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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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関係性の危機

「確かにこのままですと、コーカデス卿の言う通り、この場は時間の無駄ですね」


 ミリの言葉はレントの認識と合ってはいたけれど、そう言うミリの雰囲気はレントの意見を肯定している様にはレントには感じられなかった。

 そしてミリは、レントの意見を否定する。


「ですが、今のこの時間を有意義な物に変えられない限り、この先のコーカデス領の開発も時間の無駄です」


 ミリの言葉にレントは目を見開いた。


「え?・・・ミリ様?」

「コーカデス卿」


 ミリの呼び掛けに、レントは喉を鳴らす。


「・・・はい、ミリ様」

「コーカデス卿の思い付きをわたくしに説明する事と、コーカデス領の開発からミリ商会が手を引く事と、卿はどちらを選びますか?」

「・・・仰っている意味が分かりませんが、何故その様な話になるのですか?」

「卿はコーカデス領の開発でわたくしに得難い経験を与えると言いました。しかし、わたくしの考えた通りにだけ物事を進めるのであれば、それは空想と同じです」

「いえ、ミリ様。空想と現実ではやはり異なりますので」

「卿はわたくしが失敗した事がないとも言っていましたね」


 レントの声を遮る様にミリが口にしたのは、繋がりのない言葉だった。


「え?ええ」

「つまりコーカデス領の開発に失敗する経験をわたくしにさせる積もりだと言う事ですね?」

「え?いえいえまさか。開発に失敗などしたら、それこそコーカデス領には未来がないではありませんか?どうしてその様に思われるのですか?」

「わたくしは卿との意思疎通が出来ていないと思います。つまり何故、卿がわたくしに開発を失敗させる様に考えるのかなど、わたくしには分かりません」

「ですから、その様な事など考えてはおりません」

「ミリ商会の事業案をコーカデス領主として否認すると言うのも、失敗させる為なのだとしたら納得が出来ます」

「何故ですか?」

「卿の考えを教えて貰えないのですから、何故かなどわたくしには分かりません」

「違います。何故ミリ様はその様に考えるのですか?」

「と言う事は、卿もわたくしの考えが分かっていないと言う事ですね?」

「え?」

「つまり相互に相手の意思が理解出来ていないのが今の状態です。これでは協力して領地開発を進める事など出来ないではありませんか」

「何故協力出来ないなどとの結論になるのですか?」

「わたくしはわたくしの両親に、交際練習を受け入れさせた卿に対して、ある種の敬意を感じていました」

「え?」

「卿が両親を説得する事など出来ないと考えていましたし、わたくしだったら無理だからです。つまりわたくしには出来ない事が卿には出来ると思っていたのです」

「それは」

「それは誤りだったのかも知れません。少なくとも卿から何かを学べると思ったのは、わたくしの間違えでした」

「ミリ様」

「こうなってはわたくしに取って、コーカデス領の開発から得られる物は、それに掛ける労力と時間とお金に見合わない物となります」

「それは、申し訳ございません」

「いいえ。コーカデス領の開発に投資しても、その配当以上の経験が得られると思ったのは、わたくしの判断ミスです。卿に謝って頂く必要など一つもありません」

「しかし」

「そう言う意味では確かに失敗でしたし、経験となりました」

「ミリ様」

「ミリ商会はコーカデス領の開発から手を引きます」

「いえ!ミリ様!」

「卿とわたくしとの交際練習も中止します」

「お待ち下さいミリ様!」

「・・・何を待つのですか?」

「わたくしが思い付いた事を話せばよろしいのですね?」

「・・・不要です」

「え?」

「何か事ある毎にこの様な無駄な時間を必要とするのであれば、わたくしにはコーカデス領の開発よりも他にやるべき事があります」

「しかし」

「コーカデス領開発の件は損切りします」

「お待ち下さい!ミリ様!」

「だから、何を待てと言うのですか?」

「わたくしが思い付いた事を話します」

「不要だと言いました。この遣り取りさえ不要です」

「いいえ、ミリ様。わたくしが思い付いた事を知って頂いて、わたくしがミリ様に伝える必要がないと考えた事に同意を頂けるのでしたら、今後同様な状況を迎えても無駄が省ける事になります」

「卿の考えではなく、わたくしの考えが合っていたら?」

「それはわたくしの思い付きが領地開発に役立つと言う事ですので、わたくしは今後は思い付きレベルのアイデアもミリ様に伝える事を約束します」

「今までと変わらないではありませんか」

「え?」

「卿が話す話さないは、卿の判断次第と言う事です」

「いいえミリ様。わたくしが思い付きを口にしなかったのは、ミリ様なら考え付いていると思ったからです。知っている事を言われるのは、面倒に感じたりしませんか?」

「・・・だったらどうだと言うのですか?」

「知っている事を言われるのは試されている様な気になりますし、馬鹿にされている様に感じる事もあります。どちらにしても、やる気が殺がれると思うのです」

「だからどうだと言うのですか」

「取り敢えず、わたくしの思い付きを聞いて下さい。お願い致します」


 レントはそう言って頭を下げた。

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