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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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王都からコーカデス領へ

 ミリの紹介を通して手に入れた干物は、レントが王都にいる間に食べ終わった。


 何か干物のお礼をしようと思ったレントは、港町からの帰り道にミリに相談していたが、特に不要だろうと言われてしまっていた。彼等は船員なので、物でお礼を貰っても船に積めなければ処分に困る。そう言われてしまえば、レントにはお礼のしようがない。

 困った様子を見せるレントにミリは、コーカデス領で美味しい干し魚を作れば船員達は喜ぶと伝えた。そして、一緒に干物を食べた船の食材責任者ラッカとの話も思い出したレントは、それを叶える事を目指す事にする。

 取り敢えずレントは、ソウサ商会で通訳が出来る人を紹介する手紙をミリに書いて貰って置いたので、干物を貰ったお礼を改めてと貰った干物を食べ終わった感想を併せて手紙を書いて、船に届けて貰った。



 レントは王都に待機をさせられていたが、ソロン王太子からも王宮からも、追加での問い合わせはなかった。

 そのまま解放となったので、レントは領地に帰る。

 ソロン王太子からは待機の報酬と言うかお詫びと言うかで、王宮で作られたお菓子の詰め合わせが贈られた。



 領地のコーカデス邸に戻ると、レントの祖母セリが安堵を前面に出して、涙交じりにレントを出迎えた。


「お帰りなさい!レント!無事で良かった!」

「ただいま戻りました、お祖母様、わたくしは汚れておりますので、触らないで下さい」

「そんな訳にはいきませんよ!」

「お帰り、レント」

「ただいま戻りました、お祖父様」

「うむ。ほら、セリ?毎回同じ事をレントに言わせるな」

「そんな訳にはいかないでしょうリート!」

「いや、玄関で騒いでいるのは良くないだろう?」

「だってリート!」

「レントはこうして無事に帰って来たのだから、もう安心だろう?」

「それは、そうですけれど」

「帰ったばかりで疲れているだろうから、少し休ませて上げなさい」

「それは、分かっていますけれど」

「レント、夕食まで休みなさい。セリもそれで良いね?」

「お茶は?」

「それは私と二人で我慢してくれ」

「明日からはわたくしもお茶の席に参加しますので、今日の所はお許し下さい、お祖母様」

「ほら、レントもこう言っているし」

「そうね。分かったわ。でも、これだけは訊かせて。レント?」

「はい、お祖母様」

「コードナに無体を働かれたり、理不尽な事を要求されたりはしなかった?」

「はい、大丈夫です」


 セリの言葉に反論しそうになったけれど、そうすると話が長引くと思って、大丈夫だったとだけレントは口にした。


「そう?それなら良いけれど、後で詳細を教えてね?」

「分かりました、お祖母様」


 そう返してレントは微笑みをセリに向ける。その様子をリートも口角を上げて見ていたが、その目は笑ってはいなかった。



 着替えたレントは離れに叔母リリを訪ねる。ソロン王太子から貰ったお菓子の一部をレントは携えていた。


 貰った時にはお菓子に目が眩んで受け取ってしまったが、後になってからレントはお菓子の処分に困惑した。

 ソロン王太子への謁見は、他言無用となっている。周囲の人達に無駄な推測をさせない為には、ソロン王太子との謁見自体も公言しない方が良いとの結論になっていた。

 それなのに、王都待機の詫びとしてお菓子を受け取ってしまった。もちろんレントが食べ切ってしまえば問題はないのだが、とてもその様な量ではない。護衛にも分けたが、まだまだ大量に残った状態で、邸に持って帰って来てしまった。


「この様にたくさんのお菓子、どうしたのですか?」


 帰宅の挨拶の遣り取りもそこそこに、リリはレントに訪ねる。


「もしかしてまた、コードナ様に頂いたのですか?」


 少し警戒する雰囲気を出しながらそう問うリリに、やはりそう思いますよね?とレントは思った。そこで用意してみた理由を試してみる。


「伝統のビスケットの件があったではありませんか?」

「ええ。サニン殿下の懇親会の席の話ですね?」

「はい。その席でミリ・コードナ様とジゴ・コードナ様が、ビスケットの材料が違うと指摘をしましたが、わたくしもそこに同席していました」

「ええ。覚えています」

「それなので、材料の誤りを指摘した褒美が、わたくしにも与えられたと考えました」

「ですがあなたは、特に何の働きもしていなかったのではありませんでしたか?」

「はい。それですので、褒美と言うよりは、口止め料に近いのかも知れません」

「口止め料と言っても、材料が違っていた事は、公表されているのではありませんか?」

「はい。ですので済んだ事として、これ以降は口にするなとの意味ではないでしょうか?」

「その為にわざわざ王宮が、お菓子を贈って下さったのですか?」

「本当の理由が別にある場合もありますけれど」

「そうですね。それをわざわざ王宮に尋ねたりは出来ませんね」

「はい」


 お菓子はソロン王太子から贈られたが、レントの所には王宮の職員が持って来たので、王宮からと言っても嘘ではない。本当の理由は別にあるけれど、それを知らないとか分からないとか言っていないので、これもぎりぎり嘘ではない。


 取り敢えずレントは、検閲されずに送る事が出来るソロン王太子への最初の手紙で、口裏を合わせて貰える様に頼もうと考えている。

 それに王太子殿下から叔母上へよろしくとの伝言も、王太子殿下への謁見を秘密にするのなら伝えられない事も報告しなくてはなりませんね、とレントは心の中で溜め息を吐いた。

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