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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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ビーニの罰

 ミリとレントは漁村で別れる。


 レントはビーニ達を馬車で王都まで護送する為に、先ずはコーカデス領都に向かった。

 領都で家族にビーニの騒動の事情を改めて説明し、ミリの商会に名を貸す事も家族に伝える。

 そして支度を整えてから、ビーニ達と共に王都へと向かう。


 ミリは船で王都まで向かう。

 王都に着いたらミリも、コードナ侯爵とコーハナル侯爵に、ビーニの騒動の件を伝えた。

 またコーカデス領から王都までの街道整備が断られた事から、コーカデス領の開発を邪魔される可能性がある件も身内の人々に共有する。そしてこれを理由に開発の進み具合は隠す事にして、コーカデス領への開発投資の公募も行わない事も伝えた。

 それからミリはミリ商会とは別に、コーカデス領に本拠地を置くコーカデス商会を立ち上げた。ミリ商会を改名しなかったのは、ミリ商会はコーカデス領開発から手を引いた様に見せる為だ。ミリ商会がこれまでに雇った人達の契約先も、コーカデス商会に差し替える。

 それらが済むと、コーカデス領で働いて貰う為に追加で雇った人達と共に、ミリは船でまたコーカデス領に戻った。

 そして雇った人達を馬車で送る手配を済ませると、ミリは騎馬で水路脇を通ってコーカデス邸に向かう。

 コーカデス邸でミリは諸々の報告をコーカデス家にして、家名を借りる事への代金を渡し、レントの祖母セリ・コーカデスに頼まれていた宝飾品を買い取った。

 それらを済ませるとミリは石切り場に向かい、そこから水路建設の技術者達と合流して、水路の設計と堰の検証作業に加わる。


 ミリはこのままコーカデス領に留まり、ビーニの裁判には関わらない積もりだった。

 コードナ侯爵家としての対応はバルの父ガダ・コードナ侯爵とバルに任せ、レントのサポートも二人にお願いしている。パノの父ラーダ・コーハナル侯爵にもミリから話を伝えたので、コーハナル侯爵家からも王宮に、滞りなく裁判に取り掛かる様に手を回して貰える事になっていた。



 裁判で、ビーニは貴族への不敬を罪とされ、有罪となった。しかしビーニはまだ未成年である為、その罪の多くは親に責任があるとされ、ビーニの父親も監督不足を罪とされて判決が下された。

 一方で領主であるコーカデス子爵レントに対しては、ミリからの嘆願状がコードナ侯爵家から提出された事もあり、領民の行動に対して領主としての罪があったとは言えないとの判断がなされ、レントは無罪となっている。


 コードナ侯爵家はビーニと父親への罰として、ビーニにも父親にも、鞭打ちの刑を選んだ。平民から貴族への侮辱なので、これより軽い罰はない。他は手足の切断や死刑であり、切断箇所や死刑方法が選べるくらいだった。

 しかしまだ子供のビーニが執行人に鞭打ちをされれば、それは死に至るかも知れない。

 その為にビーニの父親は、ビーニの分も自分が代わって鞭で打たれる事を申し出て、コードナ侯爵家も裁判官もそれを受け入れる。ただしビーニに罰を与えない訳にはいかない為、ビーニも一回は鞭で打たれる事となった。


 ビーニの鞭打ち刑の執行は人々に公開される事になる。執行場所は去勢広場だ。

 未だに暴れているビーニは係官に引き摺られる様にして運ばれて来た。一方でビーニの父親はそのビーニを宥めながら、係官の言う事をきいて大人しく広場に姿を現した。

 二人は舞台の上の刑罰台に体を固定される。


「これより、貴族であるミリ・コードナ侯爵令嬢を侮辱した罪で、平民と、娘をその様に育ててしまった罪でその父親に対する鞭打ちの刑を執行する」


 係官の宣言に、見物人達の間にざわめきが広がる。


「なお、娘はまだ子供である為、父親が代わりに鞭打ちを引き受ける事を望んだ。これをコードナ侯爵閣下が良しとした為、娘への鞭は一回とし、残りは父親に打つ」


 執行人が鞭の用意をすると、係官がビーニの猿轡を外した。それはビーニの悲鳴を見物人達に聞かせる為だったが、それより先にビーニの大声が広場に響く。


「ミリ・コードナは悪魔だ!あたしは悪魔を悪魔と言っただけだ!正しいあたしを鞭で打つこいつらも悪魔だ!」


 ビーニの言葉に執行人は戸惑ったが、ここまで散々ビーニの暴言を聞いてきていた係官は僅かに眉を顰めただけで、執行人にビーニへの鞭打ちを行う様に促した。

 大声でミリやコードナ侯爵家や裁判官の批判を続けていたビーニの声が、短い悲鳴に変わって途切れる。

 ビーニは気を失っていた。


 その後はビーニの父親の悲鳴が広場に響き、父親が気絶したら気付けを行って意識を取り戻させながら、刑罰の執行が終わる。


「これにて本件の刑罰の執行は終わるが、この場でもこの者の口から貴族への侮辱があった。その件に付いては後日改めて、裁判にて裁かれる事となる」


 見物人達に向けてそう言うと、係官達は気絶したままのビーニと父親を運び出した。



 後日、父親の怪我がある程度治ってから裁判が行われ、ビーニはやはり有罪になり、父親も罪に問われた。

 しかしこのまままた鞭打ちを行えば父親が死ぬ可能性は高い。

 それなので刑の執行は、父親の傷が完治してから行われる事になる。


 ビーニは動けるまでに怪我が治ってからは、牢の中で父親の怪我の看病をしていた。その間、ビーニは何度も父親に謝り、貴族や裁判官を批判する言葉を口にする事はなかった。


 そして二度目の刑罰の執行となる。

 今度はビーニは猿轡を外されても、何も言わなかった。係官が言いたい事はないかと言葉を催促しても、ビーニは黙ったまま首を左右に振っただけだった。そして鞭で打たれた瞬間も奥歯を強く噛み締めて、ビーニは悲鳴を漏らす事すらなかった。

 父親の方はミリへの謝罪を口にしてから罰を受ける。そして父親が打たれるる度に、ビーニは「パパ!」と叫んだ。父親は気絶し掛かってそうもその声で意識を取り戻し、その都度ビーニに「大丈夫だよ」と微笑んで見せた。


 その二人の姿を見ていた見物人の中には、顔を蹙めたり涙を零す人もいた。


 そしてビーニは、釈放されるまでに一度も、ミリへの謝罪を口にする事はなかった。

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