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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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香辛料の扱い方針

 ミリと本気で結婚する積もりである事に付いて、レントが一から説明し直そうとするのをミリは止めて、何とかミリが求める類いの領地開発の話に入る事になった。


 レントの祖父母、リート・コーカデスとセリ・コーカデスも一緒に、四人で執務室に移る。


「昨日は二案、羊の酪農と魚の干物に付いてお伝えしました」

「後は養鶏も少し話に出ましたね」

「そうですね。御指摘ありがとうございます、ミリ様」

「もしかしたら養鶏は、コーカデス卿の中では最初には取り掛からない想定になっているのですか?」

「仰る通りです」

「あの、ミリ様?レント?それは何故なのですか?」


 セリが挟んだ質問に、レントとミリは顔を見合わせる。そして養鶏の案を出したレントが説明する事に、言葉を交わさずにミリとレントが合意した。


「鶏は放し飼いにしない積もりですので、鶏舎の建設が必要です。またそれなりの羽数を揃えないと利益が出ないかと思いますので、鶏舎もある程度大きくなりますし、初期費用が掛かると思うのです」

「利益が出ないのは何故なの?」

「言い方を間違えました。お祖母様。利益が出ない訳ではあません。鶏を扱うとしたら鶏肉と卵です。鶏を生きたまま輸送するのは難しいので、捌いて流通させる事になり、鮮度を考えますと販売先はそれほど広げられません。卵も輸送中に割れる恐れがありますので、やはりそれほど販路は広げられませんよね?」

「ええ、確かにそうね」

「それに比べて羊は、生きたまま運ぶのも鶏よりは運び易いですし、羊乳もチーズなどにすれば日保ちがしますので、販路を広げられます」

「なるほど。確かにそうだわ」

「放し飼い出来る羊は、放牧地を広げる事で大規模にし易い上に、遠くまで生産物を配送出来るので、鶏よりは産業を軌道に乗せ易いと考えました」

「各地で飼うのはどうなのだ?販路は不要になるだろう?」

「それは制限をしませんが、領地の産業としての後押しはしない積もりです。助成をするなら、流通の為の街道整備が終わってからですね」

「なるほど」

「説明して貰えば、確かにそうだわ」

「他の案も何かあるのか?」


 リートの質問に、レントは再びミリと顔を見合わせる。そしてミリを見たまま、レントは質問に答えた。


「後は香辛料ですね」

「香辛料?」

「香辛料をどうするの?」


 リートとセリが首を傾げる。レントはその二人に視線を移した。


「コーカデス領のごく一部で、香辛料が作られているのです」

「昔から香草は料理に使われているが、それの事か?」

「いいえ。今は輸入でのみ手に入る香辛料が、領内で複数種類育てられているのです」

「何?」

「本当なの?」

「ええ。ただしそれを生産するには、王宮との調整が必要だと思われます」

「もしや、密輸品なのか?」

「その疑いは掛けられるでしょう」

「そんなの、大丈夫なの?」

「大丈夫にする為に、王宮との調整が必要だと思うのです」


 レントの答えにセリもリートも眉間を狭める。


「大丈夫となった場合には、他領でも生産されるかも知れませんね」


 そのミリの声にレントが振り向いた。ミリはレントを見詰めながら続きを口にする。


「王宮と調整するに当たっては、栽培方法も調べられると思います。そして種類によっては、コーカデス領より栽培に適した土地があるかも知れません」

「種や苗を盗まれたりしない様にする必要がありますね」

「王宮の調査で持ち帰られて、それが広まる可能性もあります」

「う~ん、なるほど。他で育てられても、窃盗などには問えなそうですね」

「あるいは国が率先して広めるかも知れません」

「そうなったら利益が出るかどうか」

「利益にする事が出来る期間は短い可能性がありますね」

「そうですね。これに付いて、ソロン王太子殿下に相談に乗って頂いても、変わりませんよね?」

「国益を優先なさるでしょうから、結論は同じになると思います」

「う~ん、なるほど」

「後は加工品を提供するか」

「加工品ですか?」

「ええ。香辛料として販売すると仕入れ先を疑われますが、香辛料を使った食品として妥当な値段を付けて販売すれば、高い利益率を望めると思います」

「なるほど。香辛料を干物に使えば、干物を買う人が増えるかも知れませんね?」

「う~ん、どうでしょう?干物を浸透させるのには時間が掛かると思いますので、香辛料を使った商品は別に考えた方が早く利益を得られるとわたくしは思います」

「そうですか」

「香辛料を使った干物も並行して販売するのも、方針としてはありだとは思いますけれど」

「しかしその場合は、領地で香辛料を作っている事は秘密にするのですね?」

「そうですね。わたくしが言っておいて何ですが、秘密と言うのはリスクがありますね」

「迂闊に進めない方が良いですね」

「ええ、確かに」

「利用できるかどうかも含めて、考えるのは後回しにしましょうか?」

「ええ。わたくしは賛成ですが、リート殿とセリ殿はいかがですか?」

「そうですな」

「よそに取られるのはもったいないですけれど、トラブルに巻き込まれるのは避けたいと思います」

「私もセリに同感です。なんなら密輸の後始末は王宮に丸投げして、危険を回避するのもありかと思います」

「分かりました。どう扱うかはまた改めて相談させてもらう事にして、香辛料への対応は急がない事にします」

「レント?」

「はい、お祖父様」

「その香辛料も密造に当たるのではないのか?」

「あ、そうよね?大丈夫なの?レント?」

「大丈夫ですよ、お祖母様。今現在は自家消費しかしていませんので、密造や脱税には当たりません」

「それにリート殿。法律上も酒類の製造の様に、香辛料の製造は制限をされてはいませんし」

「そうでしたな」

「種子や苗の輸入も違法ではありませんので」

「ミリ様?そうなのですか?」

「ええ、セリ殿。香辛料の生産国の法律では、種子や苗や香辛料の製造方法を国外に持ち出す事が禁じられていますので、王宮に相談するにしてもそれをどう躱すのかが論点になる事でしょう」

「あるいは外交上の判断で、国内での香辛料製造が禁止されるかも知れませんな」

「ええ。リート殿の仰る通りですね」


 四人がそれぞれ肯いて、取り敢えずは香辛料の事は秘密にしておいて後回しとなった。

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