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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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他言無用と言う報告

 ミリが事情を説明にコーハナル侯爵邸を訪ねると、パノ、パノの母ナンテ、パノの弟スディオ、スディオの妻チリン元王女が集まった。

 そしてミリが挨拶をするより先に、チリンが「ミリちゃん」と呼び掛けながら小走りにミリに近付いたので、ミリも他の三人も大いに慌てる。


「チリン姉様!走らないで!」

「チリン!駄目だ!」

「チリンさん!危ない!」

「チリンさん!()めなさい!」


 皆の制止の声に構わず足を進め、チリンはミリの両手を取った。


「ミリちゃん、私の所為でごめんなさい」

「あの?チリン姉様?何の事でしょうか?」

「何かに巻き込まれたのでしょう?」

「それに付いては、口外が出来ません」

「私が王太子殿下に手紙を持って行く事をお願いした所為で、何かに巻き込まれたのよね?」

「ですのでチリン姉様?巻き込まれたとか巻き込まれていないとか、口外が出来ないのです」

「ごめんなさい。私から王太子殿下には、抗議の手紙を送って置いたから」

「え~と、チリン姉様?チリン姉様が抗議して下さった事には、何もなくてもわたくしからはお礼が述べられないのですけれど」

「王太子殿下への抗議にお礼を言っても、不敬になんてならないわよ」

「そうなのかも知れませんが」

「不敬だなんて言って来たら、私が断固として抗議しますから」

「あの、分かりました。分かりましたから、チリン姉様?少し落ち着いて下さい」

「落ち着けるものですか」

「チリンさん。ミリが困っていますよ?」

「そうよ、チリンさん。これ以上ミリを困らせてはダメよ」

「あの、養伯母様、パノ姉様。私は大丈夫ですので、その様な言い回しは控えて頂いた方がよろしいです」

「まあ、チリン。折角ミリが訪ねて来てくれたのだから、取り敢えず座ってミリの話を聞こう」

「ええ、そうね、スディオ。ミリちゃんを立ちっ放しにさせてはダメよね」

「ああ。さあ、皆、座りましょうか。ミリもどうぞ」

「ありがとうございます、スディオ兄様」


 スディオに導かれてチリンが席に付き、他の三人も椅子に腰を下ろした。スディオもチリンの隣の席に腰掛ける。


 お茶を淹れた使用人が部屋から下がると、ミリは話を切り出した。


「皆様、既にご存知の様ですが、コーカデス殿の王太子殿下への話に付いては、王太子殿下がお預かりなさる事になりました」

「それは良いのよ。でも何故ミリちゃんが巻き込まれているの?」

「それは、他言無用となりましたので」

「それがおかしいでしょう?ミリちゃんはコードナ家の人間じゃないの。それなのに王家か王宮か知らないけれど、そちらとコーカデス家との間の話に、どうしてミリちゃんが関わる必要があるのよ?」

「チリン姉様、それに付いては他言出来ませんので」

「その他言無用もおかしいでしょう?他言無用と言う事は、コードナ家にも説明しないと言う事なのでしょう?」

「はい」

「その様な事、バルさんもラーラさんも、コードナ侯爵だって侯爵夫人だって許せないでしょう?」

「コードナ侯爵家からは抗議が送られましたけれど」

「知っているわ。それを聞いて驚いたのですもの」


 チリンが驚いたと言った事にミリは驚く。チリンのお腹に影響がなかったかどうか心配で、ミリが確認の為にナンテとパノを見ると、二人ともミリに肯いて返したので、ミリは取り敢えずは安心した。


「チリン姉様?余り興奮なさると」

「お腹の子に悪いと言うのでしょう?分かっているわ。でも、私がミリちゃんに手紙を運んで貰わなければ、ミリちゃんが巻き込まれる事はなかったのですし」

「チリン姉様。それなのですが、私がコーカデス殿を王太子殿下に引き合わせて欲しいとチリン姉様にお願いした時点で、私が手紙を届けてもそうでなくても、変わらなかった様に思います」

「その様な筈はないでしょう?」

「いえ、きっと同じ様な状況になっていたと、私は考えています」

「それはどうしてかしら?」

「それは、言えませんけれど、そう思っています」


 ミリは干し魚の件で、コーカデス領を訪ねる事になっている。それなので、たとえチリンの手紙をソロン王太子に届けなくても、何らかの形で巻き込まれていただろうと考えていた。

 レントはソロン王太子が許せば脱税の件をミリにも伝えると言っていたし、ソロン王太子もあの場にミリがいなくても、ミリに話をする事をレントに許した様にミリには思える。

 それなら色々と動き出してから突然巻き込まれるよりは、出だしから関わる方が心の準備も出来るのでマシ、とミリは感じていた。

 何より自分が思い付きで言った、密造を投資として扱う対応案が、実はミリは気に入っていた。対策として採用されるかどうかは分からないけれど、採用されなくてもミリは構わない。ソロン王太子に提案する事が出来た事で、ミリは充分に満足をしていた。そして脱税問題に途中から関わる事になっていたら、あの案が思い付いても誰にも伝える事はなかったと思えるので、その点ではレントがソロン王太子に相談するあの場に立ち会えたのは良かったとミリは思っている。


「言えない事ばかりですけれど、でも、チリン姉様の手紙を王太子殿下に届けて良かったと、私は思っていますよ」


 そう言って微笑むミリに、チリンとナンテは眉尻を下げ、パノとスディオは少し苦笑いを浮かべた。

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