表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
360/645

就ける仕事

 翌日、漁村の宿から出たレント達は、女達に囲まれた。女達からは、宿の部屋に今朝もまだ残っていたのと同じ様な、香水の(にお)いがする。


「ホントだ。可愛らしい子じゃないか」

「でもまだちょっと幼いよ」

「小間使いとかでも良いだろ?」

「そうだね」

「賢そうな顔してるし、芸を仕込めば化けるんじゃないかい?」

「仕込むのは芸だけじゃないけどね」


 何が面白いのか、女達は「あっはっは」と笑い声を上げる。


「あんたら、夕べのお姉さん達だよな?」


 会話担当の護衛が訊くと、女達は口々に肯定した。


「あんたら三人、仕事を探してんだろ?」

「ああ」

「この子なら、あたしが雇うよ」

「抜け駆けすんじゃないよ」

「あたしんとこ来なよ」

「あたしんとこの方が楽しいよ?」

「ウチに来たら直ぐにこの町一番の売れっ子にしたげるよ?」

「何言ってんだ。一番はあたしのとこだよ」

「あんたらのとこじゃダメだよ。ウチは上品だから、あんたに合うよ?」

「どこが上品なのさ?」

「胸がお淑やかって事だろ?」

「なんだって?あたしはあんたらみたいに垂れてないだけだよ」

「誰が垂れてるって?」

「比べてみるかい?」

「もちろんだ。兄ちゃん達?誰のおっぱいの格好が一番良いか審判してくれ」

「待った待った」


 会話護衛が両手を突き出して、女達を止める。


「こんなとこで胸を出そうとするなよ」

「夕べは暗くて良く見えなかったろ?」

「手触りだけじゃなくて、形もちゃんと比べてよ」

「肌触りも確かめ直すかい?」

()めろってば。弟の教育に悪いだろ?」

「はあ?」

「自分はさんざん味わっといて、何言ってんだい?」

「俺は良いの、俺は。それに言っとくけど、弟は男だぞ?」

「弟ってそっちのでかいのかい?」

「でかいのは兄貴。ちっこいのが弟」


 女達がまた「あっはっは」と笑い声を上げる。


「分かった分かった」

「弟だね?分かったよ」

「だけど言っとくけどね?子供なんて直ぐに大きくなるんだよ?」

「そうそう。仕事、探してんだろ?男として勤めても、直ぐに女っぽくなっちゃうから」

「そうだよ」

「あんたら二人なら、この先に行けば仕事が見付かるんじゃないか?」

「二人って、俺と兄貴?」

「ああ、そうだよ」

「力仕事探してんだろ?この先に漁村があるから、行ってみな。でもこの子の仕事はないよ」

「そんでこの子はここに残れば良い」

「ああ、ウチで雇ってやるから」

「あたしが雇うってば」

「まあ誰かしら面倒見るから、あんたらは金が出来たら遊びに来れば良いんだよ」

「そうそう、この子の為にもいっぱい稼いどいで」

「いや、待てよ。ここはよそもんには仕事がないんじゃなかったのか?」

「確かに男にはないよ」

「でも女なら別さ」

「あたしらだって、よそもんって言えばよそもんだし」

「あたし達みたいな商売は、ここの女達はやらないからね」

「そうそう。あたしらみたいなのがいなければ、男らが困る。だから女ならよそもんでも仕事があるんだよ」

「そうなのか。でもな?弟は男で、俺達三人は一緒に働きたいんだ」

「だから、男って事にしたら、この子の働き先なんて見付からないって」

「そうだよ」

「いや、どう見ても男だろ?」

「カッコはね」

「でも、旅するのに男のカッコさせてるだけだろ?」

「お嬢様が言ってたよ」

「ホントは女だってね」

「ねえ?お嬢様?」


 女達が振り向くと、後ろにいた少女が「ああ」と返した。

 会話護衛が眉間に皺を寄せてお嬢様に尋ねる。


「お嬢様?なんでそんな話になってんだ?」

「ホントは女だから、海に入らなかったんだろ?」

「海に?」

「裸になったら女だってバレるじゃないか」

「何言ってんだよ。俺らも入らなかっただろ?」

「あんたらは海に来た事があんるだろ?初めて来たのに海に入らないなんて、女だってバレない様にしてるしかないじゃないか」


 少女は得意気な表情を浮かべた。


「いや、お嬢様?なに、その決め付け?」

「それにゆうべ遅く、あんたら海見に行ったろ?」

「え?なんで?」

「見てたやつがいるんだよ。初めて海で泊まったら、必ず夜の海を見るからね」

「見てた?どこで?」

「自分()からだろ?」

「自分()って、海岸の方にあるのか?」

「そんな訳ないだろ?」

「それなら見えないんじゃないか?」

「あんたらと違って、みんな目が良いんだよ。暗くても遠くまで見えるさ」

「そう言う、事か。それで?俺達を見たからなんだって?」

「でっかい兄ちゃんがその子を抱いて歩いてたろ?」


 レントは塩田に行った事が見られたのかと思ったけれど、少女や周りの様子から、そうではなさそうだと考えた。護衛二人に目配せすると小さく肯き返されたので、二人も同じ意見だろうとレントは少し安心した。

 しかし今度は、あれを見られていたのかと思うと、羞恥が込み上げて来る。


「ああ。それが?」

「そんなの、女の子にする事じゃないか」


 その結論も仕方ないとは思うけれど、レントは言い返したい。


「仕方ないんだよ。コイツはおっちょこちょいだから、暗い中歩いたら転ぶだろ?抱っこして歩くんが俺達も楽なのさ」


 言い返す言葉をレントが考えている内にまた、今度はおっちょこちょいだとの設定がレントに増えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ