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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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領地再興のアイデア

 レントの叔母リリ・コーカデスは、レントに確認する決心をした。勇気を振り絞って、リリは声を出す。


「あの、当主様?」

「何でしょうか?叔母上?」

「当主様は、ミリ様がプロポーズを受け入れる事があれば、ミリ様と結婚すると仰いましたよね?」

「はい」

「それは、本当ですか?」

「もちろんです」

「生理的嫌悪をミリ様に感じているのに?」

「それはミリ様が仰っていただけで、わたくし自身は感じてはおりませんし、何の問題もありません」

「問題はオオアリではありませんか?当主様がミリ様と結婚なさったりしたら、その生理的嫌悪は当主様にもコーカデス家にも、そしてコーカデス領にも向けられるのですよ?」

「その生理的嫌悪が?」

「ええ」

「ああ、わたくしからミリ様へのではなく、他の人間からミリ様へのですね?」

「ええ、そうです」

「叔母上が仰っているのが神殿の信徒の事でしたら、神殿の信徒にはコーカデス領から出て行って貰って構いません」

「え?!何を言っているのです!」

「いいえ。ミリ様と結婚するまでもなく、ミリ様にコーカデス領の再興を手助けして頂く事になれば、ミリ様が計画や推進をなさる事業を必ずや、神殿信徒が妨害する筈です」

「その様な事、必ずとは言えないではありませんか」

「いいえ。必ずです。コウグ公爵領でミリ様が、神殿の信徒達に襲撃された件に付いて、叔母上は御存知ありませんか?」

「え?ミリ様が?大丈夫だったのですか?」

「はい。護衛が退けたので、怪我をなさったりはしなかった模様です」


 リリはほっと息を吐いて、「良かった」と呟いた。王都での暴動を思い出して、炎に包まれるミリを想像してしまっていたからだ。


「ミリ様がコーカデス領の再興に携わって下されば、新たに人々が集まっても来るでしょう。その中のミリ様を悪魔の子などと呼ばない人々と共に、コーカデス領を再興させます。ミリ様を支持するまでは行かなくても、ミリ様がなさる事を冷静に受け止めてきちんと判断できる分別のある人だけ、コーカデス領に残って貰えれば良いのです。暴動の火種となる神殿信徒など、領地再興の不安材料でしかありませんし、存在そのものが領地再興の足を引っ張ります」


 レントの過激な発言に、リリは目を見開く。


「法律さえ許すのなら、神殿信徒の立ち入りなど、コーカデス領では禁止したい」


 レントはそう呟く様に言ってから、自分の言葉に「なるほど」と肯いた。


「国教を持つ国もありますから、領教を制定出来る様に、貴族議会で法を調えれば良いですね」

「え?でも、当主様?」


 リリは慌てて口を挟む。リリにもそれが良い様に、ミリを守る為には必要な事の様に感じてしまった所が、危険だとリリは思った。


「わたくしも当主様も、神殿信徒の一人ですよ?お祖父様もお祖母様もですし」

「わたくしは生まれてから一度も神殿に行った事がない筈ですが?」

「それは、当主様は領地の生まれでしたから、生まれた時直ぐには王都の大神殿で祝福を授けて頂けませんでしたし」

「つまり家族からはわたくしは神殿の信徒と思われていますが、神や神官からは信徒だとは思われていないと言う事ですよね?」

「それは、確かに、大神殿の信者名簿には、当主様の名前は載ってはいませんけれど」

「ええ。そしてわたくし自身も、神殿の信徒だとは思っていません」

「え?でも」

「そして叔母上も、王都に来てから大神殿に参拝なさったりはしていないではありませんか」

「それは、王都では色々とやる事が多かったのですから」

「いいえ。わたくしは叔母上を責めているのではありません。貴族に取って神殿の信徒かどうかと言うのは、大神殿の信者名簿に名が記載されるかどうかに過ぎないのだと指摘をしたいのです」

「それでも、では当主様は、わたくしとお祖父様とお祖母様をコーカデス領から追い出すと言うのですか?」


 リリに見詰められて、レントは視線を下げて「いいえ」と首を左右に振った。


「その様な事は出来ませんね」

「良かった」


 リリは溜め息を吐く様にそう言い、肩の力を抜く。


「追い出すのは神を使って、ラーラ様を悪魔、ミリ様を悪魔の子と呼ぶ者達だけにしましょうか」

「え?当主様?」

「それにコーカデス領が再興すれば、神官がまた領地の神殿に戻って来ようとするでしょうから、その前に、コーカデス領内の神殿が廃墟となっている内に取り壊してしまって、再建の許可を出さない事にします」

「出さないって、当主様?その様な事をすれば、神殿とも信徒達とも、揉め事になります。それはお分かりですよね?」

「揉めるのが嫌なら、コーカデス領から出て行けば良いのです」

「いえ、当主様。それは横暴です。その様な事をしたなら、領民がいなくなってしまいます」

「構いません。そうなれば、ゼロから領民を集め直します」

「そんな、到底現実的とは思えません。当主様?しっかりなさって下さい。その様な事を考えるなど、どうなさったのですか?」


 レントは視線を下げたまま、リリには答えずに考え込んでいた。

 そして顔を上げて呟く。


「領民ゼロ。案外、良いかも知れません」

「え?当主様?」

「古いインフラなども修理するのではなく、新しく村を作ってそこに人を招く。かなり効率良く資産を運用出来ますし、問題のコントロールもし易い。うん。良いアイデアです」


 レントはリリに嬉しそうな顔を向けた。


「わたくしの想定より早く、領地の再興が出来るかも知れません」


 リリはレントから視線は逸らさずに、首を大きく左右に振った。


「その様な事はなりません!一体どうしたのですか?当主様?」

「どうしたとは?何でしょう?叔母上?」

「そんな、領民を全て追放するなど、おかしいではありませんか?」

「全てではありません。領民ゼロは、まあ、キーワードと言いますか、最悪そうなっても良いと言う、わたくしの覚悟を現すのにちょうど良い言葉だと思って使いました」

「その覚悟が領主としておかしいではありませんか?領民ゼロだなんて」

「ですが、わたくしとミリ様の進めるコーカデス領再興を妨げるものには、対処しなければならないではありませんか」

「そんな、対処なんて」

「叔母上」


 レントは顔から表情を消した。

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