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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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参加の説明

 コーハナル侯爵領の納税に不備がない事を報告した資料の説明をミリが行う事になり、その事がバルに伝えられた。

 バルには事後報告だったので、パノの父ラーダ・コーハナル侯爵もバルの父ガダ・コードナ侯爵もミリも、揉めそうだと判断をしたがその通り、話を聞いたバルがコーハナル侯爵邸に乗り込んできた。


「コーハナル侯爵領の事情をミリにさせるとは、どう言う事ですか?!コーハナル閣下!父上も!」


 声を荒げるバルに、ガダが「まあまあ」と声を掛ける。


「落ち着け、バル」

「落ち着いていられますか!父上!」

「お父様、落ち着いて下さい」

「しかしミリ!」

「バル君。事情を説明するから、取り敢えず話を聞いてくれ」

「もちろんです。納得できる説明をして頂けるのでしょうね?閣下?」


 バルに睨まれて、ラーダは「ふむ」と小首を傾げた。


「ミリ」

「はい、養伯父(おじ)様」

「父君が納得する説明を頼めるか?」

「私からですか?」

「その方が時間が掛からないのではないかな?」

「・・・仰る通りですね」


 ミリはラーダに肯くと、バルを見た。


「お父様」

「なんだい?ミリ?」

「私はディリオちゃんのお相手をしたいのです」


 真剣な顔でそう言うミリに、バルは眉尻を下げる。


「ミリがディリオ君に夢中なのは充分に分かっているつもりだが、それが何か今回の事に関係するのかい?」

「国王陛下から各貴族家ご当主へのご命令に付いては、お父様はご存知でしょうか?」

「ああ。概要は聞いたよ」


 バルの言葉にミリは肯いた。


「コーハナル侯爵領とコードナ侯爵領から国王陛下への報告には、私が普段養伯父様とお祖父様に提出しています報告書が流用出来ます」

「そうなのか?」

「そしてそれが正式な報告書式に採用されれば、コーハナル侯爵領もコードナ侯爵領も、報告書の書式を直して再提出する必要はなくなります」

「それはそうだろうね」

「しかしもし再提出となれば、私は両方の領地の報告書を書き直す事になるでしょう」

「それはそれぞれの家の文官に任せれば良いだろう?コードナ家はともかく、コーハナル侯爵家には優秀な文官が揃っているのだし」

「もちろんお任せして問題がある訳ではありませんが、新しい報告書を作るに当たって色々と質問をされるよりは、私が書き写した方が早いでしょう」

「確かにそうかも知れないが、それはミリの仕事ではないだろう?それぞれの領で解決すべきなのではないかい?」

「それは無駄ではありませんか」

「無駄と言う事はないだろう?文官達の本来の仕事なのだし」

「いいえ、お父様。コーハナル侯爵領もコードナ侯爵領も、何も問題がないのですよ?」

「そうか?それは良かったが、それがどうしたのだい?」

「コーハナル侯爵家の文官もコードナ侯爵家の文官も、問題を解決するべく注力すべき人材で、書式を変える為の単純な書き写しに手を掛けさせるのは、両家の損失になります」

「それを言うなら、ミリの手を煩わせるのだって、大損失になるだろう?」

「ですのでそれを防ぐ為に、私が説明をして、今のままの書式で確定する様に、関係各位に納得して頂くのです」

「いや、だが、その様な説得も、ミリではなくても出来るのではないか?」

「それは、そうですけれど」


 急にミリの口調が鈍る。それをすかさずラーダがフォローした。


「バル君。これはミリのお披露目ともなるだろう?」

「お披露目?ミリにはまだその必要はありません」

「いいや。ミリがソロン王太子殿下との席を持った話は広まりつつある」


 その言葉にミリはラーダを振り向いた。バルもガダもラーダを見る。


「そうなのか?ラーダ?」

「ああ」

「コーハナル閣下?どの様な話で広まっているのですか?」

「中身はないよ。チリンさんと一緒に王太子殿下にお目に掛かった事と、コーカデス家の跡取りと同席した事がただ広まっている。ああ、あと、国王陛下夫妻と一緒に食事の席に着いた事もだな」

「いや、しかし、それは、ただ食事をしたり話をしただけだよな?ミリ?」


 ミリはコーカデス領の脱税の話を思い浮かべていたけれど、その事は今もまだ口にしてはならないので、取り敢えずバルには「はい」と肯いて返した。


「社交界が機能していないので、今はそう言う事実が他の話の序でに語られているだけだ。しかし今回、各貴族家が一堂に集まったので、王家に絡む話なら一気に広まる。その裏ではある事ない事、言われかねない」


 そのラーダの言葉にバルもガダもミリも、ミリの出自を思い浮かべる。


「それなので下らない中身を噂に詰められる前に、ミリの優秀さを知らしめるべきではないか?」

「そうだな」


 ラーダの言葉に間髪入れずにガダが肯いた。


「報告書をミリが作ったと言う話だけよりは、皆の前でミリが説明した方が、ミリの事を理解出来るだろうな」

「それは、私もそうは思いますが」

「誰かに質問もさせるか。その方がミリの事が良く伝わるだろう」

「え?お祖父様?サクラを用意するのですか?」

「サクラではミリが本気を出せないのではないか?」

「え?私の本気?」

「そうだな。私も本気の遣り取りの方が、ミリの実力を皆が理解できると思うな」

「でも、養伯父様?説明会にはきっと各家から、納税管理者も出席したりしますよね?」

「王都に邸が残っている家はそうだろうな」

「その様な方達に本気を出されたら、私」

「ミリ。君なら大丈夫だ」

「養伯父様?」

「幼いながらに私の母のシゴキに耐えた君なら、各家の当主やそれこそ王族だって、怖い事などない筈だ」


 シゴキは言い過ぎだけれど、確かに国王陛下にも王妃陛下にも怖い印象はなかったけれど、そう言う意味ではないのだけれど、とミリは話の照準をずらすラーダの言葉に困惑した。


「そうだな。曾祖母(ひいばあ)様からも太鼓判を貰っていたミリの機転なら、楽勝で乗り越えられるだろうな」

「お祖父様?」


 曾お祖母様から機転に太鼓判を貰った事などなかったわよね?とミリは小首を傾げる。


「まあ私の自慢の娘のミリには、簡単に熟せるのは分かっているけれどね」

「お父様・・・」


 ミリが説明会で説明する事に反対していたはずのバルに微笑まれたら、ミリは微笑み返すしかなかった。


 疲労の蓄積を感じたミリは、取り敢えずこの場は早く締めて、早くディリオちゃんの顔を見に行こう、と考えていた。

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