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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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後始末と次の準備

 レントは手紙に、漁村での馬車襲撃とミリへの侮辱事件に付いてと、文官と護衛の要請に付いて書いた。それをミリが連れて来た連絡員に託してコーカデス領都へ、領主代理である叔母リリ・コーカデス宛てに届けて貰う。

 ミリは、馬車で運んで来た荷物をニダの所まで人手を使って運ばせると、連絡員の後を追う様にニダの畑の裏から水路脇の道を通って、一部の技術者と共に騎馬で領都を目指して出発した。

 レントは騒ぎの起きた村に残って後始末を行う。その際にレント付きの護衛二人だけでは危険がある為、ミリが手配した馬車に付いて来た護衛達もレントと共に村に残った。その為、馬に乗らずに馬車で移動する事になっていた技術者達は、追加のレントの護衛が送られて来るまで、ニダの所で待つ事になる。


 領主であるレントは、領内に閉じる犯罪に付いては裁判権を持つ。馬車の襲撃に付いては、レントが法に則って罪を裁く必要があった。

 ソウサ商会の馬車だったが、借りていたのはミリ商会で積み荷もミリ商会の物だった為、被害者はミリ商会となる。そのオーナーのミリが今後のコーカデス領の事を考えて、軽い罰で済ませる事をレントに要望していた。

 それなのでレントは、首謀者はビーニとその父親であり、襲撃の実行犯達はビーニ達に逆らうと村での暮らしが立ち行かなくなり、つまりは生活を人質にされた状態なのでやむなく馬車を襲撃したものとして、実行犯である共犯者達の罪は軽くした。馬車に実害がなかった事もあり、共犯者達の罰はミリ商会への慰謝料支払いだけで済ませる事として、レントは判決を下す。

 ビーニとその父親にも肉刑などは与えず、罰としては財産の没収だけでレントは済ませた。没収した財産はやはりミリ商会への慰謝料とする。しかしこれは馬車襲撃の主犯としての罰であり、貴族であるミリを侮辱した罪は王宮で裁かれる事になる。

 またビーニの父親が村長であるのに勝手に町長を騙っていた事に付いては、コーカデス子爵領に罰金を納める事を罰とした。ただし財産は没収済みなので、罰金は借金となって利息も生まれる。なおビーニの祖父の代から勝手に町長を名乗っていた事が判明したが、ビーニの祖父は既に亡くなっている為、罪はあるが処罰はなしとした。


 ミリはコーカデス領都への道半ばで、追加のレントの護衛達と文官に擦れ違う。そこで情報を交換しあい、レントの護衛達は漁村へ向かい、ミリはコーカデス領都に向かった。


 追加の護衛達と文官が漁村に着くと、残っていた技術者達はミリの手配した馬車に乗ってソウサ商会の護衛達に守られて、コーカデス領都に向かう。

 そしてその一行と入れ違いに、コーカデス子爵領の文官が馬車でも到着し、それを守って来たコーカデス子爵領の兵士もレントの護衛に加わった。

 文官の一部は今後も、村長の代わりに漁村を治める代官とその副官達として、村に残る事になる。


 ビーニは暴れる事を()めず、喋らせれば暴言を吐き続けた為、猿轡をして縄で縛り続けられた。ビーニの父親も始めのうちは抵抗をしていたが、暴れずに暴言も吐かない事を約束した為、建物内に軟禁はされたままだが、身体の拘束は解かれる。

 ビーニの父親は自由になってからも、ビーニを見捨てて逃げる様な事もビーニを逃がそうとする様な事もなく、ビーニに逆らう事を止める様に諭しながら、縛られ続けているビーニの世話を焼き続けた。



 ミリはコーカデス領都に着くと、レントの祖父リート・コーカデスと祖母セリ・コーカデスとリリに、レントが手紙では伝え切れていなかった状況を説明した。そして騎馬で同行して来た技術者達とこれから馬車で到着する技術者達の事をリリとリートに託す。

 ミリが王都に向かう街道へ出立しようとすると、それをセリが留めた。


「ミリ様。お忙しい所を申し訳ありませんが、少しだけお時間を頂けないでしょうか?」

「ええ、構いません」


 懇願する様な表情のセリに乞われて、余程の事情があるのかと受け取ったミリは、微笑みでその要望に応える。


 セリはミリを邸の奥の部屋に誘うと、そこで宝石箱を見せた。


「これを買い取って頂けないでしょうか?」


 そう言いながらセリは宝石箱の蓋を開く。その中には宝石の付いたネックレスが収められていた。

 それはデザインがかなり古い為、ミリには出自の見当を付けられない。しかし使われている宝石も装飾も見事な物だった。


「大切な物なのではありませんか?」

「いいえ。ただ受け継いだだけの物ですから、思い出などはありません」

「受け継いだ物なのに、よろしいのですか?」

「・・・お恥ずかしい話ですが、レントは領主となりましたのに、王都に向かう時は相変わらず護衛を二人しか共にしません。お気付きの通り、それは金銭的な理由に拠ります。今回はミリ様が御一緒して頂いていたので良かったのですが、もしレント達三人だけの時に盗賊に行き会ったりしたらと考えますと、私は恐ろしくてなりません。私には着ける機会もございませんし、このまま死蔵して置くよりはお金に換えて、護衛を増やせる様にレントの旅費の足しにしたいと思います」


 このまま持ち続ければアンティークとしての価値も上がるかと思ったけれど、その事は口にせずにミリはセリに肯く。


「分かりました。次に来る時には代金をお持ちします。それでよろしいですか?」

「・・・分かりました。ではこちらはお預けします」

「いいえ。代金と一緒に受け取る準備もして参りますから、それまではお待ち下さい」

「そう、ですか」


 セリとしては宝飾品を預けて置く事で貸しを作った形にして、ミリにレントへの便宜を図って貰う積もりもあった。


「代わりにわたくしから手付金を支払いますので、受け取りを書いて頂けますか?」


 そのミリの提案に、その手付けをレントの旅費に回せる事をセリは考える。


「分かりました。用意致します」

「ではわたくしもお金を取って来ます」


 それから、お金を取って戻ったミリに、その金額を記載した受取証をセリは渡した。



 ミリはコーカデス邸を出ると王都に続く街道を進む。目的地は途中にあるコウラ子爵領だ。

 コウラ子爵家は古くからの王家派とされていたが、次代である跡取りが公爵家の女性を妻にしてからは、公爵家派寄りになっていた。つまり実質的にはコードナ侯爵家とは対峙する立ち位置に移って来ている。

 そのコウラ子爵家は、コーカデス領から王都までの街道をミリ商会が資金を出して改修すると言う話に、許可をしないとの回答をして来ていた。

 それなので今回ミリは直接コウラ子爵領に赴いて、考え直して貰える様にコウラ子爵に訴えてみる積もりだった。


 コウラ子爵領の子爵邸を尋ね、侯爵令嬢のミリ・コードナとしてコウラ子爵との面会を予約しようとすると、コウラ子爵は王都にいるとの回答だった。

 ミリは王都を発つ前に、王都のコウラ子爵邸を訪ねてコウラ子爵への面会を申し出ていたが、その時は領地にいるからそちらを尋ねる様にとの回答を受けている。その時に訊いたコウラ子爵のスケジュールでは、まだ領地にいる筈だった。

 コウラ子爵家の使用人に街道改修の件を質すと、それはコウラ子爵が判断したのだから、コウラ子爵が判断を覆さないと何ともならないと答えられた。それは王都でコウラ子爵家の使用人に言われた事と同じだ。そしてミリはその事に付いて、王都のコウラ子爵邸でして貰ったのと同じ様に、コウラ子爵領の使用人にも文書としてその回答を記して貰った。


 これはミリの予想通りだった。

 石材を運ぶ為に、コーカデス領から王都まで一直線に結ぶ新たな街道を作る事に反対された時の反応から、既存の街道を改修を許可されない可能性が高い事も、ミリは想定していた。


 ミリはコウラ子爵家としての回答文書を持って、コーカデス領へ街道を戻る。

 そしてコーカデス邸に着くと、コーカデス領から王都までに領地を持つ各領主宛てに、ミリ商会が資金を出して行う街道の改修は中止せざるを得なくなった事を記した手紙を出した。

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