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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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この後の方針

「コーカデス卿」

「はい、ミリ様」

「お分かりかも知れませんけれど、念の為に伝えておきますが、わたくしの両親や親族の反対がある場合にも、この条件は再検討とさせて頂きますので」

「それはもちろんです」


 レントが大きく肯くと、ミリは却って心配になった。


「もしかしてコーカデス卿?」

「何でしょうか?ミリ様?」

「もう既に代替条件を用意しているのでしょうか?」

「え?いえいえ、違います」

「そうですか」

「はい。ただ、ラーラ様はもちろんですが、バル様も反対はなさらないとわたくしは思いますので」

「え?そうでしょうか?」

「はい。もし万が一反対なさっても、わたくしが説明させて頂きますので」


 ミリに取ってはバルが反対するのは半々くらいの感覚で、間違っても万が一ではない。ただしミリも、ラーラは賛成しそうな気がしていた。そしてラーラとレントに説得されたら、バルも賛成する可能性が高い様な気もしている。


「ですが是非ミリ様にも、バル様に反対されたから()める等とは結論付けず、わたくしと共に皆様の説得に全力を出して頂きたいと思います」


 全力の言葉にうっかり肯きそうになって、ミリは首に力を入れた。レントに全力を出す様に何度も言われた事が、心に染み込んでいる様にミリは自分で感じている。


「説明は致しますが、わたくしから説得は致しませんので、その際には条件の見直しをさせて頂きます」

「それはわたくしが説得しても、納得して頂けなかった場合でよろしいですよね?」


 ミリもその積もりでは考えていた。けれどレントにそう念を押されると否定したくなる。しかし否定したらまた、無駄に話が延びると思って、ミリは我慢して肯いた。


「ええ」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

「はい」


 もう一度肯いて、ミリは話題を変えた。


「ところでこの後はどうしますか?わたくしは王都に戻って手配を始めますけれど」

「わたくしは石切り場の現状を確認してから、放棄農地の所有状況を確認します。それから王都に向かいますね」

「王宮に広報を依頼するのですか?」

「ええ」

「あの、ミリ様?レント?」


 レントの祖母セリ・コーカデスが二人に声を掛けた。


「何でしょうか?セリ殿?」

「何を広報するのですか?」


 ミリは自分よりレントが答えた方が良いと思ってレントを見る。ミリと目が合ったレントは、小さく肯いてから視線をセリに移した。


「資産税が滞納されている放棄地に付いては、所有者の所在地が分かれば督促しますし、分からなければ王宮を通じて各地に広報して貰います。そして広報に反応がなかったり税の支払いに応じなければ、土地を接収します。その結果を元に、再開発をする農地を決めたいと思いますので」

「そうなのですね」

「滞納は結構ありそうだな」


 レントの祖父リートの言葉に、レントは「はい」と肯いた。


「前当主は督促をしていませんでしたので、かなりの件数になります。その中で地権者の所在が正しく分かるのがどれくらいあるかに付いては、今のところ分かりません」

「そうだろうな。では、レントが石切り場を視察している間に、私の方で出来るだけ現状を把握しておこう」

「はい。ありがとうございます。よろしくお願いします、お祖父様」


 頭を下げるレントに、リートが肯く。その様子を見てミリも肯いた。


「では、当面やるべき事も共有出来たので、わたくしは王都に戻ります」

「はい、ミリ様」

「え?ミリ様?」

「いや、レントも」


 肯き合うミリとレントに、セリもリートも慌てる。


「王都に戻るって、ミリ様?これから今からですか?」

「はい」

「そんな急な」

「せめて明日になさってはいかがですか?」

「そうです。今晩は我が家にお泊まり下さい」

「ありがとうございます。ですがわたくしは父と、宿に泊まる事を約束しております」

「そうは聞きましたけれど」

「昨夜もお泊め出来ませんでしたので、このまま王都に帰って頂く訳には」

「多分父が命じたのは、野営をするなとの意味だったとは思いますけれど」

「それは当然ですな」

「御令嬢が野営なんて、何かあったらどうなさるのです?」

「ええ。ですが命令は宿に泊まる事でしたので、コーカデス邸に泊めて頂いた事で我が家で揉めたりしますと、開発事業に影響が出るかも知れませんから」


 そうミリに言われると、泊まってくれとはセリもリートも言えなかった。


「次回、コーカデス領を訪ねる時は、そこをはっきりとさせて来ますので、申し訳ありませんが今回は、このまま帰らせて下さい」

「いや、申し訳ないのはこちらです」

「そうです。それに今から直ぐに、王都に向かうのですか?」

「はい」


 肯くミリに、セリの眉間は寄り、眉尻が下がる。


「あの、せめて我が家で昼食を召し上がっていらっしゃいませんか?」

「ありがとうございます。ですが今出れば、一日早く王都に着きます。食事を御馳走になるのも、次の機会とさせて下さい」

「そうなのですか」

「それなら仕方がありませんけれど」

「残念ですわ」

「申し訳ありません」


 そう言ってミリに頭を下げられるし、領地開発への影響も口にされたら、リートもセリも引き下がるしかなかった。

 そこでミリはふと思い付きを口にする。


「そう言えば、今から出ると途中でリリ殿に擦れ違いますけれど、今回の結論をわたくしから説明しておけばよろしいですか?」


 ミリはコーカデス領で再会する事をレントの叔母リリ・コーカデスに言っていた。けれどこのまま、再会前に出発してしまう事になる。しかし早く王都に戻る用事が出来たので、リリの到着を待つ訳にはいかなかった。


「あ、そうですよね?それでしたら私から手紙を書きますので、それを渡して頂けますか?」


 セリの依頼にミリが肯こうとすると、レントが口を挟む。


「いえ、お祖母様。叔母上にはわたくし達から説明した方が良いかと思います」

「え?そうかしら?」

「はい。叔母上も色々と訊きたい事が出て来ると思いますので、それを手紙ですべて答えておくのは不可能ですし、ミリ様に説明して頂くのではミリ様の時間を奪う事にはなります」

「それはそうだけれど」

「ミリ様から話を聞いた後、邸に戻る迄に勘違いが生まれるかも知れませんから、ミリ様にはコーカデス領の再開発を手伝って頂ける事になった事だけ、叔母上に伝えて頂きましょう」

「それもそうね」


 セリと共にリートも肯いた。


「そうだな。その方がリリも、余計な心配をせずに済むだろう」


 リートの言葉に「ええ」と肯くと、レントはミリに顔を向ける。


「と言う事ですのでミリ様。叔母に会う事がありましたら、再開発を手伝って頂ける事だけを伝えて頂けますか?」

「ええ、分かりました」

「そうか。擦れ違いになる事もあるのよね」

「それもそうだな」


 ミリもセリもリートも、レントの言葉に肯いた。

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