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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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この場限りに

 ミリの言葉にレントの祖父母、リート・コーカデスとセリ・コーカデスも驚いたが、ミリ自身も驚き慌てた。

 しかし言われたレントはミリの言葉をスルーする。


「念の為に言っておきますが、今のはプロポーズではありません」

「なにを言って」

「提案です。サニン殿下と結婚するくらいなら、わたくしと結婚する事をお勧めしたまでです」


 レントの言葉にサニン王子への敬意が欠けている事に、ミリは引っ掛かりを覚えた。その事から、先程のミリの「バカじゃない?」と言う言葉での侮蔑に対して、威力を和らげようとするレントの意図をミリは感じる。

 ミリからの侮辱をなかった事にしようとするレントに、ミリは腹が立った。


「コーカデス卿、リート殿、セリ殿。先程のコーカデス卿に対するわたくしの言葉に対して謝罪します。申し訳ございませんでした」


 ミリが深く頭を下げる。それは単なる反発かも知れない。しかしミリはレントに、ミリの言葉をなかった事にはさせたくない。


「・・・ミリ様」

「どうかお顔をお上げ下さい、ミリ様」


 レントの話の転回に付いて行くのがやっとだったリートとセリは、まだミリの言葉の解釈にまで進んでいなかった。その一つ前のレントの言葉に驚いて、二人とも思考が止まっていた。

 それにレントの言葉も、ミリに対して頭を下げなくてはならない事だらけだと二人は感じている。

 それなので、ミリが頭を上げて口にした言葉に二人は慌てる。


「後程コードナ侯爵家より、正式に謝罪を致します」

「いや、それは、ですが」

「レントこそミリ様に失礼な事を立て続けに申しておりました」

「その通り。わたくしもミリ様の様に、なにバカ言ってんだコイツとレントの事を思っておりました」

「リート!」

「いや、だが、セリも思ったであろう?」

「思ったけれど、それはこちらからの謝罪にはならないわ」

「お?そうか。そうだな」

「ミリ様?ミリ様さえよろしければ、この場の話は外に漏らさない事には出来ないでしょうか?」

「そうだな。いかがでしょうか?ミリ様?」

「わたくしは構いません。先程も申し上げた通り、わたくしの出自に付いての言及は、お気遣い無用で結構ですので、それに関して何を言われたかなど、外に広める積もりはございませんので、御心配なく」

「ありがとうございます、ミリ様」

「ミリ様、ありがとうございます。レントの言葉に付いての謝罪は、後程改めてさせて頂きます」


 リートとセリは頭を下げながら、外には漏らさないけれどミリは忘れる事はないのだろうと考えていた。


 リートとセリは頭を上げるとレントに顔を向ける。


「レント」

「え?はい、お祖父様」

「ミリ様には、後で私も一緒に謝罪をするから、お前の思った事を言ってもよい」

「お祖父様」

「私も一緒に謝罪しますけれど、レント?傷付けた(ほう)は謝罪をすれば気が済むけれど、傷付けられた方は一生忘れないものですからね?」

「分かっております、お祖母様」


 レントがその事は分かっているかも知れないとリートもセリも思ってはいたけれど、分かっていながらやっているとは思いたくなかった。


「ですがわたくしは、ミリ様を傷付けたくて傷付けている訳ではありませんし、もしわたくしの言葉でミリ様が傷付くのだとしたなら、それはわたくしの言う事が的を射ているからこそだと考えています」

「・・・それが分かっていてやる意味が分からん」

「でもレントには、そうすべき理由がちゃんとあるのね?」

「はい」

「そう。分かったわ」

「ミリ様」

「はい、リート殿」

「申し訳ございませんが、今少し、レントの話に付き合ってやって下さい」

「後からわたくし達も謝罪致しますので」


 リートとセリに頭を下げられて、ミリは気が滅入る。

 ミリとしては、ミリから見たら意味のないこんな話題はもう終わらせて、早く領地開発の話がしたかった。しかしそれを求めれば、レントからは言い訳の話題から逃げたと思われるだろう。それはだが仕方ないし、もうそれでも良い。

 ミリは小さく息を吐いて、リートとセリに応えた。


「この場での話をこの場限りとして頂く事には賛成です。わたくしも酷い言葉を口にしましたので、この場限りとして頂ければありがたいです。そしてこの場限りなのであれば、コードナ侯爵家からの謝罪は致しませんので、リート殿とセリ殿とコーカデス卿からの謝罪も不要です」

「ミリ様」

「ありがとうございます、ミリ様」

「ありがとうございます」

「いいえ」


 ミリはリートとセリからレントに視線を移す。


「コーカデス卿」

「はい、ミリ様」

「わたくしは早く領地開発の話し合いを行いたいと思います」

「ありがとうございます、ミリ様」


 レントのお礼の言葉にミリは、話の流れを見失いそうになる。お礼の言葉を挟むレントの意図がミリには読めなかった。


「それなので、わたくしが何を言い訳に使っているかなどは、放っておいて頂けますか?その様な話ではなく、昨日の話の続きを行いましょう」

「ミリ様」

「こちらで話すのでしょうか?それとも昨日の続きは執務室に移ってですか?」

「ミリ様」

「どちらで行うのですか?コーカデス卿?」

「ミリ様。わたくしはずっと、領地開発の為の話し合いを行っている認識です」


 レントの言葉にミリの眉根が寄る。リートは眉間に皺を寄せ、セリは幾分眉を下げて目を細める。


「コーカデス領の領地開発にミリ様に全力で当たって頂く為には、ミリ様にミリ様の出自を言い訳には使わないで頂く事が必要ですので」


 ミリとリートとセリは、揃って息を吐いた。

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