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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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レントへのラーラのもてなし

 王都に着いたレントはそのままコードナ邸を訪ね、レントが王都に到着した事をミリに伝える事と、前回と同じ宿に泊まるからミリからの連絡が欲しい事を玄関先で依頼した。

 しかし対応した使用人は、レントにそのまま待つ様に告げて、邸の中に入って行く。

 そしてそれほど待たずに、ラーラが玄関に出て来た。


「いらっしゃいませ、レント殿」

「お邪魔致しております、ラーラ様」

「ミリには連絡をさせますので、このまま中でお待ちになりませんか?」

「ありがとうございます、ラーラ様。しかしご覧の通り王都に着いたばかりでして、旅の汚れも落とさずに来ております。お邸に入れて頂くのも憚りますので」

「気にせずとも構わないのですけれど、それなら庭でお待ちになりますか?よろしければミリが戻るまで、私の相手をして下さい」


 ラーラを相手に何を話せば良いのか、レントは咄嗟に話題を思い付かなかったけれど、この誘いを断る事も出来ない。


「ありがとうございます。わたくしでよろしければ是非、お相手をさせて下さい」

「良かった。それでは案内致しますね?こちらへどうぞ」

「はい」


 玄関の横手から庭に回り込む通路に、ラーラはレントを案内した。


 ラーラとレントが庭に建つガゼボに用意されたテーブルに着くと、お茶と茶菓子を用意して使用人が下がる。少し離れた場所にもテーブルが用意され、そちらでもレントの護衛達の為にお茶と茶菓子が供された。

 二人きりのガゼボで、ラーラは微笑んでレントにお茶を勧める。二人一緒にカップに口を付けた。


「着いたばかりなら喉も渇いていたのではありませんか?」

「はい。お茶を頂けて嬉しいです」

「それは良かったわ。お代わりも用意していますから、遠慮をなさらないで下さいね?」

「ありがとうございます」


 下げた頭を上げ、レントはもう一口お茶を飲む。


「お菓子もどうぞ。疲れが和らぐと思いますよ?」

「ありがとうございます」

「ミリの事ですから、このまま直ぐにレント殿と、打ち合わせや行動に出るでしょうから」

「わたくしもミリ様にお時間を頂けるなら、直ぐにでも報告や相談をさせて頂きたいと思っております」

「それならばやはり、少しでも疲れを取って置かないとなりませんね」

「はい」

「お茶のお代わりはいかが?」

「ありがとうございます。頂きます」


 ラーラはレントのカップにお茶を注ぎ、自分もお茶をお代わりした。


 レントはお茶を飲みながらリラックスしている事を体で表す様に試みながら、ラーラとの会話の話題を探す。

 庭には何種類もの花が咲いているけれど、花にあまり詳しくないレントには名前が分からないものばかりなので、話題にはし(にく)い。一層の事、片端から花の名前を尋ねれば、充分に時間は潰せるだろうけれど、それも芸がない様に思える。

 それに名前は知らないのだけれど、レントには見覚えのある花が多かった。ただしレントが知っているのは、領地のコーカデス邸の荒れ果てた庭に生えていたり、領地と王都を結ぶ街道の道端に生えていたりした花々なので、貴族の家の庭に植えられているものが同じ花の訳はない。何しろコードナ邸の庭には、しっかりと人の手が入っている事を感じる。コーカデス邸の庭の雑草と同じ物をわざわざ植えておく筈がないし、自然に生えたのなら抜かない筈がない。

 自分がうっかりした事を口にすれば、ラーラの気を悪くしてしまうかも知れない。そう思うとレントには、植物の話題は選べなかった。


「後程ミリから報告があるとは思いますけれど」


 レントは自然の笑みをラーラに向ける。ラーラが話し始めた事にレントはホッとしたし喜びもしていた。


「コーカデス領に港を作る事になりましたら、私も各国の店を開く事の手伝いをする事になりました」

「え?ラーラ様がなのですか?」

「はい。それですので、その際にはよろしくお願いしますね?コーカデス卿?」


 コーカデス卿と呼ばれた事に、レントの気持ちがスッと凪ぐ。


「ラーラ様に助けて頂けるのはとても光栄ですし、非常にありがたいのですが、その件はバル様も賛成なさっていらっしゃるのでしょうか?」

「ええ、もちろんです」

「ですが港町の開発を助けて頂く為にはコーカデス領に来て頂く事もあると思うのですが、ラーラ様が王都を離れる事にもバル様は同意して頂けるでしょうか?」

「ええ、それももちろんです」

「そうですか」


 バルがミリを可愛がっている事はレントも分かっていて、そしてバルはそのミリと同等以上にラーラを大切にしている様にレントは感じていた。

 そのラーラに王都を離れさせる事をバルが許す事に、レントは不安を感じる。ミリがコーカデス領に行く事にも心配していたバルが、ラーラを心配しない筈がないのに、本当に大丈夫なのだろうか?

 そのレントの不安がラーラにも伝わった。


「レント殿には、何か心配事があるの?」


 ミリやミリの護衛達の報告からも、王都とコーカデス領との街道上に治安上の不安はないと、ラーラは考えていた。それなのでレントの様子に、別の危険が存在する可能性がラーラの脳裏に浮かぶ。


「その、ラーラ様に助けて頂くとしても、バル様はかなり心配なさるのではないかと思いまして」

「心配?ああ、その心配なのね?大丈夫ですよ?バルも一緒に行きますから」

「え?バル様も?バル様のお仕事はよろしいのですか?」

「それも調整済みですから問題はありません」


 そう聞いて、レントの表情が晴れた。レントはラーラに頭を下げる。


「ありがとうございます」

「お礼を言われる程の事ではないですけれど、バルを私の護衛に雇うと言い出したのはミリですし、ソウサ商会から合意を取ったのもミリですから」

「分かりました。ミリ様にも礼を申し上げます」


 顔を上げて笑みを向けるレントに、ラーラも微笑みを返した。

 そのラーラの表情に、レントは僅かに影を感じた。

 その為レントの戸惑いもまた、僅かに表情に表れる。それに気付いたラーラの表情には、今度は苦笑が僅かに混ざった。

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