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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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罪の無自覚と捕縛

「何の騒ぎだ!」


 恰幅の良い男性が叫んだ。そちらを振り向いたビーニも声を張る。


「パパ!」

「ビーニ!お前ら!俺の娘に何してる!」


 ビーニに駆け寄る男性に対して、護衛達は剣を向けて牽制をした。


「お前ら何もんだ!俺をこの町の町長と知って剣を向けるのか!」

「パパ!こいつらやっつけて!」

「任せろ!おい!その子は俺の娘だぞ!お前ら!俺の娘に何をした!」


 男性の前にレントが出る。


「ビーニは貴族を馬鹿にしたのだ」


 レントの服装を見て、男性の勢いが急速に衰えた。


「え?・・・貴方様を?」

「いいや。こちらの方をだ」


 レントがミリを手で示す。男性はミリの着ている乗馬服がレントの物より上質である事を見て取った。


「あの・・・わたくしの娘はいったい」

「パパ!そいつは悪魔の子だよ!」


 レントの護衛がビーニを蹴り倒し、その背中を踏み付ける。そこに男性は駆け寄った。


「お待ち下さい!お許し下さい!」

「パパ!本物の悪魔の子なんだよ!」


 レントの護衛はビーニの頭を踏んで、ビーニの顔を砂に埋める。その足に男性は縋り付いた。


「お許し下さい!まだ子供なのです!」

「ビーニを黙らせるのなら」

「黙らせます!喋らせません!」


 レントの言葉を遮る様に、振り向いた男性が叫ぶ。


「放して良い」

「あなた達も剣を下ろして」


 レントに続けてミリも自分の護衛達に命じた。ミリの護衛達は命令に従って剣を下ろすけれど、ミリを守る様に回りを囲む。レントの護衛はビーニから足を退けるが、剣はビーニに向けて構えていた。

 男性はビーニを抱き起こす。


「この!」


 怒鳴ろうとするビーニの口を男性が塞いだ。


「ありがとうございます!あの、ミリ・コードナ侯爵令嬢様なのですか?」


 腕の中のビーニが暴れる事を誤魔化す様に、男性が愛想笑いを浮かべながらミリに尋ねる。

 男性にはミリが誰なのか伝えていないのにミリの正体を当てた事に、レントの機嫌は悪くなった。ビーニの言った悪魔の子との言葉で、男性がミリを特定した事に気付いたからだ。

 誰も何も言わないので、ミリが男性に答える。


「ええ」

「やはり!お赦し下さりありがとうございます!」

「赦す事は出来ない」


 不機嫌な声でレントが返した。


「いえ!そんな!ミリ・コードナ侯爵令嬢様は赦して下さったのですから!」

「ミリ・コードナ様も赦すなどとは口にしていないし、ビーニのした事が赦される事はない」

「そんな・・・え?・・・もしかしてレント様ですか?」


 男性がレントの正体にも気付く。男性は領主代理の時のレントに、領都に喚び出されて顔を見ていた。レントももちろん、男性の顔を覚えている。


「ああ」

「お久しぶりでございます!レント様!この度は領主への御就任おめでとうございます!」


 レントは男性の祝いの言葉を無視した。


「平民が貴族を侮辱した場合には、最低でもその一親等まで処罰される。お前とお前の妻もビーニと共に、王宮で罪を裁かれる事になる」

「お待ち下さいレント様!この子は妻が命と引き換えに残してくれた一粒種なのです!」

「ビーニの母はないのか」

「はい!ですのでどうかここはわたくしの顔を立てて!ビーニを赦してやって下さい!」


 レントは男の言葉に小さく息を吐く。


「コーカデス子爵領の領民が他の貴族家に連なる方を侮辱したのだ。領主であるわたくしも罪に問われる。お前達にも逃げようはない」

「そんな!」


 男性はミリに顔を向けた。


「ミリ様!お願いします!この子がなんと言ったか分かりませんがまだ子供です!悪気はないんです!」


 ミリも小さく息を吐いた。


「ミリ・コードナと知って侮辱をしたのです。これはわたくしではなく、貴族家としてのコードナ侯爵家に取っての問題ですので、わたくし一人の赦す赦さないと言う話ではありません」

「そんな!ビーニはまだ子供なんですよ!あんたもまだ子供でしょう!子供同士の事になんで貴族だ何だと持ち出すんですか!」

「そうよ!この悪魔!」


 男性の手が緩み、ビーニも怒鳴る。


「二人を縛って喋れなくする様に」

「はっ」


 レントの冷たい声に、護衛が動いた。

 逃げようとする男性をレントの護衛二人が縛り付ける間、ビーニの体はレントが踏み付けて抑える。

 男性とビーニを縛って猿轡を噛ませると、レントは遠巻きに様子を窺っている村人達に向けて声を張った。


「馬車に剣を向けていた者の人相は覚えている!自首して出て来るのなら罰を一段軽くする事を約束する!逆に逃げる者は逃亡の罪も犯す事になる!逃げるなら死を覚悟しろ!迷うなら自首をしろ!」


 そう言うとレントは自分の護衛に、ビーニには本当に母親がいないのか、村人達に確認する様に命じる。ミリも自分の護衛達に確認を手伝う様に命じた。

 護衛達が近付くと村人達は、逃げ出したり、自分はやってないと言い訳したり、悲鳴を上げて立ち竦んだり尻餅を搗いたりする。そして観念して自首して来る者もいた。

 レントは視線を村人達から男性に移す。


「ここは村だ。本来は村長が治める筈なのに、町長だと言うお前が治めているのであるなら、それも理由を糺して罪を問う必要がある」


 そう言うレントを男性は情けない顔で見上げるけれど、ビーニは言葉にならない大声を口の奥で出しながら、レントの事を睨んでいた。

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