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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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すべてをやりましょう

「ミリ様」

「はい」

「ミリ様はすべてをやりたいのですよね?」

「・・・石材事業をやるのであれば、母子寮と保育室までやりたいとは思っていますし、ミリ商会でそこまで投資をする積もりでもあります」

「分かりました」


 レントが何をどこまで分かったのかに付いて、レントの祖父母、リート・コーカデスとセリ・コーカデスは不安になる。


「すべてをやりましょう」

「いや、待つのだ、レント」

「ミリ様に全部任せると言う積もりなの?」

「そうとも言えます」


 肯くレントの答えに、リートもセリも慌てた。


「それはならんぞ」

「さすがにそれは駄目よ、レント」

「確かにここまでの話を聞いて、ミリ様にお任せすれば上手くいく様に私にも思えた」

「そうよね。私達が口を挟むより、挟まずにミリ様にすべてお任せしたいと私も思ったわ」

「ああ。だがそれではコーカデス家が責任を取らずに、良い思いだけをしている様に見られてしまう」

「そうよ。領地の将来を賭けてはいるけれど、再興が上手くいけば、ミリ様を好い様に利用している様にしか映らないわ」

「ええ。そう受け取られる可能性がある事は理解しています。ですがそうする事が領地に取ってのベストなら、そうするべきではありませんか?」


 レントの言葉に、リートもセリも顔を蹙める。


「それはミリ様の評判も落とす事になるぞ?」

「そうよ。例えば何かレントに弱味を握られて、言う事をきかされているとでも思われたなら、ミリ様にも悪い噂が立つわ」

「リート殿、セリ殿。少しコーカデス卿の話を聞いてみませんか?」

「え?」

「ミリ様?」


 ミリを振り向いたリートとセリに、ミリは微笑みを向けた。そしてミリはレントを振り向く。


「コーカデス卿」

「はい、ミリ様」

「そうとも言えると言う事は、他にどう言えるのですか?」

「他にと言いますか、開発はミリ商会に一任しようと思います」

「レント!」

「駄目よ!」

「リート殿、セリ殿。大丈夫です。お二人が反対するのでしたら、ミリ商会としては引き受けませんから」

「ミリ様、ですが」

「それでは領地の再興が」

「先ずはコーカデス卿の話を聞いてみましょう。コーカデス卿」

「はい、ミリ様」

「ミリ商会に一任するとして、コーカデス卿は何をなさるのですか?」

「もちろん、領地の再開発ですが、ミリ様?」

「はい」

「わたくしが領主として再開発を進めるとしても、一人では難しいのでミリ様に助力をお願いしたいと考えていますが、ミリ商会が事業を進めるにしても、ミリ様一人でコーカデス領の再開発事業を進めるのは難しいのではありませんか?」

「それはそうですが、その為にわたくしはコーカデス卿と協力し合うのですよね?」

「はい。ですがミリ様はミリ商会として、コーカデス領に投資もして頂けるのですよね?」

「ええ。その積もりです」

「そしてその金額は、コーカデス領が開発費として使える金額を超えるのではありませんか?」

「今回、コーカデス領が修正申告をした開発費よりは、多くはなるかも知れませんけれど、それがなにか?」

「あの修正申告は伯爵領としてのものです。子爵領となった今期以降は、非課税対象とする事が出来る開発費は減額されます」

「そうですね」

「ですのでミリ様。コーカデス領からミリ商会に、投資をさせて頂けませんか?」

「え?レント?」

「逆ではないのか?」

「ミリ商会からコーカデス領じゃないの?」

「いいえ、お祖父様、お祖母様。コーカデス領からミリ商会に、非課税対象枠内での開発費を投資させて頂こうと思います」

「それは、なんの意味があるの?」

「どう言う狙いなのだ?」

「ミリ商会に取っては投資と呼べない金額ではありますけれど、ミリ商会への出資者の一人となる事で、コーカデス領の開発の建前を作ります」

「非難を躱す為に?」

「はい。そして命令系統を一つにします」

「それは、領主としての職務を放棄する気なのか?」

「そう取られるかも知れませんけれど、言ってみればわたくしは、ミリ商会コーカデス支部の代表になるイメージですね」

「え?ミリ商会に入るの?」

「はい。言ってみれば」

「領主を辞めるのではないのだよな?」

「もちろん辞めません。対外的にはコーカデス領とミリ商会の共同事業とさせて頂きますし、対外的にはわたくしは領主です。実際にも領主ですが、それなのでもちろん領主の仕事も熟します。ですが内部的にはミリ商会とコーカデス領を一つにするイメージですね」

「それに、なんの意味があるの?」

「別組織ですと連携に時間が掛かります。金銭などの遣り取りがある場合には必ず文書を残しますし、その文書に認識違いが無いかの確認も必要です」

「当然なのよね?」

「後で揉めない様にする為には、会議も議事録を取るしな」

「ええ。ですが一つの組織でしたら、そこが省略出来る筈です」

「そうなの?」

「いや、省略するにしても、いや?どうだろう?」

「省略するとどうだと言うの?」

「判断スピードを上げる事が出来ます」

「そうなの?」

「いや、そうだろうか?」

「ミリ様?どうなのですか?」


 セリとリートがミリを振り向くと、レントもミリに顔を向けた。

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