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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第一章 バルとラーラ
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広がる流れ

いいわけ回です。

後書きに粗筋を書きます。

 ラーラはお茶会を開く。

 今の状況に付いて、問題はないから気にしなくても大丈夫だと、周りの人達からは言われていた。しかしラーラは何かせずにはいられなかった。

 そこで理解者を少しでも増やせないかと、お茶会を主催する事にした。ただし招待するのは女性だけだ。


 最初は以前の平民クラスの元同級生を招待した。ラーラが長く休んでいた事を心配してくれていた。その事へのお詫びも兼ねて結婚の報告もする。

 次に貴族クラスの今の同級生を招待した。ミッチ・コウバの前でラーラに味方してくれた事と、今も毎日気を使って貰っている事への感謝を伝えた。

 次にバルとパノの同級生の女生徒だ。こちらはバルの事を話題にするとどうしてもリリが話に出て来る。バルのリリに対しての気持ちを知っている事をラーラは伝えて、積極的にバルの過去の話を尋ねた。

 そこから味方してくれる家の令嬢や夫人達、更に交友関係を頼って紹介して貰えた人達を招待する。


 お茶会の話題には様々なものが上げられる。文学や美術や芸能、料理や特産品、産業や経済なども取り上げられ、もちろん恋愛や結婚も話題になった。

 時にはラーラの誘拐に触れられる事もある。それについてラーラは質問に正直に答えた。事実を話す事で悪意ある噂が広がる事がある程度抑えられる事は、交際練習の時に学んでいた。

 そして招待した女性達を通してその家族や友人がラーラに好意を持つ事もあり、ラーラと会った事のない味方も生まれていた。


 世間にはラーラの理解者が日に日に増えていった。

 複数の男と関係を持った事実には忌避感を持っても、それがラーラの所為ではないと理解している人に取っては、ラーラは同情すべき相手だった。そして忌避感を持ってしまう事に罪悪感も持つ。そうなったらラーラの敵には回れなかった。


 更にバルがラーラを大切にしている様子を見たら、目の前でドラマが生まれていると思えた。そのドラマのファンになって、二人を応援する人達も出て来る。

 ラーラの同級生にはファン密度が高く、その同級生達からの情報がファン仲間の間を流れていった。同好の士の集まり、ファンクラブの誕生だ。

 そしてコードナ侯爵邸での二人の様子は、ファンクラブの名誉会員の様に扱われているパノから、ファンクラブの会員達に伝えられていた。



 コウゾ公爵家はハッカ・コウゾをソロン王子の妃にしたい。その為にコウグ公爵家を味方にしたかった。

 それなので、コウグ公爵家の王冠に関しての主張への支持をコウゾ公爵家は表明する。コーカデス侯爵家とコードナ侯爵家、コーハナル侯爵家、ソウサ家に対しての王冠の修理に関する賠償請求に賛成した。

 そしてコウゾ公爵家所縁(ゆかり)の宰相補佐が、その為の対応を始める。

 ただしコウゾ公爵家は王冠修理費の請求に話を(とど)め、ソウサ家の経営権を賠償の対象とする様には明言しなかった。またコーカデス侯爵家の不敬罪としての処分に付いても何も言及しない。

 それでもコウグ公爵家は見返りに、ソロン王子の妃にハッカ・コウゾを推薦した。タラン・コウグの胸にニッキ・コウバとの婚約に付いての希望の火が再び(とも)る。

 王妃の生家コウゾ公爵家と、王太子妃の生家コウグ公爵家が、同盟関係を築いた事になる。


 同じ頃、コーカデス侯爵家の収支調査が完了し、コーカデス侯爵家から元使用人に生活費等が払われた形跡がない事が分かった。

 元使用人が月々の金を受け取る約束をしていた場所をコードナ侯爵家が見張っていたが、約束の日時に誰も現れなかった。


 その調査結果が公表されてから、コウバ公爵家はコーカデス侯爵家の支持を表明した。

 コウバ公爵家は、宰相の怪我はラーラ・ソウサに責任があり、王冠もソウサ家の財産を没収して作り直すべきだと主張した。コードナ侯爵家とコーハナル侯爵家には、平民のラーラを謁見に連れて来た責任のみを問うとして、それ以外の全てはラーラ・ソウサとソウサ家の責任だとする。

 コードナ侯爵家とコーハナル侯爵家に対して、譲歩をした形を狙ったのだ。

 そしてコウバ公爵家は、ソロン王子の妃にニッキ・コウバがなるのが正統であり、ニッキ・コウバを推薦するならこれまでの事は不問にすると、コーカデス侯爵家、コードナ侯爵家、コーハナル侯爵家に対して通達した。


 コードナ侯爵家とコーハナル侯爵家は、このコウバ公爵家からの通達を公表した。その公表に当たっては特に意見表明はしなかった。

 その代わりに昼餐会を共催し、両家を支持する貴族家とソウサ家を招いて、両家がラーラを大切にしている事をアピールした。


 思い通りの反応を得られなかったコウバ公爵家は、その昼餐会を指して、この様な状況で贅沢な会を催すのは王家に対する不敬であるし、国家に対する反逆だと表明した。


 国王は即座に、コウバ公爵家の通達も表明も王家とは一切関係ないとの声明を出した。


 一方コーカデス侯爵家はコウバ公爵家の一連の働き掛けに対し、なんの反応も見せなかった。



 その頃のコーカデス侯爵家は何も出来ていなかった。

 コーカデス侯爵ガットは釈放されてコーカデス侯爵邸に帰って来ていたが、邸からの外出は禁止されていた。ガットの逃亡を防ぐ為に王宮騎士達が邸の周囲を警備し、邸を訪れる人のチェックも行っている。


 コーカデス侯爵家はバルとラーラの婚姻無効とラーラが貴族ではないとの訴えを取り下げていない。

 そして平民のラーラに対して杖を振り上げても、何の罪にもならないと考えている。

 また宰相に怪我をさせたのは単なる事故であるし、王冠を傷付けたのも事故でしかないと考えている。ガットには宰相を傷付ける意思などなく、ましてや国王に不敬を働く積もりなどなかった。


 しかし宰相の怪我をラーラ一人の所為に出来るとは考えていない。ガットが責任を取って引退し、爵位をリリの父である嫡男のリートに譲る必要はあるだろう。

 ただしそれは国王から命じられてからだ。今爵位をリートに譲ったら、ガットの罪状が決まった時にコーカデス侯爵家の責任を問われたら、リートも爵位を譲らなくてはならなくなる。それなので爵位を譲るのは待たなくてはならない。

 しかしガットの罪状が決まる目処が立っていない。

 爵位を譲れないままガットは邸に軟禁され、身動きが取れない。

 コーカデス侯爵夫人もリート達も、家の立場を回復する為の社交を行う事が出来ない。たとえお茶会を主催しても、招待を辞退されてたりすれば却って面子が潰れる。招待されたお茶会への参加も、悪役を押し付けられるのが目に見えているし、反省が足りていないなどの余計な悪評が後から立つだろう。


 コウバ公爵家からの話にも、コーカデス侯爵家を利用しようとの意図がハッキリと見える。話に乗ってしまえば、損な役割を押し付けられかねない。

 そう考えると受け入れる訳には行かず、話し合いに臨むのさえ躊躇われたが、拒否を表明する事もまた出来なかった。


 そんな中、リリの兄の妻が妊娠した可能性が出て来た。

 跡取り夫婦の初子だし、リート達夫妻には初孫でコーカデス侯爵夫妻には初曾孫。本来ならとても目出度(めでた)い話だ。だが世間の目を考えると、大っぴらに祝うわけにもいかない。

 リリの兄夫婦は王都を離れ、領地で暮らす事になった。このまま状況が好転しなければ、そのまま領地で出産する事になるだろう。そして誕生を領地で祝うなら、それほど話題にはならずに済む。



 交際練習の時から世間に知られていたバルとラーラが結婚した事は、その経緯に付いての話も含め、王都から王国中に広まっていった。


 二人の出会いから結婚までを劇にする話も上がり、関係者の賛同と積極的な後押しで、急遽上演される事になる。ただし子供も見られる様にと内容にはフィルターが掛けられて、事実を伝えてはいるがソフトな印象になっていた。

 ラーラは自分役の女優に地味な雰囲気を求めた。劇を見てからラーラと会った人が、ガッカリするのをイヤがったのだ。美人女優と比べられたら(たま)らない。

 しかし演出家も譲らなかった。ウェディングドレスを着る最後のシーンだけは、誰もがうらやむ美しさの花嫁が必要だと、ラーラを説得したのだ。

 そしてこのラーラ役が地味少女から美しい花嫁に変身する事も、話題となって人々の興味を惹いた。

 この劇は評判になり、ラーラとバルを直接知らない人達の中にも、ラーラの味方は増えていった。


 被害者が罰を選べる様になった事と、去勢広場での刑罰執行の話と、ソウサ商会の被害者サポート事業の件も、バルとラーラの話に絡んで広まって行く。

 この件は、キズモノの平民ラーラに侯爵令孫のバルがプロポーズするなど信じられない人達に、話が本当である事の証拠として示されるのにも使われた。


 そして、ラーラ誘拐の主犯は誰だ、と人々の間で推測が交わされた。



 民衆の間では、ラーラ誘拐の主犯は公爵三家のいずれかではないかとの意見が強かった。

 コーカデス侯爵家が主犯だとする意見は初心者扱いされ、コーカデス侯爵家は操られただけとする意見や、コーカデス侯爵家を貶めるためにラーラが使われたとする意見が優勢だった。

 現在のコーカデス侯爵家の状況を知る者には、コーカデス侯爵家の没落を狙った計画だと言う主張は真実味を帯びていた。


 普段は平民の言う事など気に留めない公爵三家にも、使用人の中には平民もいる。その平民の使用人にはやはり平民の友人知人がいる。

 公爵家に勤められる事を誇りとしていた使用人達は、今まで羨望の眼差しを向けてきていた友人や知人が、憐れみの目で見てくる事に()(すべ)を持たなかった。自分達の主人が正しくてラーラ・ソウサ達が罪を犯していると主張しても、人々を説得できる筈がなく、頑なに主張を繰り返せば友人知人との関係が遠退(とおの)くだけだった。


 更には使用人達がどんな主張をしていたかが世間に広まる。

 それはミッチ・コウバ達が主張したものと変わらなかった。公爵家の内部ではそれが常識となっていたのだから当然だ。

 この為、コウバ公爵家だけではなくコウゾ公爵家とコウグ公爵家に対しても、品性を疑う声が上がる。王妃と王太子妃の生家であるのにも関わらずにだ。これについては平民に取って、公爵三家があまり区別されずに認識されている事も影響した。


 そして生家の品性を疑うその目は王妃と王太子妃にも向き、王家もその目で見られる事になる。

 しかし王家は、平民達の言う事だから、などと(ほう)って置いたりはしなかった。

 王家ではラーラを貴族と認めている事、ラーラとバルの結婚を認めている事を使用人を通して広めようとした。それは使用人達に、仕事として命じられる。


 そしてまだ幼いチリン王女が、ラーラとバルの恋物語を大好きだとの情報も流された。ソロン王子が妹のチリン王女をエスコートして、(くだん)の劇を視察する事も公表される。視察と言う名の観劇だ。

 ソロン王子とチリン王女が実際に観劇した日には、犯罪被害者達を劇場に招待する事も行われた。

 その後ソロン王子の紹介で、バルとラーラがチリン王女に拝謁し、チリン王女がラーラにサインを強請(ねだ)った話が広められる。しかしそれは、人を怖がるラーラの事情を蔑ろにして王家のイメージアップに利用している、との声を生んだ。それから王家の使用人はその件には()れなくなった。


 チリン王女の件を後から知った国王は、ラーラにはこちらから近付かない事を徹底する様に、王族と周囲の者達に厳命した。

ラーラ達の味方が増えます。

三公爵家同士で味方になったり敵になったりします。

王家は評判を落とします。

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