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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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ソウサ邸での説明

 ソウサ邸の広間で、ミリが資料の最後のページの説明を終える。


「以上が現時点での、コーカデス子爵領の開発概要になります」

「すごいじゃないかミリ!」


 ラーラの三兄ヤールが手元の資料から顔を上げて、間髪入れずにミリを褒めた。


「全部ミリが考えたのか?」

「いいえ、ヤール伯父ちゃん。コーカデス卿とコーカデス家の方達と共に考えました」

「けれどシングルマザーの積極雇用や母子寮の辺りはミリだろう?」

「はい。その辺りはヤール伯父ちゃんに聞いていた話から考えています」

「やっぱりな。ちょっとの雑談で得た知識を活用するなんて、さすがミリだ。うん」


 ヤールが笑顔で肯く。


「人を集める事は俺に任してくれ」

「ありがとうございます、ヤール伯父ちゃん。ソウサ商会として協力して貰えるのなら、是非お願いします」

「協力するよな?みんな?」

「そうだな」


 ラーラの父ダンはそう言いながら首を捻った。


「ミリ?」

「はい、お祖父ちゃん」

「この開発規模はミリ商会の資本で足りるのかい?」

「増資を募ろうと思っています」

「ソウサ商会からも?」

「いいえ。お父様とお母様にはお願いしてみる積もりですけれど、後は投資家の皆さんから出資を募る積もりです」

「バルさんとラーラは?投資するのかい?」

「そうですね。ミリの話だからと言う訳ではなく、投資案件としても魅力的だと思いますけれど、ラーラはどう?」

「規模は検討が必要だけれど、良いと思うわよ。ヤール兄さん?」

「なんだい?」

「石工も建築家もあてがあるの?」

「石工はあるよ。港や道を作るにも人は集められる」

「石の規格化の検討の為の人は?」

「それは父さんじゃないのか?なあ?父さん?」

「そうだな。付き合いのあるところに連絡して、話を広げて貰おう。ミリ?」

「はい、お祖父ちゃん」

「検討会はいつ頃開く予定だい?」

「十日後を目処にしています」

「それなら大丈夫だろう。場所は?ソウサ商会の会議室を使うかい?」

「はい。お願いします」

「ならそちらも私が手配をしておこう」

「ありがとうございます、お祖父ちゃん」

「その規格化の話次第で開発規模が決まると思うから、投資額はそれから算出ね」

「そうだね、ラーラ。そうなるか」

「ええ。その際に、コードナ侯爵領やコーハナル侯爵領とかに投資している件は、引き上げる事も検討しましょう」

「そうか。ヤール義兄(にい)さん?」

「なんだい?バル?」

「人を集めるのは、コードナ侯爵領とかからですね?」

「そうだね。人が余っているからな」

「ラーラ?人が減ると景気が落ち着くし、投資を引き上げたら不景気にまでならないか?」

「大丈夫よ。不動産投資をしている人は損を出すかも知れないけれど、加熱気味だから領政には良いのではない?納税額は減るだろうけれど、お義父(とう)様も開発に回せるところがなくて、税金の使い方が非効率な事を悩んでいらっしゃるそうよね?それに土地が下がれば家賃も物価も下がって、多くの領民にとっては嬉しいでしょうから」

「それではその件は父上に話しておくか」

「お義父様だけではなくて、お養兄(にい)様達にもね」

「そうだな。それとミリ?」

「はい、お父様」

「シロント子爵家とシンコク子爵家にも呼び掛けるのだね?」

「はい」

「そうしたらそれはお祖父様に頼もうか」

「はい。この後コードナ侯爵邸を訪ねて、お祖父様にお願いする積もりでした」

「それならそれは、私も同行するね」

「ありがとうございます、お父様」

「そうするとミリ?」

「はい、ワール伯父ちゃん」

「規模に拠っては陸路だけでの搬送になるのかい?」

「いいえ、逆です。規模に拠っては海路だけにする積もりです」

「なるほど、そうか。船はどうするんだ?」

「ソウサ商会の船を売って頂けないかと思っています」

「まあ、輸出入事業は止まっているから、使って貰うのは構わないけれど、何隻だい?」

「二隻とも売って頂けますか?」

「二隻とも?ソウサ商会の所有船は四隻あるけど?」

「え?あの操船練習に使っている二隻以外にもあるのですか?」

「陸に上げてしまっているのがもう二隻。積載量は大きい船の三分の一だけれど、船足は速いよ?」

「貴族向けと石材運搬専用に分けようと思ったのですけれど、速度が速いならそれを貴族専用にしても良いですね」

「そうだけれど、船は一回り小さいから、大きい方よりは揺れるんだ」

「小さい二隻は同じくらいの大きさですか?」

「ああ。試作で一隻作って、同じ設計図で量産サンプルとしてもう一隻を作ったからね。外形は同じだよ」

「それでしたらその二隻を繋げて使いたいです」

「繋げて?」

「はい。双胴船にすれば、揺れが抑えられますよね?」

「なるほど!」

「いや待ってくれ、ワール義兄さん。ミリも。双胴船は転覆し易いと聞いた事があるけれど、違うのだろうか?」

「確かにバルの言う通り、船が斜めになった場合に元に戻ろうとする復原力が、双胴船の方が弱いな」

「でもお父様。王都の港から海岸沿いにコーカデス領迄ですから、外海ほど波が荒れる事はありませんし、天候が急に荒れた場合にも浜辺に寄せて天気の回復を待てますから、その点は問題が起こり難いと思っています」

「そうだな。ミリの言う通りだ。転覆した時の用意もする必要は当然あるけれど、往き来に何日も係る訳ではないから、天気を読むのも難しくはないよ」

「そうですか。それなら良いのですけれど」

「でも、ワール兄さん?ミリ?今は木材が不足しているのではない?」

「ああ。ラーラが言うのは、二隻を繋げる時に使う材料の事だな?」

「ええ」

「途中で製造が中止されている船があるんだ」

「そうよね?そう聞いたわ」

「そうだけれど、それらの船に使われる予定の木材が、他の船の修理に回されたりしている。だからそれを使う事は出来るよ」

「でもそれって、割高じゃないの?」

「もちろん、割高だけれどな。だけど貴族が使う船なら、運賃で回収出来るだろう?」

「ちょっと後で、って、それは私ではなくてミリが計算すれば良いのよね」

「そうだな」

「概算では大丈夫です、お母様」

「既に計算していたの?」

「はい。一案として、操船練習に使っている大きい方の船での双胴船を考えての計算でしたが、船が一回り小さくなるのでしたら、材料は想定より少なくなりますから」

「だってよ、ラーラ?俺の姪っ子は優秀だろう?」

「ふふ。バルと私の娘だからね?」


 ワールとラーラの言葉が笑いを呼び、笑いに包まれる中で広間のドアが開く。


「え?なになに?なんの話?」


 笑い声の中、ラーラの長兄ザールが広間に入って来た。

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