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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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目線の効果

「いずれにしても既婚者の(かた)ですと、やはりバル・コードナ様や御親族の(かた)でも他家の(かた)でも、ミリ様のお相手にはそぐわないのは同じなのではないでしようか?」


 レントが既婚者を対象外にしたがっているのは分かっていたけれど、ラーラからするとパノの弟スディオなら、ミリと交際練習をさせても良いかも知れないと思い始めていた。

 スディオはミリの戸籍上の従兄だし、ミリが生まれた時から可愛がっている。ラーラとしては安心してミリを任せられる相手だ。ただし少し、お守りを任せる様な感じになってしまうかも知れない。


「一緒に暮らす父親や親族と、他家の男性が一緒の訳はないでしょう?」


 親族にスディオを想定したラーラは、バルを誤魔化す為に、対象に父親も上げた。

 ラーラから見るとミリが絡むと、バルはスディオにライバル意識を持つ様に思えていた。それなのでスディオとミリの交際練習をバルに想像されると、この先でバルが立ち塞がるかも知れないと、ラーラには思えている。


 だがレントが論じたいのは、もちろんそこではない。


「いいえ。目線で考えたら一緒です」

「目線?」

「はい。既婚男性がミリ様の交際練習相手をしたとしても、バル・コードナ様と同じ様な父親目線になるのではありませんか?」

「既婚者でも娘がいない人なら?」


 ラーラはまた一つ、簡単なハードルを置いた積もりだった。けれどレントが眉根を寄せたので、ラーラは違和感を抱く。


「ラーラ様?その様な方にミリ様が、女性扱いされてもよろしいのでしょうか?」


 そう言われてラーラもバルも、バルとミリに関するおぞましい噂を思い浮かべた。

 レントはラーラが答えを返す前に話を続ける。


「お相手の方に女性として接される事が、ミリ様の経験になる筈です。その必要がないのでしたら、交際練習は両親とすれば良いのですが、そうではありませんよね?」


 もちろんレントは、バルとラーラが行った交際練習を念頭にして、こう尋ねていた。


「いかがでしょうか?バル・コードナ様?ラーラ様?」

「・・・そうね」

「そうだが、しかし・・・」


 バルは反論をしたいのだけれど、レントの話はゆらゆらと主題が揺れて、どこにレントの本心があるのか分からない。それなので先回りしてレントの逃げ道を塞ぐ様な、有効な反論がなかなか組み立てられなかった。

 話題がミリやミリの将来に関していなければ、バルはレントの意見を一蹴していただろう。


「ミリ様のダンスのレッスンは、ジゴ・コードナ様と行う事もあるのではありませんか?」


 レントが話題を変えた理由が読めてはいなかったけれど、言葉に詰まった直後だったので、ラーラはレントの話題に乗っていく。


「そうね。ジゴが王都に来た時には、一緒にレッスンをしています」

「それはジゴ・コードナ様の為なのかも知れませんが、ミリ様にも得る事があるのではないかとわたくしは思いますけれど、いかがでしょうか?」

「・・・そうね」

「いや、しかし・・・」

「交際練習も同じだと思うのです。ミリ様と同じ子供同士で、同じ様な教育を受けている子息と、同じ様な目線で学ぶからこそ、同じ様な興味や感動を通して、お互いに、その、経験を積み重ねていけるのではないでしょうか?」


 レントは「高め合っていける」と言いそうになって、「経験を積み重ねていける」と言い換えた。高め合うだとバルとラーラに、恋愛を想像させてしまうかと警戒したからだ。


「でもそれならミリは、ジゴと交際練習をするのでも良いのではない?」


 ラーラの言葉にバルも「そうだな」と小さく肯いた。ミリの交際練習に反対していた筈のバルが、ジゴとの交際練習に肯いた事に少し驚きながら、レントも肯く。


「確かに仰る通りですけれど、その場合には、ジゴ・コードナ様の縁談を妨げる事になりませんか?」

「え?それはジゴとミリを結婚させるとコードナ侯爵家が考えていると、他家に受け取られるから?」

「はい」


 肯くレントを見て、バルとラーラは顔を見合わせる。

 バルもラーラも、ミリとジゴとの結婚はないと思っている。コードナ侯爵家の誰にも、その気はないだろう。

 けれど、他家から見たら確かに、そうは思えないかも知れない。


「この度の密造と脱税との問題への対応で、他家からのミリ様への評価は、非常に高まったのではないでしょうか?コードナ侯爵家がその有能なミリ様を手放さない為に、ジゴ・コードナ様の妻に据える事は誰にでも想像できるでしょう。何せミリ様には、領政の補佐も期待できるのです」

「確かにそうね」

「いや、しかし・・・」

「年配の方々には、ジゴ・コードナ様を補佐するミリ様と言うのは、ガダ・コードナ先代侯爵閣下を補佐なさった、デドラ・コードナ様の姿を思い出させるのではありませんか?」

「それはありそうね」

「それはそうかも知れないが」

「その上、ソロン王太子殿下にも、ミリ様はかなり気に入られています。それならばコードナ侯爵家が、ミリ様を将来の侯爵夫人としようとしても、不思議とは思われません」

「確かにそうよね」

「確かにそうだが、しかし」

「そうなると、ミリ様に勝てる御令嬢がどれだけいるのか分かりませんが」


 ここまでレントの意見に押されていたバルの気持ちは、ミリに勝てる令嬢などいない、と反発する。


「ジゴ・コードナ様の縁談相手に名乗りを上げるのは、かなりハードルが高くなるのではありませんか?」

「確かにそうだな」


 バルは強く肯いた。


「ジゴの縁談の障害になる危険性があるのなら、コードナ侯爵家はミリとジゴとの交際練習は、認めたりはしないだろう」

「そうね」

「それにミリとジゴの結婚が噂にでもなったら、二人を結婚させない事をジゴの婚約相手が理解していたとしても、ずっとミリと比較される事になる」

「そうよね」

「ジゴの結婚相手の親は、その様な状況を望まない筈だ」


 バルが肯いたので、レントはもう一押ししたくなって、慌てて自分を抑えた。

 多分、ここで押したら駄目だ。レントはそう感じた。


「そこで提案させて頂きたいのですが」


 この言葉でバルが警戒をしたのがレントには分かった。それは警戒しますよね?とレントも思う。

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