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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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漁村での共有と認識合わせ

 ミリはコーカデス領都から漁村に戻り、石材を運ぶ為の街道補強が出来なくなった件をレントに共有する。


「つまり、海路で運ぶしかなくなりました」

「街道に付いてはミリ様の想定にありましたが、大きくない石材も海路で運ぶのでしょうか?」

「ええ。その方が情報を制御し易いですから」

「やはりかなり敵意を向けられているのですね」

「コーカデス領だけならこの様な事にはならなかったかも知れませんが、わたくしが関わればどうしてもコードナ侯爵家を意識されてしまいます。そうなると後ろ盾である公爵家を慮って、コードナ侯爵家との駆け引きで有利な条件を引き出せそうだと考えれば、こう言う対応になってしまうのでしょう」


 レントの眉根が寄った。


「街道を修理させてやるから何らかを譲歩しろ、みたいな事ですか」

「ええ」


 ミリが苦笑いを浮かべる。レントは首を小さく左右に振った。


「ミリ様の名前を出さなくても、コーカデス子爵家がコードナ侯爵家の配下に入った事が知られれば、同じ結果になりましたね。その事を考えると、工事に取り掛かってから中止を命じられるよりは、良かったのではありませんか?」

「そうかも知れませんけれど・・・」


 コーカデス子爵家がコードナ侯爵家の配下に入った件に付いて、王都ではもう情報が広まっていたかも知れない。しかしそれで既に領地に指示まで届いていたのか微妙だと思って、ミリは小首を傾げた。


「ミリ様?敢えて小さい石材だけを陸路で運び、情報を偽装する事も出来ると思いますが?」

「コーカデス領の発展度合を小さく見せ掛けると?」


 ミリは小首を反対側に傾げる。


「はい。コードナ侯爵家配下になった影響に付いて、見誤らせる事が出来ると思います」

「ですが、コーカデス領から王都に向かう人の流れ自体を抑制したいのです。人は情報を運びますから」

「しかしコーカデス領まで見に来られたら結局は、ある程度開発が進んでいるのかは直ぐに分かると思います」

「その見に来る先と言うのは、領都ではありませんか?」


 そうミリに言われ、レントは眉根を一瞬寄せてから開いた。


「・・・そうか。街道を通して石材が運ばれていないなら、石切り場までは探りに来ないでしょうね」

「ええ。今後は募集した人達も船で運べば、領地開発を諦めたから街道の補修も中止したと受け取るでしょう」


 ミリの言葉にレントは小さく肯く。


「なるほど」

「自領にも利益となる街道補強を許可しないなど、コーカデス領の発展を邪魔する意図もあるのかも知れません。いずれ気が付かれるでしょうけれど、開発を立ち上げて流れが作れさえすれば、邪魔をする方も邪魔の規模を大きくする必要があります。大きな邪魔を諦めさせる規模になるまで気付かれなければ、対応はかなり楽になる筈ですので」


 レントは今度は大きく肯いた。


「分かりました。と言う事は逆に、ビーニは陸路で運ばなければならないのですね」


 ミリは少し思案してから、ゆっくりと肯く。


「・・・そうですね。海路の存在に気付くのを遅れさせる為には、その必要がありますね」

「ではわたくしはビーニを護送しながら、陸路で王都に向かいます」

「・・・ビーニの裁判は話題になるでしょうけれど、コーカデス卿は馬車での護送には同行せずに、騎馬で別行動にした事にするのはどうですか?」

「いえ。領民がミリ様を侮辱した為に領主であるわたくしも裁かれる身ですから、しおらしい姿を見せながら、街道を進む事にします」

「コーカデス卿の時間を使う事になってしまい、申し訳ありません」


 ミリが頭を下げたので、レントは慌てた。


「いえいえ、ミリ様に謝って頂く事ではないではありませんか」

「しかし」


 顔を上げて目を合わせたミリに、レントは小さく左右に首を振る。


「コードナ侯爵家の配下にして頂いたのはわたくしの意思ですし、ミリ様に領地開発をお願いしたのもわたくしです」


 レントは自分の胸に片手を当てた。


「そもそもミリ様がいらっしゃらなければ、わたくしが王都に向かう為の道は陸路しかなかったのです。もしかして海路が使えない事に、残念な気持ちをわたくしが態度に表してしまっていたのでしたら、わたくしこそ謝罪しなければなりません」

「あ、いえ、その様な事はありませんけれど」

「そうですか。ミリ様がお気付きでいらっしゃらないのでしたら良かったです」


 そう言って微笑みを向けるレントに、ミリが返した微笑みには少しの苦みが滲む。そのミリの表情に気付き、笑いを取ろうとしてしまって加えた最後の一言は余計だったと感じ、レントの顔にも苦さが滲んだ。


 少しぎこちない雰囲気が漂ったけれど、ミリは話を進める事にする。


「ところで、コーカデス卿にお願いがあります」

「はい、なんなりと」


 気不味い感じから抜け出そうとしたレントの言葉が軽い調子になってしまい、レントは本当に気不味く感じた。しかしミリは話を進める為に、軽さも気不味さもスルーする。


「ミリ商会の名前を変えようと思うのですが、コーカデス家のお名前を貸して頂けませんか?」


 軽さも気不味さもスルーするミリの声の調子に更に気不味く感じたレントだけれど、それどころではない内容に目を見開いた。

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