

「待て!」


 そこに別の人間が声を掛けた。ビーニと父親とソウサ商会の従業員達を複数の人間が取り囲んだ。


「その人達は渡さない!」


 その面々を見て、ソウサ商会の従業員達は顔を蹙める。ビーニが新たな人達に問い掛けた。


「あんた達は誰だ?」

「我々は善意ある者だ」


 そう答えるのは、ソウサ商会のブラックリストに載っている、神殿の信徒会に所属する人間だった。回りを囲んでいる他の人間も同じだ。


「善意?」

「お父さんをソウサ商会に渡したら、一生非道い目に遭わされる。私達とおいで。私達ならただで治療をしてあげるよ」

「ただ?」

「ああ、そうだ。こいつらはお父さんを治療して、その治療費も借金させる気なんだ」

「え?そうなのか?」


 ビーニに問われて、ソウサ商会の従業員は肯いた。


「もちろん、治療費は自分達で支払って頂くが」

「ほらみろ!そうやって騙して金をむしり取るのがこいつらソウサ商会のやり方なんだ!」

「治療院の支払いを代理で済ますだけだ。騙してなどいない」

「いいや!その金からも利息を盗るんだろう!」

「それは、直ぐに返済出来ないならもちろんそうだが」

「ほらみろ!」

「しかしそれは、ちゃんとした契約の上で」

「ウソだ!娘さんを騙して意識のないお父さんを治療院に運ぶ積もりだった!私達は見ていたんだ!」

「騙してなんか」

「いいや!直ぐに治療しなければダメだと言って娘さんを焦らせていた!」

「直ぐにも治療が必要なのは本当で」

「ほらみろ!またそうやって話を誤魔化そうとしている!」

「誤魔化そうとなんて」

「娘さん!分かったろう!こいつらに付いて行ってもろくな目に遭わない!」

「貴方達がこの人達の治療をするなら構わない。とにかくこの人は早く治療するべきだ」

「ほらみろ!自分達の都合が悪くなったら逃げる気だ!」

「いいや、我々も付いて行く」

「何だと!邪魔する気だな!」

「違う。この人からは借金を返して貰わなければならない。あなた達に連れて行かれて、行方を分からなくされたら困るんだ」

「ほらみろ!本音が出た!結局は自分達の事しか考えてない!」

「我々の評価は良いから!とにかく!この人を早く治療するんだ!」

「うるさい!お前らなんか連れて行くか!借金なら私達が払ってやるから付いて来るな!」

「え?パパの代わりに払ってくれるの?」

「ああ、払って上げるよ。いくらだい?」

「いくらなの?」


 ビーニに尋ねられて、ソウサ商会の従業員は書類を差し出した。


「これが父君が支払う金額です」

「どれ」


 ビーニに差し出された書類を信徒会の人間が奪い取る。


「おい!」


 ソウサ商会の従業員が取り返そうと伸ばした手を躱し、信徒会の人間が書類に目を通した。


「何だこの額は!」


 そう言うと信徒会の人間は、書類を破いて宙に撒く。


「何をする!」

「こんなのは無効だ!払えるか!」

「その人が払うと契約したんだ。払ってもらうだけだ」

「無理に決まっているだろう!」


 地面に落ちた書類の破片を踏みながら、信徒会の人間はビーニを振り向いた。


「心配しなくて良い。こいつらに金なんか払わなくて良いから」

「おい」

「さあ、お父さんを運ぼう。怪我を治して上げるから」


 そう言うと信徒会の人間達がソウサ商会の従業員を押し退けて、ビーニの腕から父親を立たせて両側から支える。そしてビーニも立たせて促した。


「おい!無理に歩かせるな!担架を貸すから使え!」

「無理矢理使わせて金を盗る積もりでも騙されないからな!」


 ソウサ商会の従業員にそう言い返すと、信徒会の人間はビーニの肩を抱いて顔を覗き込む。


「君の怪我も、痕なんか残らない様に治して貰えるから、さあ」


 父親を先に行かせてその後ろにビーニを付かせ、その回りを信徒会の人間達が囲んで進んだ。

 その後ろでソウサ商会の従業員達は、書類の破片を拾い集める。そして集め終わると、ビーニ達の後を少し離れて付いて行った。

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