ソウサ邸での集まり
王都に戻りコードナ邸に帰ったミリは、ソウサ商会にいるバルとソウサ商会に遣いを出した。そしてラーラにも遣いを出すとミリは旅の汚れを落として、服を着替える。
着替え終わって居室に向かうと、ミリからの連絡を受けて同じく着替えを終えていたラーラが出迎えた。
「お帰りなさい、ミリ」
「戻りました、お母様」
「さすがに疲れたかしら?」
「いえ、まだ大丈夫です」
「睡眠は取れていたの?」
「はい。問題ありません」
「そう。それなら直ぐに向かいましょうか」
「はい。よろしくお願いします」
頭を下げたミリの背をラーラが押して、二人は居室を出る。そして玄関に待たせていた馬に乗り、ミリとラーラはソウサ邸を目指した。
ソウサ邸の玄関前では、ラーラの次兄ワールと三兄ヤールがラーラとミリを出迎えた。
「おお!ミリ!」
叫ぶ様に大声を出して、ヤールが両手を広げてミリに迫る。
「こんにちは、ヤール伯父ちゃん」
「今日も可愛いな!」
そう言うとヤールはミリを持ち上げて一回転してから、胸に抱き留めた。
「それに一段とラーラに似て、綺麗になったな!」
「ありがとうございます」
会えばいつものヤールのテンションに、ミリはそつなく微笑みを向ける。
その横ではワールがラーラに手を挙げていた。
「久し振りだな、ラーラ」
「久し振り、ワール兄さん。忙しいそうね?」
「そうでもないよ」
ヤールの腕の中からミリがワールに声を掛ける。
「お忙しいのに喚び出してしまって、ごめんなさい、ワール伯父ちゃん」
「いいや。ちょうど一段落付いたところさ。ほら、ヤール。ミリを寄越せ」
「もう、仕方ないな、ワール兄さんは。ミリに甘くて」
「お前に言われたくないよ。ほら、ミリ、おいで」
「はい」
両腕を広げたワールに、ミリも両腕を広げて応えた。ヤールがミリを渡すと、ワールもミリを高く掲げる。
「確かにますますラーラに似てきたな」
「そうだよな」
ワールに掲げられたミリを見上げているヤールに、ラーラは溜め息を吐いてみせた。
「そのラーラがここにいるのに、ヤール兄さんの目には映っていないのね?」
「なんだ?ラーラ?ヤキモチか?」
「いいえ、ヤール兄さん。久し振りだから妹の顔を忘れたのかと思ったの。どうやら覚えておいて貰えた様で良かったわ。お久しぶり」
「確かにしばらく会えてなかったな。元気そうで何よりだ」
「ヤール兄さんも相変わらずで何よりよ」
「なんでそんな溜め息を吐きながら言うんだよ?あ!ワール兄さん!ズルいぞ!ミリを連れて行くなよ!」
ワールがミリを抱いたまま邸内に向かって行く事に気付いて、ヤールがワールの後を追う。
「ラーラは譲ったのだから、ミリは譲れ」
「いやいや、ミリを抱き過ぎだ。ほら、ミリ!おいで」
両腕を広げるヤールに、ワールはミリを渡した。
「よし!ミリ!肩車だ!」
そう言うとヤールはミリを肩に乗せる。
「ミリは帰って来たばかりで疲れているのだから、気を付けてね?」
「分かってるよ。だから俺が運んでやるんだろう?」
「ほら、ドア枠に頭を打つけない様にしろよ?」
「そんな間抜けな事、ミリがする訳ないよな?」
「いや、ヤールに言ってるんだよ。ミリが避けきらないだろう?」
そう言うとワールはミリの背中とヤールの頭に手を当てて、ミリが打つからない様にヤールを屈ませて、玄関ドアを一緒に潜った。
その様子を見て、ラーラは小さく溜め息を吐く。
「やっぱり、相変わらずよね」
ラーラはそう呟くと、三人の後を追って邸内に入った。
居室に案内されてお茶を出され、ラーラとミリがそれに手を付ける前にラーラの両親、ダンとユーレが入室した。
「おお!ミリ!」
「こんにちは、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん」
ダンがミリを抱き上げる横で、ユーレが挨拶する。
「はい、いらっしゃい。ラーラも久し振りね」
「ええ、母さん。久し振り。私は久し振りだけれど、ミリとは良く会っているでしょう?父さん?」
「たとえ毎日会っていたとしても、ミリの可愛さは変わらないだろう?なあ?ミリ?」
「ありがとうございます、お祖父ちゃん」
「うんうん。そうだよな」
そこにラーラの長兄ザールの妻カンナが入って来た。
「ラーラちゃん、久し振りね?」
「カンナちゃん、久し振り。元気そうね?」
「うん。私はね。久し振り、ミリちゃん」
「こんにちは、カンナちゃん」
「本当にラーラに似てきたわね?」
そう言うとカンナは手を伸ばして、ダンの腕の中のミリの頭を撫でる。
ラーラがドアを見ながらカンナに問い掛けた。
「ザール兄さんは?一緒じゃないの?」
「ザールは急ぎの用事に捕まって、少し遅れるみたい。ミリちゃん?先に始めて良いからだって」
「分かりました」
「どうする?もう始めるかい?」
ダンの問いにミリは首を少し傾ける。
「もう少し待ちます。まだお父様も来ていませんし」
「うん?本当だ」
「ミリが帰って来たとなったら、バルは真っ先に会いに来そうだけどな」
「俺達が先に会ったら、悔しがるんじゃないか」
「え?お父様が?」
「そうだよ」
「毎日の様に心配していたからね」
「そりゃあバルは心配するだろうけど」
「あれだけ護衛を付けても心配なんだよな」
「なんだ?ワールもヤールも心配じゃなかったのか?」
「いや、心配だったけど」
「まあミリよりバルの様子の方が、心配だったかもな」
「それは言えた」
男達が声を上げて笑って、女達も苦笑しているところに、バルが入室して来た。
「ミリ!」
「お父様」
ダンがミリを降ろすと、バルが歩み寄りミリを抱き上げた。
「お帰り、ミリ」
「戻りました、お父様」
「怪我とかしてないね?」
「はい」
「少し痩せたんじゃないか?」
「いえ」
「ああ、顔を良く見せてご覧」
「ええ」
「お帰り、ミリ」
「あの、はい。お父様」
ミリはバルの腕の中で体を捻り、皆を見回すと宣言をした。
「ザール伯父ちゃんは先に始めて良いとの事なので、早速ミリ商会からソウサ商会とお父様とお母様への提案に付いて、話をさせて頂きたいと思います」




