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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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されて嬉しいけれど、させたくない

 バルはラーラの体を少し持ち上げ、自分の体を仰向けから横向きに倒し、ラーラの体を脇に降ろした。自分の腕はラーラの頭の下にして、反対の手の手のひらはラーラの腰に当てる。


「ラーラ?」


 ラーラと目を合わせてバルは、真剣な声で呼び掛けた。

 バルにもラーラにも、部屋の灯りがバルの体で影になっているので、お互いの顔は影の中だけれど、間近に正面から向き合う体勢にしたので、表情はお互いに窺える様になった。


「うん」


 ラーラは小さくそう返して、目を伏せる。


「俺はラーラに嫉妬なんてさせたくない」


 バルの言葉にラーラは目を閉じた。そして一拍置いて、バルに返す。


「分かっているわ」

「いや、待って」


 バルはラーラの顎に指を当て、ラーラに顔を上げさせた。ラーラは目を前に向けて、二人の視線が合う。


「俺はラーラに嫉妬させる積もりはないけれど、ラーラに・・・いや、逆か」

「逆?」


 ラーラがほんの僅か、首を傾げた。それにバルは少しだけ首を縦に動かして、「ああ」と返す。


「ラーラに嫉妬されるのは嬉しいけれど、俺はラーラに嫉妬なんてさせたくはないんだ」

「・・・そう言う事ね」

「ああ。最初からこう言えば良かったんだな」

「そうね。そうかもね」


 ラーラが微笑むのがバルには見えた。


「ラーラに嫉妬させたくない。だから、ラーラが嫉妬を感じているのなら、それを感じなくさせたい。ラーラの不安を取り除ける様に対応したい」


 ラーラは頭を小さく左右に数回振る。


「・・・対応なんて、いいのよ」


 バルは頭をゆっくり大きく左右に一度振った。


「いいや、よくない。俺がラーラに不安を与えているのなら、俺がそれを取り除くべきだろう?」


 バルの言葉から一拍置いて、ラーラは目を伏せる。


「でも、ヤキモチを焼いてるのは、私の方の問題だし」

「いいや。俺とラーラ、二人の問題だよ」

「・・・でも」


 バルはラーラの頬に手のひらを当てた。


「ここで生きて来るのが、俺がラーラにヤキモチを焼かれると嬉しいって事だ」

「え?生きて来る?」


 ラーラは視線を上げて、バルと目を合わせた。


「ああ。ヤキモチを焼かれたのは嬉しいから、どこにヤキモチを焼いたのか教えてよ」

「え?そんなの・・・」


 ラーラの眉根が寄る。


「リリ殿を呼び捨てにした事は、今後は注意する。もちろん、ラーラがいない場でも呼び捨てたりはしない」

「・・・そう」


 ラーラの視線が下がったので、バルはまたラーラの顎に指を当てた。顔を上げさせられたラーラは視線も上げて、またバルと目を合わせる。


「ああ。もちろんリリ殿にも呼び捨てにさせたりはしない。呼び捨てにされたらちゃんと抗議する」


 バルの言葉にラーラは応えず、バルの指に顔を上げさせられたまま目を伏せて、バルから視線を外した。


「・・・ラーラ?」

「・・・うん」

「何か・・・俺の対応が違う?間違った?」

「そうではないけれど」

「では何?ヤキモチじゃなくてもいいよ?ラーラの感じた事を教えて」

「・・・でも・・・」

「でも?」

「・・・バルがリリ・コーカデス殿を呼び捨てにしないでくれるのは、嬉しい」

「そうか。うん。でも?」

「・・・また、会うんだなって思って」

「え?また会う?俺とリリ殿が?何故?」

「何故って・・・リリ・コーカデス殿に呼び捨てにさせたりしないって事は、また会って話をしている状況って事でしょう?」

「いや違う違う。会わないよ」

「いえ、違うの」


 ラーラは目を上げてバルを見る。目が会うとバルは小さく肯いた。


「いや、迂闊だった。リリ殿とは会わないから、心配しないで」


 そう言ってバルはラーラに微笑みを向ける。ラーラは小さく頭を振った。


「違うの。会わないで欲しい訳じゃないの」

「うん?俺とリリ殿が会うのは、嫌なんじゃないのか?」

「嫌か嫌じゃないかって言われたら、嫌なのだけど」

「そうだよな」


 肯くバルの胸に片手を当てて、ラーラはバルを見詰めたまま、また頭を振る。


「違うのよ。私が嫌がるからって、バルに何かを我慢させるのも嫌なの」

「我慢などではないよ」

「違うんだってば!」


 ラーラは目を伏せ、拳を作ってバルの胸を叩いた。


「ええと?何が?」


 ラーラは拳を解いて、またバルの胸に手を当てる。


「・・・会って欲しくなんてないけれど、会わないで欲しい訳じゃないの」

「・・・でも、会わなければラーラは、逆か。会えばラーラは不安になるんだろう?」

「そう、だけど、そんな事を言って、バルの言動を縛りたくなんてない」


 バルはラーラを抱き寄せた。


「ラーラ?」

「・・・うん?」

「ヤキモチを焼いてくれて嬉しい」


 バルのその言葉は、今のラーラの気持ちとはそぐわなかった。


「俺の望みはラーラの幸せだから、ラーラから不安を取り除く為なら、リリ殿と会う事を避けるのなんて、行動を縛られている事にはならない。俺がそれを望むのだから」

「でも、リリ・コーカデス殿はバルの幼馴染みよ?」

「幼馴染みだろうがなんだろうが、関係ない」

「あるわ。私が好きになったバルは、バルが過ごしてきた過去があるからバルなんだもの。そのバルに過去を切り捨てる様な事はさせられない」

「俺はラーラと出会ってからだけで充分だよ。だから過去なんていらない」

「だから違うんだってば」


 ラーラはバルの胸を押して体を離し、バルを見詰める。

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