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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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続く葬儀

 ラーラの祖母フェリ・ソウサの葬儀からそれほど日を置かずに、パノの祖母ピナ・コーハナルの葬儀が行われた。そして更にその翌日には、バルの祖母デドラ・コードナの葬儀が行われたのだった。


 ピナとデドラの葬儀が続いた事に、表には出さないけれど喜んだ人は多かった。

 ピナの葬儀の為に領地から王都に来て、デドラの葬儀が終わるまで領地に帰らない積もりだった貴族や関係者達は、王都に滞在しなければならない日数が最小になった事に感謝をしていた。もちろんその様な事を口にしたら、ピナとデドラが立て続けに亡くなった事を喜んでいると取られかねないから、態度には一切(いっさい)表さないけれど。



 ピナの葬儀はコーハナル侯爵邸で、厳粛な雰囲気の中、執り行われた。

 パノの弟スディオが進行を務め、各侯爵家の代表が弔辞を述べる。それに続いて、ソロン王太子が弔辞を述べた。そしてそれらに謝意を表す形で、ラーダ・コーハナル侯爵が挨拶を行い、葬儀は終わった。


 葬儀で特筆すべきはラーラ達の扱いだった。

 ピナとその夫ルーゾ・コーハナル前侯爵との養女であるラーラと、ミリとバルにも遺族側の席を用意して、ラーラ達を大切に扱っている事をラーダは参列者達にアピールしたのだった。

 ラーラはコーハナル侯爵家からコードナ侯爵家に嫁いでいる。結婚して家を出た人間を遺族として扱うのは、この国の貴族家では異例だった。そしてピナとルーゾの実の娘でラーダの実妹ラリラとその夫も遺族席に座ったが、それはラリラ達とラーラ達を同じ扱いとしている事を対外的に示す為であった。



 その後のピナの弔いの為の酒席も、硬い雰囲気で終始した。


 ソロン王太子は、妹のチリン元王女とその夫スディオに少しだけ言葉を掛けると、ラーダに挨拶をして早々に退席した。チリンもソロン王太子を送りながら、そのまま席に戻らない。そして他の参列者達もソロン王太子が帰ると、一人また一人と帰って行った。

 参列者達には、翌日にデドラの葬儀が控えている事が頭にあった。

 参列者達が全員帰ると直ぐに、後の始末はラーダ達に任せて、ラーラ達も帰宅する。その夜はミリもラーラとバルと一緒に、コードナ邸に帰った。



 翌日のデドラ・コードナの葬儀は、軽い雰囲気で進められた。

 進行はバルの長兄ラゴが務め、前日と同じ様に各侯爵家の代表に続けてソロン王太子が弔辞を述べると、バルの父ガダ・コードナ侯爵が締めの挨拶をして終わる。


 その後に設けられた酒席も、出だしから軽い雰囲気で始まり、酔いが回りはじめると直ぐに賑やかになっていった。


 デドラの葬儀でもラーラ達は遺族側だが、それはこの国の貴族家では常識的な事だった。差を付けるようにバルの姉ヒデリとその夫達は参列者席に座っていたけれど、それも普通の事だ。


 異質だったのは酒席が始まってからだ。直ぐにミリはバルの母リルデに抱き上げられた。そのミリの頭をバルの次兄ガスが撫でる。

 もちろんラゴの長男で将来のコードナ侯爵家の跡取りであるジゴも、放って置かれたりはしない。ジゴはガダに抱き上げられた。しかしジゴは直ぐに逃げ出し、スイーツコーナーに真っ直ぐ向かった。

 ジゴが逃げたので、ジゴを抱こうと待ち構えていたラゴは、ターゲットを変えてリルデからミリを受け取った。

 そして次にはスディオがラゴからミリを受け取る。ピナの葬儀の時にはミリを抱いたりしていなかったけれど、スディオはチリンに促されたのだ。チリンは自分では抱くのを控えて、スディオの腕のミリの頭を撫でるだけで我慢をした。

 スディオとチリンの様子を物珍しく眺めていたラーダは、チリンに目を付けられて、スディオからミリを受け取る羽目になった。パノの母ナンテは、隣で少し慌てているラーダを見ていられなくて、後を向いて笑いを堪える。

 一方でガダはラーダの姿を遠慮なく笑い、ラーダからミリを受け取って肩に(かつ)いだ。

 何をやっているんだと呆れてそれを見ていたジゴも、ラゴに捕まって無理矢理肩に担がれたけれど、スイーツを取る様にラゴにお願いして、ラゴの注意がスイーツに向いた隙に、ラゴの肩から降りてまた逃げた。

 そしてその様子は場の注目を集め、参加者達に笑い声を上げさせた。


 ソロン王太子がその様子を見て笑みを浮かべているのに気付いて、チリンが近寄る。


「お兄様もミリちゃんを抱っこしたいですか?」


 チリンの言葉にソロン王太子は苦笑した。


「その様な事をしたら、ミリの将来に影響が出るのではないか?」

「出るでしょうね」

「そうだよね。()めておくよ」

「でも、女の子も可愛いでしょう?」

「知っているよ」

「だからお兄様も早く次のお子を・・・知っている?・・・お兄様?どなたかのお宅のお嬢様の事ですよね?」


 急に変わった態度から、チリンが浮気を疑っている事が分かり、ソロン王太子は呆れながら首を小さく左右に振る。


余所(よそ)のお嬢さんではなく、お前の事だよ」


 そう言ってソロン王太子はチリンの頭に手を伸ばした。

 大人になってからは、兄に頭を撫でられた事のなかったチリンは照れて赤くなる。

 そのチリンの様子を見て、無意識だった自分の行動を自覚したソロン王太子も、照れて赤くなった。


 参加者達はソロン王太子とチリンが二人で話している事に気付くと、ミリからそちらに目を移して居たけれど、二人が照れ合う様子を温かく見守った。

 そして同じくソロン王太子とチリンの姿を見ていたミリは、もう一度バルとラーラに弟妹をお願いしようかと、ラゴの肩の上で改めて考えていた。

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