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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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赤くなる理由

「お父様、パノ姉様、どうなさいました?」

「ミリ」

「はい、お父様」

「今日、馬車の中で具合が悪くなかったかい?」


 バルの問い方にパノは眉根を寄せる。


「いえ?その様な事はありませんけれど?」

「ミリ?あなたが顔を赤くした件よ」


 パノの言葉にミリの顔が段々と赤くなる。赤くなりながらミリは、傍に控える使用人達をチラリと見た。


「この人達は何も言ってないわ」

「あの、はい。思わず見てしまいましたけれど、疑った訳ではありません」

「そう。それで?」

「それで・・・」

「レント殿の墓参に同行した日に、何かあったの?」

「それは・・・」

「あったのね?」

「はい」

「ミリ?あなたが口止めした人達は何も言わないのよ」


 パノは口止めを事実として話す。


「・・・はい」

「つまり、危険な事ではないのだとは、私もバルも思っているし、あなたが一人で解決しても構わない事だとも思うわ」

「はい」

「でもね?心配なのよ」

「心配ですか?」

「ええ。心配」


 パノの言葉にバルも肯く。

 ミリが面倒臭い事を考えていないか、それは確かにかなり心配だ。


「あなたがしっかりしている事は、皆が知っているわ。そのあなたが赤面して話さない事があるなんて、心配しない筈がないでしょう?使用人達に口止めまでして」


 眉尻の下がったパノの表情を見て、ミリは顔色を戻して視線を下げた。

 どう話せば良いかと考えて、その時の様子を思い出すとまた、ミリの頬が朱に染まる。自分でもそれを感じながらも、ミリは説明の為の言葉を探した。


「あの、私、フェリ曾お祖母ちゃんのお墓の前で、しゃがみ込んでしまったのです」

「それってレント殿の前で?」

「はい」


 ミリの頬がますます赤くなる。


「体調が悪かったのかい?」


 バルはミリが、お(なか)の調子でも悪かったのかも知れない、と考えた。男の子の前でお腹が鳴ったりでもしたのなら、ミリも恥ずかしいだろうし、皆にも口止めをするだろう。


「いいえ」

「レント殿に何かされたの?」

「なに?」


 パノの言葉にバルは眉尻を上げる。ミリははっと顔を上げると、首を左右に振った。


「違います。変な事をされた訳ではありません」


 それは分かっているパノはミリに肯いて見せて、「でも」と口にした。


「変ではないけれど、何かはされたのね?」

「なんだと?!」


 立ち上がったバルをミリが驚いた顔で見上げる。パノは手振りでバルに座る様に促した。


「落ち着きなさいよ、バル。変な事ではないのでしょう?それでミリ?何をされたの?」

「されたと言うか、レント殿から上着を貸して頂いただけです」

「上着を?それだけ?」

「レント殿からは、あ、あと、ハンカチもお借りしました。レント殿からはそれだけです」

「なんだ、そうなのか」


 そう言うとバルは納得顔で席に腰を下ろした。


「え?バル?納得出来たの?」

「汗で体が冷えたのだろう?それを見てレント殿が上着を貸したのなら、問題はないじゃないか」


 冷えたのでお腹が痛くなって蹲ったのだろう、とバルは結論付ける。自分の娘とは言え女の子から、これ以上詳しく訊き出す必要はないと、バルは判断した。

 ミリが赤くなっているのが問題なのに、とパノはバルに呆れた。しかしミリが赤くなっているのをレントへの恋心だとかと、バルが思うと面倒臭いので、パノはバルを放置する事にする。

 そして昨夜と今朝のミリの様子から、好きな人に上着を貸して貰ったから照れて赤くなっているのではない、とパノには思える。


 パノはミリに口止めをされていた使用人達を振り向いた。


「ミリが皆さんに口止めをしたのは、この事ですか?」


 使用人達と護衛達がまた顔を見合わせて、少し困った様な表情を浮かべたてから、パノに向かって首肯する。

 その様子からパノは、概ねの話はそうなのだろうけれど、まだ細部には何かが隠れていると感じた。


 パノはミリを見た。ミリはすっと視線を下げる。


「ミリ?」

「・・・はい、パノ姉様」


 声を掛けられて、躊躇いがちにミリは顔を上げた。


「上着を借りたから、あなたは赤くなったの?」

「・・・それは・・・」

「あなたにはレント殿への恋心は」

「なに?!」

「違うからバル。少し黙っていて」

「いや!ミリは俺の娘だぞ?!黙ってなどいられるか!」

「だから、恋じゃないから、落ち着いて。レント殿への恋じゃないってミリが答えてくれる筈だから」

「そうなのか?」

「確認するだけだから。ミリ?あなたはレント殿への恋心で、赤くなったりしているのではないわよね?」

「それは・・・はい」

「レント殿はしゃがみ込んだあなたを見ていられなくて、上着を貸したのではない?」

「あの・・・いいえ」

「違うの?」

「上着は、風除けで」

「風除け?」

「はい。あの、私の目にゴミが入ってしまって、それでレント殿が風除けとして、上着を貸して下さったのです」

「上着を借りても風除けにはならないでしょう?」

「あの、頭から被ったので」

「頭から?上着を?」

「はい」


 話ながらミリがまた赤くなっていく様子を見て、パノはどこに赤くなるポイントがあるのか考える。

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