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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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ミリへの求婚の背景

「ラーラ?どうしたんだ?」

「・・・なにが?なんでもないけれど?」


 バルの肩に額を付けたまま、顔を上げずにそう返すラーラの様子に、バルは自分の感じている懸念を口にする。


「俺がミリに結婚をさせないと言っている事が」

「え?」


 ラーラの小さな呟きに気が付いたけれど、バルはそのまま言葉を繋げた。


「やはりラーラの気に触っている?」

「・・・どうして?バルの判断に従うわよ?そう言っているじゃない?今日もそう言ったでしょう?」


 ラーラは姿勢を変えないまま、そう答える。


「ラーラはどうしたい?」

「・・・どうって?」


 バルはラーラの反応を見て、どうやらこの件ではなさそうだと感じた。しかしここで急に話を変えるのは変だろう。

 それなのでバルは序でに、気になっている事をラーラに(ただ)す事にした。


「ラーラはミリには、結婚をさせたい?させたくない?」

「・・・それは、ミリが選べば、自分で選べれば良いと、正直に言うと思うけれど」

「そうか」


 それは難しい。一旦禁止してしまった事は、ミリは自分では選ばなくなる。それはバルには身に染みて分かっていた。


「ラーラ自身は?ラーラはミリに結婚をして欲しい?欲しくない?」

「それは、出来たら結婚して欲しいとも思うけれど。孫とか抱いてみたいし」


 孫!その言葉はバルの心に刺さる。


「でも、無理でしょう?」


 顔を伏せたままのラーラの声のくぐもりに、バルは諦めを感じ取った。


「え?孫を抱くのが?」

「それもだけれど、ミリの出自があるでしょう?」

「それって・・・」


 バルはそこで躊躇ったけれど、ラーラが特に言葉を続けないので、言葉遣いに注意しながら、ラーラの考えを訊いてみる。


「その孫にも、ミリの血縁上の父親の血が流れる事になるから?」


 バルは言葉を選ぶ事が少しも上手く出来なくて気不味く思ったけれど、それに返すラーラの声の調子は変わらなかった。


「孫の前に、ミリは誰とも結婚出来ないでしょう?」

「それは、俺が反対しているからではなく?」


 ラーラは首を僅かに左右に振る。その揺れがバルの肩に伝わった。


「レント殿もリリ・コーカデス殿も、ミリが結婚出来ないのはバルが反対しているからではなく、ミリの出自があるからと思っているじゃない」


 ラーラの声はくぐもり続けている。


「いや、だが、レント殿は、ミリが応じれば結婚をすると言っていたじゃないか?」

「応じればでしょう?応じないと分かっているから、ああ言えるのよ。レント殿もああ言っているだけよ」


 ラーラの声にバルはまた、諦めの様なものを感じた。


「いや、そんな事は」

「バルがミリの結婚を許す筈がないと信じているからこそ、レント殿はああ言う風に言う事が出来るだけ。それだけよ。この先もしレント殿の他に、ミリに縁談が来たり求婚者が現れても、レント殿と同様、結婚する気なんてないわ。口だけよ」

「だが俺がミリの結婚を許したら結婚するのかと、レント殿にミリが訊いたら、結婚するとレント殿は言ったんだぞ?ミリ本人に訊かれて、ミリ本人に答えたんだ。レント殿はミリと結婚したいに決まっているじゃないか?」


 バルにとっては、バルがミリを結婚させない事と、ミリに魅力がある事は別の問題だ。ミリはあれ程かわいいのだから。それなのでバルは、ラーラがミリの魅力を理解し切れていない様に受け取った。

 しかしラーラはくぐもった声のまま、言葉を返す。


「その様な事、ある訳ない。あれはミリ自身も結婚出来ない事を分かってて訊いたのよ?レント殿もそのミリの考えを読んで、あの場ではああ言ったの」

「いや、だが、男が一度言った事に責任を持たなければ」

「男も女も関係ない」


 その言葉と共にバルは、ラーラがまた首を僅かに左右に振るのを肩に感じた。


「そもそもレント殿がプロポーズをしなければ、ミリが受け入れる事もないのだから、レント殿に取ってはプロポーズしなければいいだけでしょう?」

「プロポーズしない?いや、しかし、コーカデス家の許可を取って来ると」

「それだって、バルが結婚をさせない事をまず前提に置く筈だし、その上でレント殿が絶対にプロポーズしない事を条件にして、プロポーズする事に賛成させるわよ。レント殿なら」

「いや、確かにレント殿は考えは少し捻くれているところがあるけれど、でも、領地を立て直したいとかミリが素晴らしいとか、気持ちは真っ直ぐだと俺は思うよ?それにミリに好意を持っているとも言っていたじゃないか?レント殿は男としては、ミリには真摯に向き合っていると俺は思うし」

「だから男も女もないでしょう?それにレント殿はまだ子供じゃないの」

「いや、子供だって男だ。女性を好きになるのに大人も子供もない」


 ラーラが顔を離して、バルを見上げた。そのラーラをバルは見詰め返す。


 バルは自分達の事を思い出していた。

 ラーラと結婚した時はまだ、バルもラーラも未成年だった。

 そして、ラーラを好きになったのが子供の時の事だとしても、ラーラを好きになった事自体についてはバルは、大人になった今でも正しかったと思っているし、後悔も全くした事がない。


 一方でラーラは、バルとリリの事を思っていた。

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