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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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コウグ公爵家の使者が来て

 コーハナル侯爵邸にコウグ公爵家の使者が来たとの報せを、ミリは助産院で受けた。

 ミリは急いでコーハナル侯爵邸に向かう積もりになっていたけれど、報せを持って来た使用人には慌てなくても構わないと聞いていると言われ、パノの母ナンテからの手紙にもゆっくりと来れば良いと記されている。

 自分に聞かせたくない話もあるのかと思い、しかしわざわざ遅れて行く事も出来ず、取り敢えず普段の様に支度をして、ミリはコーハナル侯爵邸に向かった。


 コーハナル侯爵邸に着いたミリは、居室に案内された。コウグ公爵家の使者が居室にいるとは思えなくて、ミリは小首を傾げながらも室内に入る。

 居室の中にはパノ、ナンテ、パノの弟スディオ、スディオの妻チリン元王女の四人がいて、ミリの入室に気付いて皆が顔を向ける。

 ソファに座ったままのナンテがミリに声を掛けた。


「ミリ。来てくれてありがとう」


 そう言ってナンテはミリを手招きする。


「あの、皆様、お待たせ致しまして、申し訳ありません」


 そう言ったミリにナンテは、ソファに座る様に促しながら応えた。


「いいえ、ミリ。待ってはいませんよ?ちょうど良いタイミングです」

「しかし既に皆様は、集まっていらしたのですよね?」


 四人の前に置かれたカップに残ったお茶やお茶請けの減り具合を見て、ミリはかなり遅れたと思っていた。


「ミリにもお茶を淹れて下さい」


 パノが使用人にそう指示をしたので、ミリは驚いてナンテに訪ねる。


「あの、コウグ公爵家からの使者はまだ来てはいなくて、これから来るのでしたのでしょうか?」

「いいえ。すでに応接室にいますよ」

「それは、でも、お待たせしていると言う事ですか?」

「ええ、そうですね」

「ミリちゃん?事前の連絡もなしに来たのですから、今日中に会って差し上げるだけでも、使者に対しては充分なのよ」


 チリンにそう言われたのでミリは驚いた。しかしナンテは小さく肯いている。そしてパノとスディオは苦笑を浮かべながら口を開くが、チリンの言葉を否定はしなかった。


「確かにチリン、そうだけれど、忙しいミリが来たのだから皆さん、そろそろ行きましょうか?」

「そうね。ミリの時間を余り無駄にするのはダメですよね」

「いえいえ、あの、わたくしより、養伯母(おば)様やスディオ兄様の方が、お時間が貴重なのではありませんか?」

「いいえ、ミリ。最近はパノが手伝ってくれますから、私はそれ程忙しくはありませんよ?」

「私も姉上に手伝って頂いているのもあるし、子供が出来たと知ってからはチリンの傍にいる為に、なるべく効率良く仕事を熟しているから大丈夫だよ?」

「私も、二人を手伝っているとは言っても、私のメインの仕事はチリンさんのケアですし、それらを合わせてもラーラの手伝いよりは楽ですから」

「え?パノ義姉(ねえ)様?コードナ家でのお手伝いは、そんなに大変なのですか?」

「決して大変な訳ではないわ、チリンさん。でも金額も帳簿の行数も、コーハナル侯爵家より全然多いのは確かですね」

「そうなのですか。さすが、バルさんとラーラさんのお邸ですね」

「でも姉上?私は助かっているけれど、今は姉上が手伝っていないコードナ家は、大丈夫なのですか?」

「問題ないのではないかしら?ミリも手伝っている様ですし」

「あの、わたくしはそれ程。朝に顔を出した時に、何かあれば母から頼まれる程度ですので」

「そうなの?」

「はい。それよりは最近は父が、早く仕事を終えて帰って来るとの事で、母も家の事を素早く終わらせて、父を出迎える様にしているらしいとの、話を聞きました」


 ミリの言葉に、バルとラーラの恋物語のファンだったチリンの目が輝く。


「そうなの?ミリちゃん?」

「はい、チリン姉様」


 見てみたいとチリンが言い出しそうな雰囲気を感じて、パノは苦笑を滲ませながら言葉を挟んだ。


「もともとラーラも、気持ちが安定していれば仕事は早いですものね」

「パノ姉様、わたくしもそうだと感じています」

「バルさんも、仕事を早く終わらせているのか」

「はい、スディオ兄様」

「私ももっと早く終わらせないと」

「でもスディオ?慌てて間違って、却って遅くなったりしたらイヤよ?」

「分かっているよチリン。それは私もイヤだから、気を付けるし大丈夫だよ」


 スディオとチリンの出す少し甘い空気に、パノはミリを向いて小さく肩を竦めて見せる。ミリはパノに対して、苦笑いにならない様に注意して、微笑みを返した。

 その四人の様子を微笑みを浮かべながら見ていたナンテが、口を開く。


「それではそろそろ、参りましょう」


 その声でスディオが「ええ」と応えながら立ち上がり、チリンに手を差し出す。ナンテもパノもミリも立ち上がり、スディオに導かれて立ち上がったチリンは、その手をスディオから離してミリに差し出した。


「ミリちゃん、エスコートをして頂ける?」


 ミリは顔を向けたスディオに肯かれ、チリンに視線を戻す。


「はい、チリン姉様」

「よろしくね」


 五人はナンテを先頭に、続いてスディオ、チリンとミリ、最後にパノの並びで応接室に向かった。

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