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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第一章 バルとラーラ
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刑罰

肉刑が出ます

 王都城下街の中央広場に舞台が作られた。公開処刑台だ。

 台の上には猿轡を咬まされた男達が縛られて座らされている。

 公開処刑の日時が事前に広報されていたので、周囲には見物人が大勢集まっていた。まわりの建物の二階以上の窓も、様子を窺う人達が広場を見下ろしている。


 その台に上ったラーラは、男達の罪を見物人達に向かって伝える。


「縛られてここに並んでいる者達は犯罪者で、誘拐に加担した者達です。私はこの者やその仲間達に誘拐され、ここにいる者達から凌辱されました」


 見物人から下品なヤジが飛び、下卑た笑いが上がった。

 すると警備隊の隊員達が見物人達を掻き分けて進み、その声の(ぬし)達を捕らえて回る。

 見物人から悲鳴や非難の声が上がり、広場は大きくざわついた。


「大丈夫!問題ありません!」


 ラーラが見物人達に向かって叫ぶ。


「今、下品なヤジやここに並んだ強姦魔に向かって仲間に入れろとか、あるいはそれらの声に賛同の声や笑いを上げた人達を捕らえました。しかしこの強姦魔達の仲間だったり、強姦魔と同じ事をしていない事が分かれば、今の人達はこの台の上に並べられたりはしません」


 騒ぎの中でラーラの声が届いた人々が口を閉じる。同じ事もう一度ラーラが語ると、広場が静まった。


「私を凌辱して強姦の罪を犯した犯人は、この台の上の者達の他に五人います。まだ捕まっていません。ですが関係各所の皆さんが鋭意捜査中ですので、もしかしたら刑の執行中にも人数が増えるかも知れません」


 そう言ってラーラが見物人達を見回すと、不審な挙動する人もいた。それを見付けた警備隊員達がまた、その人を集団から連れ出す。

 広場から離れようとする人も、警備隊員達に呼び止められる。


 広場には緊張が広がった。


「今連れて行かれた人も、話を聞かれるだけですので、何の罪も犯していないなら、直ぐに帰れるでしょう」


 ラーラはそう言って微笑んだ。


「もし私と同じ様な目に合った人がいて、まだ犯人が捕まっていないのでしたら、今連れて行かれた人達の中に犯人がいるかも知れません。自分の身に起こった事を話すのは勇気が必要です。私には良く分かります。でも犯人を捕まえたい、罰してやりたいと言う人は、後からでも良いので警備隊に申し出て下さい」


 ラーラは見物人達を見回しながら、そう伝えた。


「先日法律が変わり、被害者が犯人の刑罰を選択出来る様になりました。これから私が選んだ強姦魔達に与える刑に付いて説明します」


 広場がざわめく。法律変更を知っているか、刑罰を選ぶってなんだと、見物人同士が言葉を交わす。


「法律の変更点や選べる刑罰に付いては、役所に広報が掲示されています。職員に尋ねれば説明もして貰えますので、興味のある方は後程確認して見て下さい」


 ラーラの声に、広場はまた静まって行った。


「ここにクジがあります。誰から罰を与えるのか、このクジで順番を決めます。いつ自分の番になるのか分からない恐怖も刑罰の内です。そして仲間の刑が執行される所を見せるのも刑罰に含みます。ですので自分の番が終わっても、全員分が終わるまで、解放されません」


 見物人がいやそうな溜め息を漏らし、広場がざわつく。


「そして私が選んだ刑罰は肉刑、強姦魔達の去勢です」


 一瞬静まった広場に、多くのいやそうな声が上がる。良く分からずまわりに質問する声も多く聞こえた。

 台の上の男達も体を動かしながら、大きな呻き声を上げる。


「では実際に刑を執行しましょう。まずクジを引きます。3番です」


 ラーラはクジに書かれた数字を見物人達に見える様に掲げた。


「3番の人のズボンと下着を脱がしますので、見たくない方は目を瞑って下さい」


 そう言うと何人かの人達が手で顔を隠した。


「そして二度と強姦が出来ない様に急所を潰しますが、機能を失うまでジワジワと苦しめるのも刑の内です。これは新たな強姦魔を発生させない為の抑止力も狙っています。ですので強姦魔には、なるべく長く苦しんで貰う必要があります。生命力の強い強姦魔がいたら、1日当たり一人しか刑の執行が出来ないかも知れません。どちらにしても、これだけの人数は今日1日では終わりません。明日も明後日も続きを行いますので、今後強姦魔を出さない為にも、今日この場に来ていない人に教えてさし上げて下さい」


 そう言うと(あと)を刑務官に任せてラーラは台を下り、刑の執行を見る事なく広場から去った。

 


 刑の執行時には猿轡が外され、受刑者の懇願と怨嗟と悲鳴が広場からの道を通って、街に広がって聞こえた。

 受刑者が気を失うと、気付け薬で意識を取り戻してから、続きが行われる。


 手で顔を隠した人の内、指の隙間から刑の執行を覗く人もいたがそれは女性達で、男性は絶対に見なかった。

 刑の様子を見ていて顔色を悪くしたり体調を崩したのも男性達だった。


 警備隊員達に広場から連れ出された人達の中には、犯罪を犯していた者もいた。

 そして下品なヤジを飛ばしていた者やそれに賛同していた者達は、ラーラに対する貴族への侮辱の罪で、多額の慰謝料が請求される事になった。

 笑っただけの人は許された。笑い方が下卑ていると言っても、罪には問われないから当然ではある。


 ちなみに当日のラーラの服装は良いトコのお嬢さん風で、貴族夫人には見えないものだった。



 ソウサ商会が犯罪被害者のサポート事業を始めた事は、刑罰が選択出来る様になって実際に公開処刑が行われた話と共に、国中に広がって行く。



 王都城下街の中央広場には直ぐに、去勢広場の呼び名が付いた。

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