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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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紹介依頼

 レントからミリに一通の手紙が届いた。

 それはソロン王太子も関わる機密扱いの件ではなく、内袋に秘密の遣り取りも記されてはおらず、更にはミリが書き綴ったディリオの愛おしさに関しての同意も反論も載っていなかった。


「え?借金の申込み?」

「いいえ、お父様。正しくは投資家の紹介の依頼です」

「一緒だろう?」

「見ても良いの?」

「はい。御覧下さい、お母様」


 ミリはレントからの手紙をラーラに渡す。バルもラーラの隣から、レントの手紙を覗き見た。


「これは、ソウサ商会を紹介して欲しいと言う話なのか?」

「そうではないと思います。ソウサ商会は直接、コーカデス領への取引をしていませんから、投資をする動機が薄いですし」

「それなので投資を切っ掛けに、ソウサ商会にまた進出して来て貰おうと考えているとは思わないかい?」

「ソウサ商会が再進出するには、結構な経費が掛かる筈です。そして今のコーカデス領では、それを補える配当は見込めません。ソウサ商会には相手にされないと言う事は、レント殿も理解しているでしょう」

「それが分かっていないから、ミリにこの様な依頼をして来たのではないのかい?」

「レント殿が頼る相手として私を選んだ理由があるなら、それはソウサ商会との繋がりよりは、他国の船との繋がりではないかと思います」

「この国以外から投資を集めると言うのか」

「はい」

「そうなれば、国内で相手にして貰えないと宣言する様なものだ。相手にも軽く見られるだろうから、不利な取引を()いられるのではないかな?」

「そうですね」

「それはレント殿も分かっていると?」

「はい。私はそう思います」

(なり)振り構っていられないと言う事か。しかし他国からの投資を受け入れたら、他国からの干渉も受け入れる事になる。国防上の問題になるだろう」

「今は戦争の気配などありませんので、他国の商品を扱う商会や、他国の技術を取り入れる工房なら、投資を受けている事がありますが」

「いずれも経済力は小規模だし、投資額もたかが知れている。しかし領地への投資なら規模も大きいし、そうなれば影響力も大きくなる」

「あるいは、他国から投資を受ける事を公にする事で、それを懸念するであろう王宮や王族、あるいは他の貴族から投資を呼び込もうと狙っているのかも知れません」

「そうだとしても、それは領政が他者の意見に影響を受けると言う事だ」

「ですが実際には貴族間でも上下関係がありますよね?配下の家には命令をしたり」

「それはそうだがその場合は普通に、交流のある領主に援助を申し込めば良い」

「その様な相手がいないとか?」

「・・・確かにレント殿の父君、スルト・コーカデス伯爵は、あまり交友関係は広くなかったと思うが、先代のリート殿はご存命だ。他の貴族家への伝手なら、まだ持っているのではないかと思えるが」

「それでしたら頭を下げる事は避けたいと、考えているのかも知れません」

「・・・それはどう言う意味だい?」

「困っているので助けてくれ、とコーカデス家から頼るのではなく、他国から投資を受けるくらいならこちらが投資を引き受けよう、と名乗り出て貰えるのなら、コーカデス家は頭を下げずに済みます」

「しかしそれは、他国から投資を受ける危険性を分かってはいないと言う事を公言する様なものだし」

「そうですね。それでは侮られる事になります」

「その様な事は、さすがにレント殿も分かっているよね?」

「分かっていてやろうとしているのかも知れません」

「・・・侮られても蔑まれても、頭を下げるよりはマシだと?」

「はい」


 バルの眉根が寄る。


「ミリ?私がレント殿に感じた印象では、レント殿はその様な判断をするタイプには思えないのだけれど」

「私もそう思います」

「そうだよね?だが、そうか。コーカデス伯爵の判断は、違うのかも知れないと思うのか」

「はい。プライドが高くて、頭を下げられない可能性はあります」

「・・・いや、違うな。スルト・コーカデス伯爵は跡を嗣いで直ぐに、コードナ侯爵家とコーハナル侯爵家に謝罪をしたのだ。頭を下げられない人ではない筈だ」

「両家との関係改善の為ですよね?」

「ああ、そうだね」

「ですが両家とコーカデス家の関係は、改善しているとは言えないのではありませんか?」

「そうだな。レント殿の働きで良い方向に向かい始めたと思えるが、コーカデス伯爵が頭を下げた事自体には効果があったとは思えない結果にはなっている」

「そうすると、頭を下げても効果がないなら、下げないで済ませる方法を選ぶかも知れませんね」

「でもそれは、僅かながらも結果を出し始めている、レント殿の成果を踏み躙る事にはならないか?」

「なると思います。レント殿の言動と隔たりを感じますので、レント殿自身への不信にも繋がるかと思います」

「いや、それは、ないだろう?」

「そうでしょうか?」

「いや、ないと言うのはそうはならないという意味ではなく、自分の子供が関係改善の道を探っているのに、親がそれを塞ぐ様な真似をする事があり得ない」

「ですがレント殿がこれまで(おこな)って来た事は、どうもレント殿の独断の様な気もしますので、コーカデス閣下は気に入らない可能性もあります」

「いや、しかし・・・う~ん?スルト・コーカデス伯爵がどの様な人物か良く分からないから、違うとは言い切れないが、それでも私には考え難いのだが」


 バルは更に眉根を寄せて首を傾げた。

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