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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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説明会開始

 領地で脱税が行われていない事をコーハナル侯爵家が提出した報告書に付いて、他家への説明を依頼されて行う事になり、ミリは王宮を訪ねる。

 そのミリに、パノの父でコーハナル侯爵に当たるラーダはもちろんの事、バルとバルの父ガダ・コードナ侯爵も、コーハナル侯爵家とコードナ侯爵家の文官達と共に同行をした。


 王宮に着くとミリとラーダ、それにガダとバルも、文官達とは別れて別室に案内される。

 四人がしばらく待つとその部屋に、国王とソロン王太子が入室して来た。

 四人は二人に、王族に対しての礼をとる。

 国王は着席を促す様に、片手のひらを下に向けて上下に緩く振った。


「構わん。楽にしてくれ」

「コーハナル卿。本日は説明の為の資料提供を引き受けてくれて感謝する」


 ソロン王太子がラーダに言葉を掛ける。


「お役に立てます事、光栄にございます」


 頭を下げるラーダにソロン王太子は肯くと、ガダに顔を向けた。


「コードナ卿。本日はミリ殿が説明役を担う事を了承してくれて感謝する」

「はい。ミリでしたら、必ずや陛下と王太子殿下のお役に立つでしょう」


 ミリはガダの祖父(じじ)バカとも取れる答えに、顔を蹙めそうになった。そのミリにソロン王太子はちらりと視線を送る。それに気付いたミリは眉根を寄せそうになったのを(まばた)きで誤魔化して、表情を微笑みに戻した。その隣でバルは苦笑を浮かべる。


「バル殿も久し振り」

「ご無沙汰いたしております」

「今日はミリ殿の勇姿を見に来たのかな?」

「はい。見逃すわけには参りませんので」


 ミリは思わずバルに目を向けてしまい、今度こそミリの眉間が狭まった。皮肉ともとれるソロン王太子の言葉を肯定したバルに、ミリは驚いたのだ。普段から自分を可愛がってくれているとは思っていたけれど、まさか王族を前にして親バカな発言をバルがするとはミリは思っていなかった。

 しかしそれで言えば今の自分の様子も、王族を前にしたものとは言えない。

 ミリは慌てて顔をソロン王太子に向け直し、表情もまた微笑みに戻す。その様子を見たソロン王太子の微笑みにも苦笑が混ざった。


「ミリ殿、今日はよろしくね」


 ソロン王太子の気易い言葉に驚いたけれど、ミリは直ぐに頭を下げた。


「畏まりました、王太子殿下」

「まだ始まってないから、そんなに固くならないで良いよ?」

「はい。ありがとうございます」

「まだ固いね」

「コーハナル卿、コードナ卿、それにバル・コードナも」


 国王に声を掛けられた三人が、「はい、国王陛下」と声を揃える。


「今日の事は王太子に任せてある。余も同席はするが、王太子に従えば良い」


 その言葉にまた三人が、「畏まりました」と声を揃えた。国王が肯き、ソロン王太子も小さく肯く。


「私はコーハナル卿が提出した報告書の形式で進めたい。文官達からの評価も高いからね。それなのでミリ殿に説明を頼むけれど、押し切る為に私が口を挟むかも知れない事は、予め了解して置いて欲しい。良いかな?ミリ殿?」

「はい。畏まりました。よろしくお願いいたします」


 ミリは一度上げた頭を再び下げた。



 ガダとバルはミリ達よりは先に説明会場に入った。

 時間が来て、ミリは国王達と、国王、ソロン王太子、ミリ、ラーダの順に並んで入室した。ラーダに前に並ばせられて、ソロン王太子にもその順番が良いと言われたら、国王がさっさとしたそうな雰囲気だったのもあって、ミリもその順序を受け入れた。しかし格順に並ぶべきなのにラーダより前にされた事に、ミリは顔が引き攣りそうだった。


 国王と共に現れたミリの姿を見た参加者の間に、(ざわ)めきが広がる。

 それを静める様に国王が片手を参加者に向けて挙げ、開会を宣言した。


「これより、脱税有無の報告書式に付いての説明会を開催する。なお、進行は王太子が行うものとする。王太子、任せたぞ」

「畏まりました、国王陛下」


 そう言って王太子が頭を下げると、国王は用意されていた玉座に腰を下ろした。国王の着席を待って、王太子が参加者を振り向く。


「今回はコーハナル卿の協力の得てコーハナル侯爵領の資料を元に、脱税有無の報告書式をこちらのミリ・コードナ殿に解説して貰う」

「お待ち下さい、国王陛下、ソロン王太子殿下」

「・・・なんだろうか?コウグ殿」


 コウグ公爵家の代表として参加したタラン・コウグの言葉に、ソロン王太子が一拍置いてから返した。


「ミリ・コードナの名を目にした時には、同姓同名の別人がいるのかと思っていましたが、まさか本人ですか?」

「同姓同名であっても、それはそれで本人だろうが、コウグ殿は誰かとミリ・コードナ殿を間違えたと言う事だろうか?」

「間違えるも何も、もしかしたらバル・コードナの娘だとされている、あのミリ・コードナ本人ですか?」

「ああ、その通り、ミリ・コードナ殿の父君はバル・コードナ殿だ」

「いや、それってどうなのです?」

「コウグ殿?何が言いたいのかは全く以て分からないが、それはこの説明会に関係した話なのだな?」

「関係するしないの前に、言わなければならない事があるではないですか」

「いや、ない」

「え?ない?」

「ああ、ない。それでよろしいですね?国王陛下?」

「ああ、構わない」


 ミリが説明する事を聞いた元王女チリンは国王とソロン王太子に手紙を送り、ミリが理不尽な目に遭ったり立場を損なったりしない様にと二人に釘を刺していた。それを読んで国王は顔を蹙めていたし、ソロン王太子は苦笑をしていた。

 今も国王が僅かに顔を蹙めているのは、タランに対してではなく、チリンから刺された釘を思い出していたからだった。

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