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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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待っていない事態

 ミリとレント達は出発の準備をしながら、連絡が来るのも待っていた。

 今回は予定外に技術者達を連れて来たので、馬の数が足りずに全員を移動させる事が出来ない。そもそも馬に乗れない人もいる。徒歩で向かわせるにしても、機材や道具を運搬する必要もある。

 予定ではミリが手配した、この地に食材や資材を届ける為の馬車が手前の漁村まで今日には来る筈なので、技術者達をその馬車に乗せてコーカデス領都まで運ぶ為に、その到着の報せを待っていたのだ。


 そこに報せが届くのだけれど、それは話が違っていた。


「大変だ!」


 ニダの家の敷地に辿り着いた連絡員が、転げ落ちる様に馬から降りた。護衛達が集まるが、声が聞こえたミリとレントも走り寄る。


「どうしたのですか?」

「ああ、え?ミリ様?」

「ええ。何があったのですか?」

「手前の村で馬車が襲われました」

「盗賊ですか?」

「村にバリケードが作られていて、行く手を阻まれた所で馬車を囲まれました。女子供も傍にいましたので、盗賊らしくはありませんでしたが」

「攻撃されたのですか?」

「剣を向けられましたが、私がいた間は攻撃はありませんでした。ただ、ミリ商会の名を出したら、荷物を全部置いて行けと言われ、コーカデス子爵閣下の領民なら傷付ける訳にも行きませんから、力尽くで馬車を脱出させる為に、応援を求めに私だけバリケードを抜けて来ました」

「分かりました。行きましょう」

「いえミリ様!ミリ様はこちらに残って下さい!」


 連絡員の言葉に護衛達も肯いた。けれどミリは首を左右に振る。


「それではわたくしの回りに護衛を残す事になります。全員で行きます」

「あ、いえ、お待ちを」


 ミリ商会の馬車を領民らしき者達が襲ったとの話に驚いて声の出なかったレントが、やっとミリに言葉を掛けた。


「我が領の領民でしたら、わたくしが参ります」

「違うかも知れません。コーカデス卿を危険には曝せません」

「それを言うならミリ様こそ危険には曝せません」

「わたくしがここに残れば、わたくしの護衛達もここに残る事は分かっているでしょう?コーカデス卿は護衛を二人しか連れていないではありませんか」

「そうですが」

「わたくしの護衛はわたくしを守る事を優先します。当然、コーカデス卿を守る事は二の次三の次になります。コーカデス卿はここに残って、技術者達とお待ち下さい」

「ミリ様と護衛だけでは、望まぬ血が流れてしまうかも知れません。領主であるわたくしこそが騒ぎを止められます。わたくしが行きます」

「盗賊だったらどうするのですか?!」

「盗賊の可能性は低いでしょう?ミリ様もお嬢様の仕業だと思いますよね?」

「低くても可能性がある限りはコーカデス卿を危ない目に合わせる訳には行きません!領主であるコーカデス卿にもしもの事があったらコーカデス領はどうなるのです!あなたの跡を嗣ぐ人はまだいないのですよ!」

「それを言ったらミリ様にもしもの事があればコードナ侯爵家からもコーハナル侯爵家からも赦されません!ソウサ家の皆さんもソロン王太子も敵に回す事になります!より確実にコーカデス領は滅びます!」


 二人の剣幕に、それぞれの護衛達の雰囲気も険悪になって行く。それを取り巻いて見ている技術者達は、少し後退りをした。

 その集団にニダが割って入る。


「コーカデス子爵閣下とミリ様と一緒に行けば、さっさと解決出来るんじゃないですか?」


 ミリもレントも技術者達も、ニダを振り向いた。


「使える手があるなら全て揃えて当たった方が、結論は早いと思いますよ」


 そう言うとニダは傍に立つ技術者に「ねえ?」と声を掛ける。技術者は「ああ」と思わず肯いた。


「分かりました。コーカデス卿。一緒に参りましょう」

「ですが」

「現地で、コーカデス卿が話した方が早いか、わたくしが対応した方が早いか、判断しましょう」

「分かりました。ですが先頭はわたくしとさせて下さい」


 ミリはレントには応えずに連絡員を見た。


「賊は弓を持っていましたか?」


 賊との言葉に、技術者達は息を呑む。連絡員は首を左右に振った。


「いえ。見た範囲ではありません。ただし建物の中までは確認できていません」

「あなたを追って射掛けられもしなかったのですね?」

「はい」


 ミリは連絡員に肯くとレントを見る。


「コーカデス卿。馬が足りませんから、護衛の方との相乗りでよろしいですね?」

「はい」

「わたくしも護衛の後ろに乗せて貰います。基本二人乗りで、人数を増やして行きましょう」

「はい」

「技術者の方達はニダさんと待っていて下さい」


 ミリの言葉に技術者達が、各々応えて返した。


「ニダさん。もし盗賊なら、ここも襲われるかも知れません」

「ええ。村の皆に事情を話して、襲撃に備えておきますから、こちらの心配はいりません」


 もし本当に盗賊で、もしミリ達がやられてしまう様であるならば、村人が襲撃に備えても無駄だと思いながら、ニダはミリに微笑んでそう伝える。そのニダにミリも微笑みを返した。 


「では行きましょう!」


 そう自分の護衛達に声を掛けてから、ミリはレントを見て目を合わせる。レントが肯くとミリも肯き返した。


 連絡員が乗って来た馬はだいぶ疲れていたので、二人乗りはせずに連絡員だけが乗り、それ以外の馬には護衛達が二人乗りをする。

 レントの護衛はレントと馬に乗り、もう一人はミリの護衛と馬に乗って、その二頭が先頭に立った。その後ろに連絡員の馬とミリと護衛を乗せた馬が並ぶ。ミリの護衛達はミリより後ろに並ぶ事が受け入れ難かったが、ミリがレントから離れない事をどうしても譲らなかったので、仕方なく後に付いた。


 こうして一行は、馬が砂に足を取られながらも手前の漁村に向けて、武力と権力を運ぶのだった。

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