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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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レントの好意の向き先

 周囲にただ文句を言わせない為に、レントは名誉を手放すと言う。確かにミリにただ働きをさせて名声も独り占めしたりすれば、それこそ名誉を失う事になるけれど。


「では、ミリの提示した条件とはなんだ?」

「それがお祖父様とお祖母様と叔母上に、わたくしからミリ様へのプロポーズに賛成頂く事なのです」

「え?どう言う事なの?」


 その繋がりがレントの祖母セリ・コーカデスには分からない。レントの祖父リート・コーカデスも納得出来なくて、眉間に皺を寄せる。

 レントは二人の様子を見て、分かりませんよね、と心の中で呟きながら小さく肯いた。


「領地再興を目的としてミリ様に交際練習を申し込む事は、不誠実だと叔母上に指摘されました」

「え?リリに?」

「はい。そしてミリ様にプロポーズする事もです。結婚を前提とせずにプロポーズするなど駄目だと、叔母上に止められました」

「それは、そうだろうな」

「はい。ですが領地再興の為にはミリ様の力が必要で、ミリ様に領地再興に力を振るって頂く為にはミリ様を占有したく、その為にはミリ様に他の方と交際練習をして貰っては時間が奪われますし、縁談が調って途中でミリ様を囲い込まれても困ります」

「いや、言う事は分かるが」

「他領にやられて困るなら、わたくしが先んじて行うまでです」

「それも分かるけれど」

「しかしわたくしが領主や当主の権限を使って、家族の反対を黙殺する事をミリ様は良しとしませんでした」

「え?そうなの?」

「はい。それでミリ様から出された条件が、お祖父様とお祖母様と叔母上に、ミリ様へのプロポーズに賛成して頂く事なのです」


 説明されてもまだ、リートもセリもしっくりとは来ない。


「それは、レントの申し込みを断る為ではないのか?」

「ええ。それもあるかとは思います。バル様が最初は交際練習に反対なさっていましたので、その後にわたくしからミリ様に交際練習を申し込んでも良いとバル様とラーラ様の許しを頂きましたが、バル様の本心は交際練習に反対だとミリ様は思っていますから」

「バルが反対しているから、ミリはレントの申し込みを断るって言う事?」

「はい」

「ミリを結婚させないと言うなら、バルは交際練習も反対だろうしな」

「はい。そのバル様への忖度と叔母上の反対から、ミリ様はそれを条件としたのだとは思いますが、もしわたくしが条件をクリアさえすれば、ミリ様は交際練習を受け入れて下さるでしょうし、わたくしはバル様に偽装婚約を提案出来るのです」

「待って、レント?リリはミリの前で反対をしたの」

「はい」

「え?ミリの前でミリを批判したの?」

「いいえ。叔母上はわたくしを非難しましたが、ミリ様を否定してはいません」

「そう。そうなのね」

「はい」

「しかし、リリからの書状には、プロポーズに賛成するとは記されてはないぞ?これでは駄目なのではないか?」

「はい」

「いや、はいってレント?」

「それですので先ずはミリ様には、領地開発の手助けをお願いしようと思います。そしてお祖父様とお祖母様と叔母上に、ミリ様へのプロポーズを賛成頂けたなら、直ぐにミリ様への交際練習と、バル様への偽装婚約を申し込みます」

「だがなレント?偽装であろうと婚約だのプロポーズだの、もしミリがその気になって本気で受け入れたらどうする?逃げられんぞ?」

「お祖父様、お祖母様。わたくしはミリ様に好意を抱いています」

「え?レント?」

「好意?好意とはなんだ?」

「ミリ様がプロポーズを受け入れたなら、ミリ様と結婚致します」

「いや、レント?正気か?」

「叔母上にはミリ様の血をコーカデス家に入れてはならないと言われましたので、子は生しません。わたくしの血を引く子ではなければ跡を嗣がせないとも叔母上に言われましたので、恋人に子を産ませます」

「いや、レント?」

「その様な事、ミリやバルが許すと思うの?」

「ミリ様には指一本触れなければ、ミリ様を結婚させないと言っているバル様なら許すのではないでしょうか?」

「そうにはならないわ。人の心はその様に割り切れたりしないわよ」

「そうかも知れませんが、そこはバル様と相談します。必要ならミリ様との偽装婚約の裏で、ミリ様とは結婚しない事を示す為に秘密裏に、わたくしに婚約者を用意しても良いですし」

「秘密裏になど、相手の家が許すと思うのか?」

「相手が平民なら、その辺りは構わないのではありませんか?」

「平民?」

「いや、平民を娶ると言うのか?」

「誰かそう言う子がいるの?」

「領民の中に心当たりはあります。わたくしが領主だと知れば、喜んで嫁いで来るでしょう」

「なんだと?」

「レントはその娘が好きなの?」

「いいえ。どちらかと言えば嫌いです。ですが他に思い当たりませんので」

「好きでもないのに結婚しようと言うのか?」

「それがひいては領地の為になるのでしたら」

「しかしだな」

「わたくしの両親も政略で結婚をしたのですよね?それならわたくしも同じで構いません」

「政略と言っても、相手が平民では」

「条件に合う貴族令嬢はいないでしょう。仕方がありません」

「レント?好意を抱いている令嬢はいないのね?」

「わたくしが好意を抱いているのはミリ様です」


 特に気負いも無くそう答えるレントに、リートもセリも言葉に詰まる。

 その様子を見てレントは、先程も言いましたけれど、と心の中で思っていた。

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