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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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疲れつつの思考

 レントの叔母リリ・コーカデスは疲労を感じ、腰を下ろすと椅子の背凭れに体を預けた。疲労は体だけではなく、頭も心も疲れている様に思えている。姿勢を正さなければならないけれど、肘掛けに載せた腕はもう上がりそうになくて、それが体の疲れなのか心の疲れなのか判然としない。

 けれどこの場を仕切り直して、話を明日に持ち越したくはなかった。疲れそうな話は疲れている今日の内に済ませてしまって、明日以降は軽い気持ちでリリは過ごしたかった。


「あの、お父様?お母様?」

「ああ」

「何かしら?」


 リリからの呼び掛けにレントの祖父母、リート・コーカデスとセリ・コーカデスが微笑んで応える。その様子にリリはやはり違和感を覚える。

 これはわたくしが疲れているから変に感じるのかしら?とリリは思いながら、リートとセリに質問を投げた。


「お父様とお母様は、当主様からミリ様へのプロポーズに賛成していたのですよね?」

「うん?そうだが?」

「それってレントが王都から一度帰って来た時の話よね?」

「はい」

「ええ、そうよ。だからあなたにプロポーズに賛成する様にと、手紙を書いたのですし」

「そうですよね」

「それがどうしたの?」

「その時点でお二人は、当主様とミリ様との交際練習にも、賛成なさっていたのですよね?」

「え?何故?違うけれど?」

「私も違ったな。リリも違ったのだろう?」

「あの認め状にそう書いてあったわよね?」

「わたくしはプロポーズも反対しておりましたし」

「それも書いてはあったわよね」

「お父様とお母様は、プロポーズには賛成していたけれど、交際練習には反対なさっていたのですか?」

「そうだが?」

「いま、そう言ったではないの」

「それって、どう言う事なのですか?」


 リリに問われたセリとリートは、表情に困惑を表す。


「え?どう言うってどう言う事?」

「リリは何が訊きたいのだ?」


 訊き返されたリリも困惑を顔に出した。それを見たセリとリートは、リリが疲れから思考が働いていないのかと考える。


「やはり疲れているのではないか?」

「無理しないで良いのよ?やはり話をするのは、明日にしましょうか」


 リリからするとおかしいのはリートとセリなのに、何故か自分の方がおかしな事を言っている様に扱われて、リリはそれも納得がいかない。


「プロポーズに賛成なのでしたら、プロポーズより前に行う交際練習も賛成するものではありませんか?」

「え?何を言っているの?」

「その様な訳はないではないか」

「え?どう言う事ですか?交際練習には反対なのにプロポーズには賛成だなんて、当主様とミリ様だからではなく、他の誰かの場合でも交際練習自体を反対だと言う事ですか?」


 リリはリートとセリから交際練習を勧められた過去を思い出していた。リリの眉間が狭くなる。


「いいや、そうではない」

「他の人達の交際練習なんて、別に反対しないわよ」

「レントとミリ様だから反対していたのだ」

「そうよね。あの時は二人の交際練習なんてあり得ないと思っていたし」


 リリの眉間は更に狭くなった。


「え?それなら何故、賛成したのですか?」

「あの時は賛成してはないわよ?」

「いえ、ですけれど、わたくしにもプロポーズに賛成しろと」

「私達がプロポーズに賛成すれば、ミリ様が領地開発を手伝ってくれると言うのですから、プロポーズには賛成するわよ」

「レントはプロポーズはしないと約束したしな」

「そうよね」

「え?」

「え?えって何?」

「リリとレントの間に交わした認め状にも、プロポーズはしない事が書かれていたではないか?」

「今も書かれているわよね?」

「・・・そう言う事ですか」


 リリは体の力を抜いて、背凭れに更に体重を掛ける。


「何がそう言う事なの?」

「そう言うもこう言うもないだろう?」

「いえ。当主様がプロポーズをしないと約束したから、プロポーズに賛成をしたのですね?」

「もちろんそうよ?」

「それはリリもだろう?」

「それはわたくしもそうですけれど」

「つまりリリは何が言いたいの?」

「もしかして、リリに取ってはプロポーズと交際練習は一つなのか?」


 交際練習をして結婚をした、自分の娘のチェチェやバルとラーラの事を思い出しながら、リートはリリにそう尋ねた。その言葉にセリも「ああ」と首を縦に振る。


「プロポーズに賛成したら、リリに取っては交際練習も賛成なのね?」

「そう言う訳ではありませんけれど、お父様とお母様がプロポーズに賛成したと聞いて、交際練習にも賛成したのだと思っていました」

「それだからセリからプロポーズに賛成する様に言われて、交際練習も賛成してしまったのか」

「そう言う訳でもありませんけれど」

「ではどう言う訳なの?」

「どの様な理由だったのだ?」


 リリは失敗したと思った。

 プロポーズに賛成したら交際練習も賛成だなどでは単純に思えたので、自分はそうではないと否定したかった。リートとセリが交際練習に賛成だと思ったから自分も賛成したと言うのも、自分では考えていないように思えたので、これも自分はそうではないと否定したい。

 けれど理由を尋ねられたら、その説明は面倒臭い。


 リリは何と説明すれば自分が納得する理由でリートとセリが納得するか、疲れた頭を使って考えを巡らせてみていた。

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