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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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交渉結果の報告

 ソウサ商会での技術者の募集の申請が終わったミリは、コードナ侯爵邸を訪れた。しかしミリはバルの父ガダ・コードナ侯爵の所には寄らずに、直接離れのレントを訪ねる。

 そこでミリとレントはお互いの交渉結果を報告した。


「先ずはコーカデス卿からお願いします」

「はい。コードナ侯爵閣下には、コードナ侯爵領の技術者貸し出しを許可して頂きました」

「それは良かったです」

「はい。ただし人数はこれからの調整になります。また、コーカデス領への滞在は長期になりますので、技術者本人の希望を聞いての人選になる為、担当分野に偏りが出る可能性を承諾致しました」

「それは仕方がありませんね。借りられるだけでも助かるのですから」

「はい」

「他に何かありますか?」


 そうミリに訊かれ、レントはガダに個人的な話のアドバイスをもらった事を思い浮かべる。個人的な話と言っても、ほぼほぼミリに絡む話だ。しかしそれはミリには伝える事ではない。


「いいえ。わたくしの報告は以上です」

「分かりました。わたくしの方はソウサ商会に技術者の募集を依頼して、早ければ明日から面接を始められるそうです」

「え?明日からですか?」

「早ければですけれど、該当しそうな人が登録されているので、今日直ぐに連絡を取れる人から取って貰えるそうです。面接は明日からでも構わないと伝えましたので、もしかしたら今日の夕方には連絡が来るかも知れません」

「その面接には、わたくしも参加させて頂いてもよろしいですか?」

「はい。この離れにも連絡して貰える様にしてありますので、わたくしが連絡を受け取ったらコーカデス卿に、参加出来るかどうかの確認を連絡させて頂きます」

「分かりました。ありがとうございます。よろしくお願い致します」

「いいえ。ですが連絡が来なかったらコーカデス卿はどうなさいますか?本来でしたら、今頃は領地にいる御予定でしたよね?」

「きりが良いところまで王都に残りますが、王都を出るのは早くてもサンプルの石材が届いてからにする積もりです」

「石材が届いたらまた建築家達に集まって貰う積もりなのですけれど」

「はい。その会合にも参列したいと考えています」

「分かりました。ではわたくしもその積もりでいる事にします」

「はい。ところでミリ様?ソウサ商会に紹介してもらう技術者ですが、いつ頃雇用する予定なのですか?」

「良い人がいたら即日です」

「なるほど。今、コードナ侯爵閣下には、コードナ侯爵領の技術者に説明するのに使って頂く為に、堰き止め式の水路の概要図を渡してあります。もしソウサ商会の技術者が早く決まる様でしたら、その人に概要図を書き直して貰いませんか?」

「なるほど。本職に書いて貰って、それをコードナ侯爵領の技術者に見せるのですね?」

「はい」

「確かにその方が、正確なイメージを持って貰えそうですね」

「はい。それにコードナ侯爵領の技術者が王都に来るのは馬車だと思いますから、王都に到着するまでにソウサ商会の技術者と遣り取りをして貰えば、かなりの意思疎通が前以て出来るのではないでしょうか?」

「それは良い案だと思うのですが、ソウサ商会の技術者は決まり次第にコーカデス領に送って、なるべく早く現地を見て貰った方が良いのではありませんか?」

「確かに、仰る通りですね」

「コードナ侯爵領の技術者がコーカデス領に到着するまでは、ソウサ商会の技術者と遣り取りがそれほど何度も出来ない事になりますけれど、やはり少しでも早く専門家に現地を見て貰った方が良いと思いますので」

「分かりました。ですがミリ様?そうすると技術者を送るのには船を使うのでしょうか?」


 ミリの顔色が変わる。


「・・・そうですね」

「あの、違いましたか?」

「いえ。慣れないと船に酔ったりしますので」

「ああ、そうなのですね。そうすると陸路ですか」

「そうですね。船に乗ってしまうと海の上ですから、逃げ場はありませんし」


 ミリの目と声から、力がなくなっていった。


「・・・あの、ミリ様?」

「何でしょうか?」

「ミリ様がコーカデス領と往き来をなさる時にタイミングが合いましたら、わたくしも船に同乗させて頂けないでしょうか?」


 そのレントの要望に、ミリの眉根は寄りって眉尻と口角は下がる。


「・・・え?」

「駄目でしょうか?」


 ミリの様子にレントも同じ様な表情になった。


「あの・・・コーカデス卿は酔いませんか?」

「酔うとは思うのですけれど、掛かる日にちの短さは魅力です」

「それはそうなのですけれど」

「わたくしは馬車でも酔いますので、酔うと言うのがどう言う事なのか分かっています。(つら)いのは辛いのでしょうけれど、一度だけでも試させて頂けないでしょうか?」

「馬車に酔わない人でも、船には酔いますよ?」

「馬車での酔い以上には酔わないと思います。あれが限界なのではないかと。ですので一度だけでも試させて下さい。お願い致します」


 そう頭を下げるレントに、ミリは肯かざるを得ない。


「分かりました。わたくしとはタイミングが合わなくても構いませんから、手配致しますね?」

「ありがとうございます。よろしくお願い致します」


 嬉しそうな様子のレントに返すミリの微笑みには、僅かに苦さが混ざっていた。

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