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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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今後の予定

「ほら、バル。座って」


 ようやく笑いを抑えたラーラが、隣りに立っているバルの腕を引く。立ったまま何も言えなかったバルは、引かれるままにラーラの隣りに腰を下ろした。


 ミリの見慣れない様子に見蕩れていたレントも、ラーラとバルの言動に我に返る。

 いけません。このままミリ様を見詰めていては、為すべき事も出来ません。

 とは言うものの・・・


「ミリ?」


 呼び掛けをどうしようかと思って、けれどもミリの望みだからと、レントはミリの名を呼び捨てた。


「今後の予定に付いて話をさせて頂きたいのですが、いつならよろしいでしょうか?」


 レントの言葉が耳を素通りしそうになりながら、ポイントの言葉だけミリは復唱した。


「今後の予定?」

「はい。本日はこのまま相談の時間を頂いても構わないのか、日を改めた方が良いのか。交際練習をして頂ける事になったばかりですし、日を改めますか?」

「日を改める?」

「はい。ミリはいつなら御都合がよろしいですか?」


 名前は呼び捨てられていても、レントの口調は丁寧なままでいるので、その違和感を切っ掛けにして、ミリの思考が動き始める。


「いえ。今日決められる事は今日決めましょう」

「大丈夫ですか?」

「はい。レント殿が訪ねていらして」

「あっ・・・」

「えっ?」

「わたくしの名前も、呼び捨てにして頂けるのではありませんでしたか?」

「そう・・・そうでしたね。ええと、そう。レントが」

「はい」

「あ、ええ。レントが訪ねていらして」

「はい」

「プロポーズに賛成をして頂いたとの話を聞きましたので」

「はい」

「コーカデス領に向けて出発出来る様に、あの後準備をしました」

「え?もう、なさったのですか?」

「はい」

「さすがミリです。ありがとうございます。いつなら出発出来ますか?」

「明日にでも」

「明日?!」


 またバルが立ち上がる。


「バル?早く出掛ければ早く帰って来るわよ。そうよね?ミリ?レント殿も?」


 ラーラの言葉にミリとレントが「はい」と声を合わせて肯いた。


「現地に行って、必要な物事を把握したら、一旦戻って来ます」

「そうですね。ミリ様と洗い出した結果から、先ずはわたくしの方でも色々と調査をしたりする必要があると思いますので、一旦は王都にミリ様をお送りします」

「え?それではレントの時間が無駄になりますから、送らないで構いませんよ?自分達だけで帰れますし」

「いいえ。わたくしも王都でやるべき事もありますから」

「それなら先ずはそれをし終えてから、コーカデスに向かいましょうか?」

「いえ。今は半日程掛かるものしかなく、それは次回王都に来た時で構いません。ミリ様にコーカデスを見て頂いてから、王都での対応が必要な物事が増えるのではありませんか?」

「ええ、確かにそうですね」

「ですので次回の訪都で纏めて対応致します」

「しかし今あるその半日分は、私には手伝えませんか?」

「もちろんミリ様にお手伝い頂ければ助かりますが、今時点ではミリへの説明にもそれなりに時間が掛かります。コーカデスに着くまでにそれらも含めて説明をさせて頂く時間が取れると思いますので、次回の訪都の時にはお願いするかも知れません」

「分かりました。それで?レントはもう出発出来るのですか?」

「はい。わたくしも明日の出発でも大丈夫です」

「お父様、お母様。明日、コーカデス領に向けて出発してもよろしいですか?」

「ええ、構いませんよ。ねえ?バル?」

「あ、ああ」


 話に付いて行っていたラーラは即答したけれど、気持ちが付いて行けていなかったバルは、それしか反応できなかった。


「ありがとうございます。バル様、ラーラ様」

「それでお父様、お母様。レント殿と交際練習をする事になった事は、コードナ侯爵家とコーハナル侯爵家には私達が伝えた方がよろしいですよね?」

「あ、ああ」

「ええ、そうね」

「レント?今から行ける?」

「いや、ミリ!ちょっと待て!」


 夕食が終わった時間に、身内とはいえ他家を訪ねると言ったミリの言葉に、やっとバルが追い付いた。

 ラーラは落ち着いた様子のまま、ミリに頼む。


「ミリ?私達も行くから、ちょっと待って」


 出掛ける気のミリとそれに合わせるラーラに、レントは当然の疑問を尋ねた。


「あの、こんな時間から、訪ねて行ってもよろしいのでしょうか?」


 それに対してミリが肯く。


「大丈夫よ、レント。訪ねるかも知れないと、両家にも予め伝えてあるから」

「え?そうなのか?」


 驚くバルに「ええ」と答えながらラーラが立ち上がろうとすると、立ち上がっていたバルがラーラに手を差し出した。


「そうなのよ。でも、ミリ?レント殿も。少しだけ待って下さい。馬で行くのよね?その支度を調えて来るから」

「はい」

「分かりました。よろしくお願い致します」


 (せわ)しく居室を出て行くバルとラーラに、レントは頭を下げた。


「ミリはそのままでよろしいのですか?」

「ええ。今夜もコーハナル侯爵邸に泊まるので、このまま馬に乗って帰るから。それなので先にコードナ侯爵邸に行く事にしましょう」 

「分かりました」


 レントはミリに肯いた。そしてミリが既に段取りをしていた事に、改めて感心をする。


「さすがミリ」


 微笑みからそう漏らしたレントの言葉に、何故かまた、ミリは頬に熱を感じた。

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