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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
456/646

〇×

「では次だ」


 自分の誤認識を誤魔化す為に、タラン・コウグの言葉は早くなる。


「お前に馴染み深い問題を出してやる。イモが1つ入った箱が1個、イモが2つ入った箱が2個、3つ入った箱が3個とある時、箱が10個まであったら合わせて何箱だ?」

「・・・55箱ですが」


 ミリの回答にタランがコウグ公爵家の文官を見ると、文官は眉尻を下げて肯いた。


「うん?合っていたのか?」


 ミリがタランに声を掛ける。


「その問題、本来は箱の数ではなくて、おイモの数を問うのではありませんか?」

「イモの数?」


 ミリを振り向いたタランがまた文官を振り向くと、文官がうんうんと肯いた。タランはミリに向き直る。


「イモの数は」

「385個です」


 言葉を遮る様に直ぐさま答えたミリをタランは睨む。そして振り向いて文官が肯くのを見ると、再度ミリに向き直ってミリを睨んだ。


「では次だ。10種類から一つずつ選ぶとしたら、何通りだ?」

「10ですが」


 ミリは今度は間髪入れずに答えた。タランが驚いて文官を振り返ると、文官は困った顔をしながら肯いた。


「もしかしたらその問題も、10種類の商品の組み合わせは何通りあるかと言う問題でしょうか?」

「10種類の・・・」


 タランが文官を振り向くと、文官は首を傾げながらも肯くと言う、変わった動作を示した。


「それだと何通りなのだ?」

「1023通りです」


 タランがまた文官を見ると、文官は俯いてブツブツと言いながら計算をしていた。

 タランはミリに視線を向ける。


「大人だって直ぐには答えられないのだ。そんなに直ぐに答えられる筈がない。いい加減に答えたのだな?そうに違いない」

「10種類から1種類選ぶのは10通り、2種類選ぶのは45通り、と計算すると時間は掛かりますけれど、考え方を変えると直ぐに分かります」


 会場にいる何人もの文官達が、「合っていた」「1023通りだ」と呟き始める。

 その中の一人がバルの父ガダ・コードナ侯爵に囁くと、肯いたガダが「王太子殿下」と声を掛けた。


「なんだろうか?コードナ卿?」

「変えた考え方とはどの様なものか、確認をさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

「そうだな。私も知りたいし、陛下?ミリ・コードナ殿に説明して貰ってもよろしいでしょうか?」


 首を傾げて考えていた国王は「うむ」と肯くと、自らミリに声を掛ける。


「ミリ・コードナ」

「はい、国王陛下」

「種明かしの説明をする様に」


 ミリは国王の「種明かし」の言葉に引っ掛かりを覚え、思わず口角を下げそうになったがその顔を伏せて、「畏まりました」と答えた。


「説明を簡単にする為に、先ずは3種類で説明いたします」


 ミリは国王からの命令なので、国王に向かってそう言ったが、国王は参加者達の方を手で示した。

 ミリは、国王はこの場で理解しなくても、必要なら後で確認し直すのだろうと考えて、参加者の方を向いて言葉を続ける。


「3種類から1種類だけを選ぶのは3通り、となりますが、その時に、選んだ1種類には○、選ばなかった2種類には×を3通り毎に想像して下さい」


 参加者を見回して、皆が理解出来ていそうな事を確認し、ミリは小さく肯いた。


「同様に3種類から2種類選ぶ時も、選ぶ2つには○、選ばない1つには×を想像して下さい。そして全てを選ぶなら○が3つとなります」


 ここまでの説明も参加者達が小さく肯いているので、ミリは続きを話す。


「次に3種類の内の1種類だけに注目します。そうするとそれには○か×のどちらかしかありません。つまり3種類から何かを選ぶのは、それぞれを○にしたり×にしたりする事で表す事が出来ます」


 ここで参加者の何人かの顔に疑問の表情が浮かんだ。


「具体的に○と×で考えますと、3種類から1種類選ぶのは、○××か、×○×か、××○の3通りになりますね?」


 疑問を浮かべていた参加者と、眉間に皺を寄せながらも肯いた。


「同様に、3種類から2種類を選ぶなら、○○×、○×○、×○○の3通り。3種類全てなら○○○の1通り。合計して7通りとなります」

「それは、普通の計算の仕方ではないのか?」


 国王から掛かったその言葉に、ミリは振り向いた。参加者の中にも、国王に賛成する様に肯く人がいた。


「それぞれ何通りになるかを合計するのは、国王陛下の仰る通りでございますが、ここで重要なのは○と×を使った事でございます」

「と言うと?」

「はい。3種類のそれぞれに注目致しますと、先程も申しました通り、○か×しかございません。つまり○と×の組み合わせで、3種類から幾つかを選ぶ組合せに付いて、全て表す事が出来る事となります」

「先程、そなたが言っていた、○××とか、○○○とかだな?」

「はい。その中のどれか1種類に注目しますと○か×か、選ばれるか選ばれないかの2通りの状況しかございません。それが3種類ございますので、組み合わせは2通りを3種類分掛けたもの、つまりは2を3回掛けた8通り。そこからいずれも選ばれない×××を引きますので、7通りとなります」

「2掛ける2は4、4掛ける2は8か。なるほどな。それで先程の千幾つかも計算をしたのか?」

「はい。2を10回掛けますと1024、そこから全てが選ばれない1通りを引いて、1023通りと計算しました」

「2を10回で、1024なのか?」


 参加者に向けた国王の問い掛けに、文官達の何人かは肯いた。それを見た国王は小さく肯き返して、ミリに視線を戻した。

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