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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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程度の分からない事への心配

 ミリとパノを乗せてコードナ邸に向かっていた馬車には、コードナ家の護衛も同乗していた。

 この護衛は、ラーラの祖母フェリの墓前での出来事をミリから口止めされていた護衛とは、別人だった。


 本日のミリの護衛は、車内でミリが急に顔を赤らめた事に付いて、上司に報告すべきかどうか迷った。

 体調不良でミリが急に発熱した訳ではなさそうだ。ミリとパノがしていた話の流れからでは、なぜミリが急に赤くなったのかは理由が分からないし、今ひとつ納得も出来ない。レント・コーカデスに絡みそうではあるけれど、絡まない可能性の方が高そうに感じられる。報告すべき内容とは言えないとも思える。

 しかし、ソウサ商会での護衛への教育では、上司に報告すべきかどうか迷った場合には、必ず報告する事を徹底する様にと教えてられていた。それは部下の判断で報告が上がらずに、危険な状況に陥る事のない様にする方針に拠るものであった。

 それなので本日の護衛は、馬車がコードナ邸に着くと直ぐに、ミリが車内で赤くなった事を上司に報告した。

 そして報告を受けた上司も判断に迷ったので直ぐに、バルに報告したのだった。


 ミリはコードナ邸に着くと、庭で護身術の訓練を行っていた。

 その裏で、護衛達から報告を受けたバルは、もっとも事情に詳しいと思われるパノに対して、事情説明を求める。しかしパノも良く分からない。


 パノにもバルにも、どうやらミリがレントと会った時に、何かあったらしいとは思える。

 ただ、レントと何かあったとは断言出来ないとも考えられた。パノは昨夜からのミリの様子を思い出して、冷静にそう判断する。バルも、ミリとレントの間に何かあってミリが赤くなるなんてあって(たま)るか、と思って同じ結論を捻り出していた。


 レントと一緒の墓参時のミリに付いていた使用人と護衛達を集めて、当日のミリに何があったのかをバルは尋ねた。

 使用人達がそれぞれ一通り説明してから、使用人の一人が何かあったのかをバルに尋ね、ミリが馬車の中で赤くなった事が知らされる。

 使用人や護衛達は顔を見合わせて、苦笑いをした。


「何か思い当たる事があるのか?」


 バルの問いにまた使用人達が、今度は困惑の表情で顔を見合わせる。使用人の一人がバルに応えた。


「ミリ様にお尋ね頂けますか?」

「なぜだ?」

「わたくし達の口からは申せません」


 そう答えて頭を下げた使用人に合わせて、他の使用人達も頭を下げる。


「それは、何かあったと言う事だな?」

「それも申せません」

「ミリが口止めしていると言う事か?」

「それについても、お答え出来ません」


 口止めされていると答えた様なものだけれど、使用人達からすればこれが精一杯だった。

 バルが護衛達に視線を向けると、護衛達も使用人達と同じ様に頭を下げた。

 (あるじ)への報告義務を持つ使用人も護衛も口を閉ざしていると言う事は、報告する程の事ではないのだろう。少なくとも危険な事ではないのだな、とバルは判断をする。



 パノは使用人達の報告を聞きながら、自分ならどんな時に赤くなるかを考えていた。


 もしレントと手を繋いだりしたのなら、ミリも赤くなるだろうか?

 しかしエスコートされただけでミリが赤くなるとは思えない。エスコートではなく、ミリとレントが手を繋いで歩いたりすれば、使用人達が報告しない筈がない。ミリの口止めは利かないだろう。

 それ以上の事でももちろん同じだ。そして使用人達からは、凄過ぎる事が起こったので口にするのも憚れる、と言った印象も受けない。


 何か失敗をしたのだろうか?あのミリが?

 どんな事ならミリが失敗するのか、パノには思い付かない。

 ドレスを破いてしまって、肌を見せたとか?あり得なくはないかも知れないが、ミリが使用人達に口止めするとは思えないし、使用人達も報告しない訳にはいかないだろう。

 落馬とか?ラーラの祖母フェリが落馬をしてから寝た切りで亡くなったので、バルやラーラを心配させない為に、ミリが口止めしたと言うのは考えられなくもない。しかしこれも、使用人や護衛達が報告しない筈がない。


 こうして考えられる状況を挙げて行くと、パノにはミリに大した事が起こっていた様には思えず、それだから却ってミリが口止めする様な事が思い付かなかった。



「バル。ミリに直接訊きましょう」

「直接?イヤがられないか?」

「なに情けない事を言っているの?この人達の反応を見る限り、大した事ではなさそうに思えない?」

「いや、そう思うからこそそっとして置いてやって、わざわざミリに聞き(ただ)さなくても良いのではないか?」

「私達から見て大した事ではない事をミリが口止めしたのだとしたら、きっとミリは面倒臭い事を考えていると思うわよ?」

「面倒臭い事って?」

「それは分からないけれど、バルはそう思わない?大した事でなければない程、ミリの考えは面倒臭いのではないかと、私は思うのだけれど?」

「・・・そうだな、確かに」

「そうでしょう?ミリの訓練が終わったら、早速訊いてみましょうよ」

「ああ、そうしよう」


 そしてバルとパノと、口止めされていた使用人達も残っているところに、ミリが喚び出された。

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